第三十七話 暴食の代償
「「「第一位階アクセス!!」」」
俺以外の三人が同時に能力を使う。
(やっぱ第一位階は初っ端から使うのか)
俺だけ第一位階を使えない、それでも俺は真っ直ぐ相手に突っ込み斬りかかる。
「はぁぁぁぁぁっ!」
相手の右肩めがけ振り下ろした剣は相手の剣で防がれてしまう。
「なっ!」
相手は片手で俺の剣を防ぎやがった。俺は両腕で強く握りしめた一撃なだけに片手で防がれてしまったことに驚く。
「軽いな君の一撃は、やっぱり無能力者じゃ話にはないな」
相手は防いでいた剣を振り上げる。俺の一撃はなんなく弾かれ剣は後方に大きく飛ばされてしまった。
(俺の剣は軽すぎるってか)
相手は剣を弾き俺が怯んでいる隙に、俺の肩めがけて剣を振り下ろす。
(ヤバイ避けられないっ)
剣は徐々に俺に迫る。単純な運動能力なら多分お互い大差無い。だが能力者の強化された運動能力は俺を大きく上回っていた。
剣が俺に当たる瞬間、俺の右手に着けていたリングが光る。
(阿知賀さんから貰ったシールドアーツ!)
俺に当たるはずだった剣は薄いシールドで阻まれる。そして耐久値の無いシールドアーツは一瞬にして砕け散る。だがその隙に俺は相手との距離を取る。
このままじゃダメだ。俺が負けたら雪菜は一人で二人を相手しなきゃいけなくなる。そんなことさせない、させてたまるか。
俺は雪菜の方を見る、相手が序列六十三位ということもありなかなかに苦戦している。一度は倒したことのある敵でも、相手も雪菜の行動パターンを覚えているとこもあるだろう。
俺が負けて足引っ張ってどうする。もう出し惜しみは無しだ。
俺は右手を前に出し、名前を叫ぶ。
「来い! グラトニー!!」
アーツ能力者の様に右の掌が光る。一瞬で黒剣が現れ、それと同時に俺の胸は大きく脈打つ。
グラトニーは俺の戦意を読みグラトニーからも何かを感じた。
初めて使うこいつでどこまで戦えるか、試してみるか!
「君は無能力者だろ? なぜアーツが使える」
「ああ、無能力者で間違いないぜ、だから俺はアーツは使えない。これは擬似アーツだ」
「擬似アーツに名前なんて付けてるのか、笑い物だな」
相手は俺を笑っていた。まあそれもそうか擬似アーツに名前なんて付けてる奴なんて俺しかいないだろう。
観戦している学生たちもクスクスと笑いだす。
「無能力者がなんかカッコつけてるぞ」
「なんだ? グラトニーって」
観客席がざわつく中俺は妙に集中していた。
精神が喰われ始める。これはグラトニーの効果なのだろうか、剣は振るっていなくても徐々に気力が減っていく。
「皆集殿を舐めていらっしゃる、始まりますぞ時代の始まりが」
阿知賀は周りの笑い声などなんの気もしない、自分が作った擬似アーツが今から初めての舞台に立つ。そしてその本領を発揮する。クリエイターとして自分の作った物が評価される。それはクリエイターとして一番嬉しいことだ。
俺はグラトニーを握りしめ相手に突っ込む。さっきまでの緊張も焦りも何もかも無くなりただ無心になる。
俺はグラトニーで相手に斬りかかる。
「なっ!」
ただ短い驚いているような一言、俺の耳にはその一言しか聞こえなかった。そして俺も気づいた、俺はいつの間にか相手の懐にいた。
え? 俺は自分で今の自分に驚いていた。いつもと同じ踏み込みで相手に近づいた、なのに体は軽く、そして速い。
相手は流石に序列七十一位、自身の剣を楯にし俺の攻撃をガードするつもりらしい。だけどそんなの関係ない、ただ相手を斬るだけだ。
「だぁぁぁぁぁ!!」
全部持ってけグラトニー!!
俺はこんなところで負けるわけにはいかないんだよ!
俺は今ある全力で剣を振るった。
いつも通りキーンと金属音を上げだと思った。だが俺の一撃はアーツごと相手の体を切り裂いた。
バタリと相手は倒れ、砕け散ったアーツの破片が散乱している。
能力者のアーツが壊れたということは、能力者が体力の限界を迎えたか、激しいダメージにより精神力が持たなかった以外にない。
能力者同士の戦いでアーツが破壊出来れば勝ったと言っても間違いないだろう。
俺は喜びを雪菜に伝えたくて雪菜の方を向こうとしたが体が言うことを聞いてくれなかった。
そして体は地面に向け倒れていく。目の前が真っ暗になっていく。薄れゆく意識なのかで俺はあることを思い出していた。
『使うときは注意してくださいですぞ、気づいたら体力無くなってるかもしれないですからね』なんて言葉を思い出した。
いやこれ、気づいたらなんてレベルじゃねー。
俺はそのまま地面に倒れ込み意識を失った。




