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クロッシングワールド  作者: たぬきいぬ
第一章     序章
20/151

第十九話 勝敗の行方

「はあ…はあはあ……」


「……」


 俺は体力が尽きその場仰向けでに倒れこむ。そして拳を空に向け掲げた。


「勝者 高坂 集」


 デバイスが俺の勝利を告げる。


「うおおおおおお!!」


「アイツまじでやりやがった!」


「連勝記録がここで止まるなんて!」


「無能力者が六十位を倒したぞ!」


 周りが大歓声を上げ騒ぎ出す。


「システムエラーが発生しました、只今の対戦は能力者同士の対戦でないと判断してたため、序列の変動はありません」


『能力者同士の対戦ではない』この言葉の意味はそのままの意味なのだろう。俺が能力者であれば大きく序列の変動があったのだろうが、俺には関係ない。無能力者の俺にランクも序列も関係ないのだから。


「私…………。負けたんだ……」


 雪菜はその場で立ち尽くす。負けて悔しいという表情は無く、ただ戦いの終わりの余韻に浸っている、そんな感じだった。俺は所々痛む体を無理やり動かし、立ち上がり体の埃を払い雪菜の前に立つ。


「ごめん、あんな卑怯な手を使って」


 擬似アーツの二本持ちなどする学生なんていない。ましてや破壊時の光を利用するなんて人物は今までいなかっただろう。


「ううん、あれは集くんの実力だよ。私は警戒を怠ってしまっただけ」


 雪菜は自身の負けを心から受け止めている。今まで負けてこなかったわけではないのだろうが、勝ち続けていた勝者の敗北は自身に大きな影響与えるはずだ。


「それで? パートナー申請はしてこないの? 集くんは私に勝った。私は約束どおり申請を受けるつもりだよ」


 試合前の約束。俺が勝てばパートナーになるという条件だ。だがあれはあの場をまとめるための手段で話したこと、最初から負けると思っていたため、何も考えてなかった。


「あ〜、あれね。あれはただの冗談だよ。今回勝てたのもたまたまだし、次戦っても絶対に雪菜さんには勝てない。だから雪菜さんはちゃんとしたパートナーを見つけて欲しい」


「でも約束が!」


 雪菜は最初に交わした約束を果たそうとしてくれている。だがその約束を通せば、雪菜のTOE出場は不可能になる。俺は雪菜の願いを潰すようなことはできない。


 俺自身に能力の発現が無く、これからもどうなるかわからない状態では、雪菜のTOE優勝、ましてや学区内大会ですら勝ち抜くことはかなり厳しくなるだろう。


 俺は今の自分自身の思いを雪菜に話すことにした。俺は雪菜の頭に手を乗せる。


「ならこうしよう、雪菜さんはもっと強いパートナーを見つけて、TOEに出て優勝する。そうしてくれれば俺も、あの柊 雪菜に勝った事があるって自慢できるだろ? 勝者の特権として約束は変わるけどそうさせてくれると嬉しいかな」


 雪菜は頭に手を置かれた時はくすぐったそうな顔をしていたが、俺の言葉を最後まで聞いた時には心なしか顔が赤くなっていた。


 俺は不器用な笑顔を作り、雪菜の頭から手を離す。


「なら私は最高のパートナーを見つけて、もっと強くなって、そして必ず優勝する」


 雪菜の表情は何か強い意志を持っていた。


「ああ、優勝して見せてくれ!」


 雪菜と約束をし、その光景を見たギャラリー達は場違いなことに気づき皆この場から立ち去っていく。


 そして雪菜に背を向け立ち去ろうとしたその時だった。


 ピコーン。


 デバイスにメッセージが入る。


(こんなときに誰だ?)


 俺はポケットに入っていたデバイスの画面を見る。そこには想像していない内容が表示されていた。


「柊 雪菜 様からパートナー申請が来ています。承認しますか?」


 画面には〈はい〉と〈いいえ〉の文字が表示された。


 俺は雪菜の方に振り向く。雪菜の手にはデバイスが握りしめられており、真剣な眼差しで俺を見ていた。


「私はTOEに出て叶えたい願いがある、それはきっと強い能力者と組めば叶えられる可能性が上がるかもしれない。でも私のこの想いはきっと間違いなんかじゃ無いって信じてる。集くんがたとえ能力が使えなくても、私に勝った時のようにこれから一緒に勝ち上がれるって信じてる」


 俺は雪菜に向かい歩く。雪菜の嘘のない想いに俺の返す言葉は一つしかなかった。


「俺は君をTOE優勝まで導けない、俺じゃ必ず君の足手まといになる、いくら努力しても届かないものがある、ましてや雪菜さんの願いを無為にすることなんてできない」


 俺は今思っている、ことをそのまま口にした。


「これは私が決めた道、集くんとならたどり着ける気がするの。気がするだけだけどそれでも私は今の想いを捨てたくない。さっきも言ったけど私はもっと強くなる、だから……」


 雪菜の決意は揺るがない、俺にはもう曲げられないようだ。俺の心は雪菜の想いに負けてしまったみたいだ。


「そうだな、俺は君の願いを叶えられるよう精一杯がんばるよだから……」


 俺はデバイスの〈はい〉のボタンを押した。


「これからよろしく雪菜さん」


 ピコーンと雪菜のデバイスから音がなる。


「こちらこそよろしくね集くん」


「柊 雪菜と高坂 集のパートナー申請受諾しました」


 デバイスの自動音声が鳴り、俺と雪菜はパートナーになった。

無能力者の英雄譚をご愛読いただきありがとうございます。


今十九話まで投稿させていただき、初のブックマークをいただきました。ここまで書き続けて来ましたが、評価同様とても嬉しく思います。これから先まだまだ話は続きますがこれからもご愛読していただけると嬉しいです。

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