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クロッシングワールド  作者: たぬきいぬ
第一章     序章
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第一話 無能力者

 夢を見ている。俺が経験したことのない記憶。




「全てを奪っていくこんな世界なんて俺が全部ぶっ壊してやるよ」


 誰かの怒り。


 


「僕は■□■を救い出す、どんな手段をつかってもだ」


 誰かの想い。




「頼む、頼むから、もうこれ以上はやめてくれ!」


 誰かの悲劇。





「世界が私から全てを奪うなら、私は世界の全ての■□■■■」


 誰かの意志。




 そして俺の夢は終わりを迎える。


「俺を■□□くれ」






 俺の意識の外から誰かが声をかけてくる。俺はその声でこの夢から覚めた。


「起きないか高坂」


 聞きなれた先生の声で意識が戻る。授業中に居眠りをしてしまっていたらしく、教師の三枝が体を揺すり起こしにきていた。


「なんですか先生、いま日頃の疲れをとってるんですよ」授業中に居眠りしていた者とは思えない発言をする。


「高坂お前怠けすぎだぞ」


 俺の発言を聞いた三枝が呆れたように言った。

「途中まではしっかり聞いていたんですけどね~、いつの間にか寝ちゃってたんですよ」


 俺は先生をからかうように危機感のない表情で言葉を返す。


「『寝ちゃってたんですよ』じゃない!お前怠けすぎだぞ、私も説教なんて疲れるだけだからしたくないんだ、だが建前上必要でな、放課後職員室に来るように」


 三枝も説教が面倒なのか建前上は叱っておかなければいけないらしい、放課後に呼び出されてしまった。


 授業もまともに聞かず居眠りをしていれば、こうなることは誰だってわかる。内申点を気にする生徒は普通居眠りなどしないだろうし、この島で居眠りをする生徒などほとんどいないだろう。


 だがいくら内申点を稼げても俺には越えられない壁がある。俺がいるこの学園は勉学だけではなく、能力点というものも成績に含まれる。だがそんな異能の力も持っていなければ点など入るわけもない。


(特別な力)


 それぞれが持っているとされている特別な能力。俺にもそんな力があれば、そんなことを考えていると友達の水城 真也が声をかけてきた。


「集、お前何回も起こしてんのに何で全然起きねえんだよ。途中で心折れたわ。」


 授業中に居眠りをしていた俺を起こしてくれていたらしい。 


「お前もうちょっと粘れよ、そうしたら起きたかもしれないのに」


 起こしてくれていたことを、なかったかとにするような発言をしだす。この学校で集とまともに会話しようとする学生は真也を含めて3人しかいない。


 この倍率の高いエデンに無能力者がいるという事自体、この島に住む学生はよく思わない。研究対象としてこの島に迎え入れられているが、高校入試を受け厳しい環境を勝ち抜いてきた生徒からすれば、裏口入学のように感じる学生も多いだろう。


 こんな島に来たくてきているわけでは無い集からすれば、今の環境は最悪でしかなかった。

「そろそろ三枝のところ行くわ」


 俺は自分の席から立ち上がり、廊下の方を向いて歩き出す。


「ボコボコにされないように気をつけるんだぞ」


 集は真也の言葉を背にいけながら、振り向かず手の甲を振り返事をする。集が在籍している学校は生徒数が多く学校自体がとてつもなく大きい。


 学校全体の生徒数は600人という学校で学年ごとに校舎は別れてはいるが、それでも1学年200人三学年合わせて600人程度の学校だ。


 学校は設備は最先端のものを取り入れている為、学園生活には全く困ることはない。本島の高校とは違い、どちらかというと大学のようなイメージが強い。


 教師たちは休み時間になると職員棟に戻るか、そのまま次の教室まで移動する。教室から職員棟まではそこそこの距離がある。

 この距離を教師たちは行き来していると思うと少しは可哀想に思う。そんなことを考えているうちに職員棟にたどり着く。


 三枝の机のところに話を聞きに行く。


「君は毎回毎回、どうしていつも授業中に居眠りばかりするのだね」

 予想どうりに説教が始まった。

「授業ってって眠くなるんですよね~、いつの間にか寝てたみたいな?」

 冗談交じりに言うと三枝は頭に怒りマークを浮かべているようなそんな表情をした。


「私の授業はそんなにつまらないかね」

(あっこれはやばい)


 三枝先生は怒らせると、その日身体中が痛くて動けなくなるほど、雑務を手伝わされる。三枝を怒らせた学生は、廊下に連れ去られた後、顔面をパンパンされたことがあるらしい。 

 まあ噂話なので本当のことはわからないが、その話を聞いて以来学生たちは三枝を怒らせないようにしている。


「次からは気をつけます!!」


 三枝が本気で怒る前に綺麗な90度腰を曲げた姿勢で平謝りをし職員室を後にした。

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