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クロッシングワールド  作者: たぬきいぬ
第一章     序章
33/151

第三十二話 開けられた扉

「何をしているのですか集様」


 最初に声を掛けてきたのは風音だった。勝手に部屋に入ってきた俺に対して苛立ちを見せている。


「何よりどうやって鍵のかけられた部屋に入れたのですか?」


「勝手に入って悪かったよ、使用者名にお前らの名前が乗ってたから気になってさ、てか鍵なんてかけられてなかったぞ? 」


 鍵のかけられた部屋? この部屋の鍵はかけられておらず簡単に入ることが出来た。


「鍵が開いていたなんてそんなことはあり得ません、鍵は確かに私がかけました。そして私とお嬢様はこの部屋から一度も出てきませんし、扉に触れてすらいません」


 風音が言うなら間違いなく風音はこの部屋の鍵を閉めている。だが現に俺が扉を開けられているのだがら、俺が来る前に誰かが故意に扉の鍵を開けたのだろうか、訓練場の扉は内側から鍵をかける式の扉だから、俺の側からは鍵を開けたり閉めたりは出来ないはずだ。


「俺だってなんもしてねーよ、普通に扉開いたし特別何もしてねーよ」

「もしかしてアレですか? 貴方の能力は解錠能力だったりするんですか?」


 俺は能力なんて使った覚えはない。まず俺は無能力者だ。


「そんなわけあるか! こちとら無能力者だぞ! 普通に鍵が開いてたんだよ」


 俺と風音のやりとりを見て日向が笑い出した。


「お前ら何コントしてんだよ、お腹痛い」


 日向はお腹を抱え笑っている。さっきまでの戦いに集中していた二人の姿はもうない。


「コントなんてしてねーよ!」

「コントなんてしていません」


 俺と風音の言葉がかぶる。ほぼ同時に同じ言葉を喋り余計に日向は笑い出してしまう。


「ダメだ、やめろマジでほんとにぃぃぃ」


 日向はお腹を抱え笑い続けている。その姿を見ていた俺と風音は冷静さを取り戻し始めた。


「まあ今回許しましょう、どうやって入ったかは分かりませんが、それより何が用があったのではないのですか?」


「許すも何も、何もしてねーよ、まあいいや、さっきまで練習してたんだけど凄い振動がロビーまで伝わってきてたから誰が練習してるのか知りたくなってな」


 あの衝撃と振動の正体が何なのか知りたくなったのは俺以外にもいたはずだ。だけど皆んなおおよそ見当はついていたのだろう。


「んで、使用者の名前を見たらお前らだったってわけ」

「わざわざ中に入って来るなんてあたしの顔でも見たくなったのかな?」


 日向が俺をおちょくるように顔を近づけてくる。これを見て風音は日向に見えない角度で俺にブチ切れんばかりの怒りの表情をしている。


「んなわけないだろ。すげー音が聞こえたから気になっただけだ」

「何だよつれないな〜」


 風音の方を見ると表情は元に戻っていた。後で何かさせるかもしれないが今は風音を怒らせないようにしておこう。


「まあいいや、俺雪菜が待たせてるから戻るな」

「何だ? 雪菜と待ち合わせしてたのかよ、ラブラブしやがってほんとにさ」


 日向はニヤニヤしながらいつも通り肘で小突いてくる。


「ラブラブなんてしてねーよ、ただ二人で練習してただけだ」

「何の練習をしていたのかな?」

「模擬戦の練習だよ! 他に何があるんだよ」

「そりゃなにさ、なに」


 他愛のない冗談を言い合い俺は日向達が使用している訓練場を後にした。









「風音、ちゃんと鍵をかけたんだよな?」

「はい、間違いなく鍵はかけました」


 この訓練場は使用している時は許可を出さなければ鍵を開けることは出来ない。

 だけど集はいとも簡単にこの部屋に入ってきた。ということは誰かが勝手に鍵を解錠したらしい。だけど私には勝手に鍵を開けた犯人に覚えがあった。


「何で勝手に鍵を開けたんだ」


 あたしは少しだけ開いた扉の向こうの人物に話しかける。普通の人ならそんな所に人がいるなんてわからない。だけどあたしと風音は分かっている。


 扉の向こうの主は顔は見せずにこちらに答える。


「何だバレてたのか」

「バレていないとでも思ったのかよ、何でこんなことをした」


 あたしは声のトーンを下げ扉の向こうの主に威圧感を与える。


「そう怒るなよ、まあ簡単さ、圧倒的な力の差を見せて、何をしても意味のないことだと分からせたいだけさ、まあ俺とお前達とじゃやり方が違うだけだろ?」

「だとしたら私達に迷惑はかけないでいただきたいですね」


 風音も扉の向こうの主に威圧感を与えながら話しかける。


「悪かったよ、だからそんなに敵意を向けないでくれ、いつも通りで行こうぜ」


 扉の向こうの主はそのまま奥に消えてしまった。扉は誰も触れていないのに勝手に閉まった。


 あたしと風音はもう誰もいない扉の向こうを睨み続けた。

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