第二話 白紙の手紙
教室に戻り帰り支度をしていた。
いつも置き勉をしている集のカバンの中は空っぽなのだが、机の横にかけてあるカバンを持つと中から音がした。
朝学校に来る時、何もカバンの中には入っていなかったはずなのだがと思い慎重にカバンの中を確認する。
するとカバンの中には一枚の手紙が入っていた。
(これは、まさかのラブレター!!)
内心ウキウキした気持ちと、その半分イタズラだ
ろと考えながら、手紙を開けたが、その内容は想像していた通りになった。
「白紙って」
独り言のように声に出してしまう。(結局イタズラかよ)と手紙をゴミ箱に捨てる。
学校で嫌われている集だがこんなイタズラをされるのは初めてだった。
「この学校でいい思いできるわけないか」
そんな淡い希望は即座に消え去り、いつもの家路につく。
「……」
集一人しかいなかった教室に、扉も動かなかった教室に、いつのまにかいたその少女は、夕陽を浴びた教室にたたずむ。
そして瞬きする一瞬の隙も無く教室からいなると同時にゴミ箱の中にあった手紙は燃えて無くなった。
周りにある物に火がつくことはなく手紙だけが燃えて消えた。
教室を出て昇降口に着く。靴を履き替え通学で使っている駅に向かう。
この時間帯、学生は、部活やバイトさまざまな活動をしている人が多い中、俺はバイトがある日ならこのままバイトに向かうが、今日はバイトがない日だったためそのまま家に帰る。
放課後に職員室で叱られていたため真也と日向はもう帰ってしまったみた。今日は一人寂しく家に帰るしかないみたいだ。
第三学区にあるアパートが、この島での俺の家になる。基本時にこの島にある施設は全てエデンの所有になり、主に学生達の利用が優先される。
本来ならこの島に来ることは無かった俺なのだが、とある事情からこの島にいる。
学生は皆何らかの能力を持ち合わせていて、学校でも行なわれる能力測定で、大なり小なり能力値が現れるのだが、俺の能力値は0。
そんな俺に学者達は目をつけた。
高校生に上がる時にエデンに編入してくれれば、研究費として本島に住む家族にお金を振り込んでくれると言うのだ。
小学生のときに両親を亡くした俺たちを、祖父母は快く迎え入れてくれた。俺たちというのは俺の一つ下に妹がいたため二人ともお世話になるしかなかったのだ。
そんな祖父母に恩返しの意味も兼ねて今回この件に協力するとこにし、この島に来た。
仲のいい友達は羨ましいとかいっていたが、そんなことはない。
能力に恵まれていれば楽しい学園生活だったのだろうが、無能力者の俺はあまりいい思いをしていなかった。
妹は能力が使えるのに、俺は使えない。原因は不明だそうだ。
この世界でただ一人の無能力者。
その謎の研究をするためにエデンでの生活をすることになった。
沢山の能力者達の刺激を受け、能力が発言するかを観察するためだ。
本島で能力が発現した場合、もし異常なまでの能力が発現してしまったら本島では対応が出来ない。
だが対応できる人間はエデンの方が多く存在するため、エデンで生活することになった。
エデンには研究対象の俺のみが編入するということになり、妹と祖父母を本島に残し俺はこの島〈エデン〉に来た。
放課後からのこの時間は、普段はアルバイトをしているが今日は休みのため街を歩くことにした。
特別日課などで散歩をしている訳では無いが、歩きたい気分になった。
制服から黒色のパーカーに着替え家を出る。4月というこの季節で夕方のこの時間は思ったよりも寒い。
(そういえば今日、新刊の発売日だったっけ?)
歩いていると自分が買っている漫画の新刊の発
売日が今日だったことを思い出し、いつも漫画を買っている店がある駅へ向かった。
携帯のカバーに挟んである定期をかざし改札を通り、自分の乗りたい電車が来るホームのベンチに座った。
反対側の車線のホームをぼんやりと眺めた。その先には小学生くらいだろうか小さな少女が立っていた。
この島に小学生がいること自体あまりないことで、観光などで家族で来ることはあっても、一人きりで駅のホームにいることなどないだろう。
家族とはぐれてしまったりしているならなんとかしなければならないが、あの少女から漂う雰囲気からは迷子などとは思わせない何かがあった。
そして少女は俺と目が合うと俺に微笑みかけた。そして向こう側のホームに電車が到着し少女が見えなくなってしまった。
電車が出発した後のホームにはもう少女の姿はなく、誰一人としてホームに残っている人はいなかった。あの少女は迷子だったのかどうして一人であんなところにいたのかはわからないままだった。
そして俺が座っていたホームに電車が到着し、座っていたベンチから立ち上がる。そして電車に乗り込み、そのまま二駅ほど乗り目的の漫画が売っている店に向かった。