第三十六話 試合開始
「只今より学内模擬試合を開始します! 実況はこの私 辰美 美久(たつみ みく)がお送り致します」
「「「「「「うおおお!!」」」」」」
学内模擬試合が開催された。この模擬試合が何故ここまで注目されているのかというと、三戦全てに勝利すればある挑戦権を得ることができる。
「そして今回三戦全てに勝利すればこの学園の序列第一位に挑戦する権利を与えられます」
「「「「うおおお!」」」」
三戦勝利で得られる権利が学内序列一位への挑戦。そんなものになんの価値があるのか俺にはわからない。会場のほぼ全ての学生が歓声を上げていた。
「そんなに序列一位と戦いたいものなのか?」
俺は隣にいる雪菜に聞いてみた。
「序列一位に挑戦するのは、序列三位までの学生しか挑戦できないんだよ、だから今回の権利は学園内の学生にとっては最高の権利なんだよ。一気に序列を上げるには序列一位に何が何でも勝てばいいんだよ」
「勝つとどうなるんだ?」
序列一位に勝てば序列一位になれる。だがそれはただ強いことの証明でしかない。皆んなが一位にこだわる理由。
「一位の特権、それは学区内序列の順位を知ることができるんだよ」
「知ってどおするんだよ?」
学区内序列は公表されないことになっている。それは知っているのだが……。
「学区内序列七位までに入れれば卒業時に願い事を叶えられるからね。だから七位以内の人はTOEには参加できないし。学区内序列一位がTOE優勝を独占してしまっては他の学生がTOE優勝を目指せないからね」
「TOE以外に願いが叶えられることなんてあるのかよ」
「何でも願いが叶えられるなんてそんなこと普通じゃあり得ないからね」
学区内序列七位までに入る。一学区6000人の頂点になる七人。そいつらはどんな能力を使うのだろうか。
「それでは学内模擬試合第一試合を開始します、第一試合の参加者は準備お願いします」
第一試合の参加者が準備をする。
「試合開始!!」
第一試合が始まりそれぞれが戦いだす。俺と雪菜は観客席で戦いを見る。戦いは俺が見ている中で雪菜や日向たちには劣るが、それでも能力者の戦い、相手を全力で倒すためにそれぞれの能力をふるっている。
「流石に参加者となればやっぱすごいな」
「私たちも負けられないね」
今日だけで参加者の全員の第一試合を終わらせる予定だ。それを三日間で終わらせる予定になっている。
着々と試合は進み俺と雪菜の試合の時間になった。俺たちは準備のため待機室に移動する。
「ようやく俺たちの番だな」
「そうだね」
自然といつもより言葉数は少なくなる。流石に緊張してきた。
「それでは次の試合の選手はステージへ移動してください」
待機室にアナウンスが流れる。
「それじゃ行こうか」
「うん」
俺たちはステージへ移動する。もうステージには対戦相手が待機しており試合開始を待っている。
「今回は無能力者を倒せれば簡単に勝てそうだな」
「そうだな、まあさっさと終わらせようか」
対戦相手は序列七十一位と六十三位。相手は雪菜よりも序列は下だが俺よりははるかに強い。
「あいつら俺のこと舐めすぎだろ」
「無能力者なのはみんな知ってるからしょうがないのかも、だけど勝てばそんなの見返せるよ」
試合を見ている人も俺が無能力者なのは知っているため、試合の結果は皆分かっているのだろう。
(そんな簡単に終わらせねーっての)
「見返してやろうかなって言ってみたりしてな、まあ勝てればの話だけどな」
自信のない、勝てるか分からない、不安しかない俺の中をそんな感覚が渦巻く。今までに無い緊張感。
(そうか、これが俺が今まで逃げていたから感じたことのない感覚なのか)
俺は俺の中の何かが動いたのを感じた。
「それでは第八試合の参加者は準備してください」
俺と雪菜、そして対戦相手はそれぞれ戦闘態勢に入る。俺はキューブに意思を送り擬似アーツを展開する。シンプルなシルバーの剣、俺は両手で強く握りしめる。
隣にいる雪菜は目を閉じ片手を真っ直ぐに伸ばす。開いた右の掌から光を放ち雪菜のアーツが現れる。いつもの双剣ではなくまだ片手剣しか出現させていない。
(何か考えがあるのか?)
俺は横目で雪菜を見るが雪菜はただ前を向いている。対戦相手を見ている。
その表情は本当に真剣で俺は見惚れてしまった。胸の真ん中あたりがドクンと跳ね上がった。いつか見たことのあるその表情から目が離せなかった。
対戦相手もアーツを出現させた。一人は槍のアーツ、一人は剣のアーツ。
それぞれが武器を構え始まりの待つ。
俺は早まる胸の鼓動を少しでも落ち着かせるために、深く深呼吸をする。そして俺の目の前にいる対戦相手を睨む。俺の目の前にいる対戦相手も俺を見ている。
これが本当の試合、俺が初めて戦う実践の舞台。この緊張もこの胸の鼓動の早さも全てが初めてなはずなのに、初めてではなく感じる。そして雪菜の隣に立ちこうして武器をかまえる。
(ああ、俺はこの光景に覚えがある。この光景は……)
バチンと頭に電流が走った。何かを思い出そうとした時俺の思考は何かに遮られた。
それと同時に試合開始の合図が聞こえた。
「試合開始!!」




