第十八話 第一位階
〈アクセス〉この言葉を放つ時、自身が持っている能力の本来の力解放するときに放つ言葉。能力には第一位階から数段の位階が存在し、その位階への接続を意味する。
雪菜のかざした左手から光を放ち剣が現れる。雪菜の本来のアーツは双剣だった。
アーツは色を取り戻し、氷のような冷たさを感じさせる色に変わる。
「柊さんが本気じゃないか!」
「Bランクとの決闘で使った以来じゃないか?」
「アクセス出来るDランクのやついるのかよ!」
本来アーツやトランスは剣や槍の形成や、発火能力などを起こすことが出来るが、〈アクセス〉は能力の本来の力を解放するための方法だ。
学内でも第一位階を扱える学生は30パーセントもいないだろう。
周りで観ていたギャラリーたちが盛り上がりはじめる。あまり見られない雪菜の本気姿に興奮を抑えられないようだ。
「これが雪菜さんの本気ってわけ?」
俺は雪菜から放たれるプレッシャーに押されてしまう。さっきまでの雰囲気とは違い、今は突っ込めば確実に倒されてしまうと感じるほどの圧を感じた。
「今はまだこれくらいしか使えないけどね」
TOE優勝を意識しているだけはある、これからもっと強くなる意思まで感じさせる。
まだという言葉には、これから先〈第一位階〉よりも上に上がりたい意思が強く伝わってくる。
「そんだけ使えれば十分じゃない?」
流石に顔がひきつる。雪菜から放たれるプレッシャーは思いのほか重たい。ただ立っているだけで汗が出てくる。
「これからも強くなるために私、がんばるよ、だから負けるわけにはいかないの」
瞬きをした瞬間雪菜は目の前まで攻めてきていた。
(ヤバっい!)
二刀のアーツが集を襲う。さっきまでと比べ物にならないほどの速さで斬りかかってくる。
ガード出来る許容量を超え、俺に雪菜の攻撃が当たり始める。
アーツからの攻撃を受ければ、傷にはならず痛みにはなる、だが傷にならない代わりに当たれば疲労として体に蓄積される。
(このままじゃ負ける)
雪菜の攻撃は止むことはない、双剣の剣閃は見惚れるほどに綺麗で、とても重い。だがガード出来ないほどではないが、防ぎ切れているわけではない。
だが日向と特訓している時ほど雪菜は早くはない。
(日向、お前が練習に誘ってくれてたお陰である程度ついていけるぜ)
雪菜の攻撃を出来る限り感覚だけでガードする。本来なら直ぐに倒されていただろうが、何故か雪菜の行動がわかるため攻撃をある程度はガードすることができている。
「おい、あいつ柊さんの攻撃をガードできてるぞぞ!」
「無能力者じゃなかったのか?」
周りがまた騒ぎ始めた。
無能力者が能力者とここまで戦えるなんてことあり得るはずはない。だが、俺は日向の実践練習に何度か付き合わされていただけあって、雪菜の攻撃はある程度は見える。
だが雪菜は双剣のアーツを使うため、日向とはタイプが違う。近接格闘型と日向とは違い、剣は拳よりリーチがあるため、攻撃を躱す感覚が違ってくる。ガードするだけで精一杯だがそれでも戦えている。
「この状態でもガードされるなんて思わなかったよ」
流れるような剣技で攻めてくる雪菜は、驚いた顔をしていた。
俺だってこんなに戦えるとは思ってもみなかった。だけど雪菜が本気になってくれた以上、中途半端な戦いは出来ない。俺は俺の全力で雪菜の攻撃を受け止める。
「俺さ、無能力者だけど、いつも日向が練習に誘ってくれてたんだよね。だがらある程度は動けるし、見える。悪いけど日向の方が雪菜さんより速いからさ」
俺は顔を引きつりながらも笑顔を作り雪菜を挑発するような態度をとる。
「夏希さん、そんなに強いんだね。だけど私だって負けてないよ!」
雪菜の動きがまた一段と早くなり、剣撃は重くなった。
(これでいい、後は時間まで粘るだけだ!)
俺の目的は全ての攻撃を擬似アーツで受け、耐久値を0にすることにある。
今のままでは雪菜に攻撃は当たらない。ガードすることで精一杯な状況だ。だが雪菜を一瞬でも怯ませればまだ勝機はある。
擬似アーツが使い捨てとされている理由は耐久値にある。耐久値が0になった擬似アーツは強い光を放ち消滅する。何故強い光を放つかはわからないが、この現象を利用するに越したことはない。
雪菜は擬似アーツが耐久値が0になれば消滅し光を放ち消えることは知っているだろうが、実際に経験していなければ構えることはできない。
だが俺は何度も日向との練習試合で擬似アーツを壊しているため、擬似アーツの光に対応することが出来る。
「そろそろガードしてるのも限界なんじゃないかな?」
「ああ、もう限界で倒れそうだよ。だけど負けるわけにはいかないんでね!」
俺は擬似アーツが限界を迎えるタイミングで勢いよく踏み込みガードだけでなく攻撃を試みた。雪菜も体力は減っているため避けるほどの余裕はないらしい。全て剣で受け止めている。
雪菜のアーツと俺の擬似アーツは激しくぶつかり合う。持っていた擬似アーツにヒビが入った。
「集くんは大丈夫でも、擬似アーツはもう限界みたいだね」
雪菜は擬似アーツのヒビを見て勝利を確信した表情をした。
(ここしかない!)
俺は後方に大きく下がる。雪菜は距離をとった俺を追うように大きく踏み込みアーツを振るう。
俺は距離が詰まる前に雪菜に向け擬似アーツを投げた。雪菜は飛んできた擬似アーツを撃ち落とす。だが擬似アーツはパリーンと大きな音を上げ激しい光を放つ。
「っ!!」
雪菜は擬似アーツの光で怯んでしまう。
俺はその隙を逃さなかった。
光で見えずとも雪菜の場所さえ分かっていればいい。
「うおおおおおおおおおおお!!」
ポケットに隠してたもう一つの擬似アーツに意思を送る。箱は瞬時に剣へと形を変えた。
俺が隠していた最後の切り札。
そして、俺は擬似アーツで雪菜の体を切り裂いた。




