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クロッシングワールド  作者: たぬきいぬ
第一章     序章
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第三十九話 勝利の可能性

 俺は雪菜以外の三人と別れ雪菜と今後の方針について話すことにした。


「さっきの試合ホントごめん……。 試合中にぶっ倒れるなんて」

「大丈夫だよ!! 何より一試合目は勝てたしもっと喜ぶべきじゃないかな?」


 雪菜は俺の顔を覗き込み笑顔を向けてる。


「そうだな……。 もう少し喜んでも良いのかもしれないな」

「それより明日の対戦相手を確認しない?」


 雪菜と二人屋上に入りベンチに座った。二人で一つのデバイスを覗き見る。雪菜は自分のデバイスを取り出さず俺のデバイスを覗き込んでいる形だ。


 雪菜は無意識のうちに俺に体を寄せてくる。無意識だからしょうがないのだが、俺には刺激が強すぎる。俺は平常心を装いながらデバイスを操作していく。


「次の対戦相手は……。 序列六十四位と六十六位か」


 今日戦った相手とさほど序列の変化はない。ただ高ランクの相手という事に変わりはなかった。


「またなかなかな相手と戦う事になっちゃたね」


 雪菜はデバイスの画面を見ながら呟く。俺が倒れていた間の雪菜の戦闘を見ていない俺は雪菜がどんな戦いをしていたのかを知らない。


 苦戦して倒れそうになっていたかもしれない、圧倒的な力でねじ伏せていたかもしれない。俺がその時いればもっと楽に戦えてたかもしれない、そんな想像しか今はできない。


 俺はデバイスをポケットにしまい立ち上がる。


「さて今日はそろそろ帰ろうか、疲れを残したままだと明日に響くしね」


 俺は雪菜に手を差し伸べる。雪菜は俺から差し出された手を掴み立ち上がる。


「ありがと、そうだね今日は帰ってしっかり休まないとね」

「途中まで送るよ」


 俺は雪菜と二人学園を出る。今となっては誰かに見られているのが恥ずかしいとかそんな考えは起きない。


 共に戦ったパートナーとして堂々と横を歩ける。それは雪菜と共に戦い対戦相手を倒せた事で俺自身に自信がついたのだろう。


 学園近くの駅まで二人で歩く。


「ありがと集くん、それじゃあね」

「じゃあまた明日」


 俺と雪菜は反対方向に進む電車に乗るため、俺は雪菜が電車に乗るところを見送った。雪菜は電車の中から俺に手を振ってくる。お互いが見えなくなるまで手を振りあい消えていくその姿を眺めていた。


 俺は消えていく雪菜の姿を見つめながらポケットにしまってあったデバイスを取り出す。デバイスを操作し目的の相手に電話をかける。


「悪い、俺だけど……」







 試合は確かに勝つことができた。だけどあの勝ち方はあまり良いものとは言えない。一人倒したにしても、雪菜を一人にしてしまったことには変わりない。


 もし俺の攻撃が躱されていたら、もし俺の攻撃で相手が倒れなかったら。

 雪菜に同時に二人を相手させてしまうことになる。


(まだまだ詰めが甘いってことか……)


 だが俺はさっきの試合で確信した。グラトニー無しでは俺は戦っていけない。擬似アーツは簡単に破壊され使い物にならなくなった。次の試合でもグラトニーを使わずに勝てるなんて思えない。


 だからこそしっかりとグラトニーを扱えるようにしなければならない。


 今の時間はもう夕方の四時。多くの生徒は下校している時間帯だろう。だが俺は駅から学園に戻り、訓練場に向かった。


 試合で使われていた訓練場は今はもう誰もいない。俺は入り口である人物を待つ。数分もしないうちにその人物は現れた。


 呼び出していたのは風音、彼女にある頼みをする為に呼び出した。


「風音、頼みがある」

「その前に早く中に入りましょう」


 風音は訓練場の中に入っていく。俺はそれを追うようについて行く。手続きをしようとしたがそれは必要ないみたいだ、風音は一直線に部屋に向かった。


「さっきの話ですが、いいでしょう」


 風音は俺の話を全て聞かずに返答してきた。


「俺まだ何も言ってないぞ!」

「言わなくてもわかります、グラトニーを扱えるように練習に付き合ってほしい、おおよそこんなところでしょうか」


 風音は俺の考えを全て読み切っていたみたいだ。連絡した時にまだ学園にいると言っていたが、俺がこの話をすることをわかっていたのだろうか。


「何でわかった?」

「私もこの学園に来てからの付き合いです、貴方があの保健室でどう思ったかなんて察しがつきます。 そしてどうしたいのかも」


 風音は俺がどうしたいのかも知っているらしい、まだ話してもいないのに。


「今は時間が惜しい、可能な限り手は貸しましょう」

「なんでそこまでしてくれるんだ?」


 俺は風音がここまでスムーズに話を聞いてくれる事に疑問を感じた。何度か頭を下げなければならない覚悟で来ただけあって拍子抜けだ。


「お嬢が……。」

「お嬢が?」

「貴方の勝利を見た時に大喜びしていました、誰よりも早く誰よりも心から喜んでいました。『皆んなにやっと集の凄さがわかってもらえる』と喜んでいました。私はその姿を見続けていたいと思ったのです」


 日向がそんな風に喜んでくれていたなんて知らなかった。俺が正式な試合で勝てたのは雪菜との戦い以来だ。その時も喜んでくれていた。


「ですから集様構えてください」


 風音はアーツを展開する。


 俺もグラトニーを展開する。


「来いグラトニー!!」


 俺と風音の特訓が始まった。

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