第十七話 本来の能力
観戦している周りの声が聞こえる。さっきまでの熱は消え、勝敗のわかりきっている試合をつまらなそうに観ている。
(俺だってこんな恥さらしみたいなことしたくないんだよ!)
俺は雪菜に向け剣を振るう。さっきまで試合を観て真也から聞いた話だと、雪菜は一瞬で終わらせる試合をしない。
自分に挑んでくる挑戦者を減らすために、圧倒的な力を見せつけて勝利する。下心のないパートナーであればいいのだが、挑んでくる男達は下心見え見えの挑戦をしている。TOEに本気で挑み、優勝を狙うほどの意思を見せつけてくれる選手を探しているのだろう。
(負けることがわかってる試合をなんでしないといけないんだ)
マイナスな想像しかできない。これも全て真也のせいでしかない。
俺の剣はやはり雪菜には当たらない。さっき日向との試合で使った三連技を使うが、雪菜は全てかわしてしまう。
(俺の攻撃じゃ受け流す必要ないってか!)
身体能力強化を使えない俺は自身の運動能力だけで動いている。剣も無限に振るえるわけではない、握る握力も徐々に失われていく。
「集くんは何で私に挑んできたの?」
雪菜さんが俺の連撃を避けながら質問してきた。
真也がふざけて申請したなんて言ったら、雪菜は怒るだろうか、真実だがそれを言うのは怖かった。
せっかく仲良くなれた女の子なのに、こんなことで関係が終わるなんて思いたくなかった。だが雪菜に嘘をつくほうが嫌だったため俺は攻撃をやめ距離を取り真実を話した。
「俺の友達がふざけて申請ボタンを押したんだよ、ほんとごめん」
「そうなんだ……」
雪菜は心底残念そうな顔をした。そりゃそうだふざけて試合の申し込みをされれば誰だってそうなる。本気でパートナー探しをしているのに、ふざけた理由で試合を申し込まれれば誰だって怒る。だが俺が思っていた反応とは少し違う返しがきた。
「集くんが一緒に本気でTOEに出たいって思ってくれてたら私は嬉しかったのにな……」
「俺みたいな無能力者はTOEなんて目指せない、擬似アーツが使えても雪菜さんの足を引っ張るだけだから……」
「本気ならもしかしたら叶えられるかもしれないのに」
雪菜は静かな言葉使いだったが、俺の言葉を聞いて強く反論してきた。
(本気なら叶えられるかもしれない……か)
昔憧れていたこの島に来て、俺は一度も何かに本気になることなんて無かった。能力の壁がある以上俺には届かないものが多いことを知っていたから。だけど俺は雪菜の言葉を聞いて少しだけ本気を出してみようと思った。
「ならさ、俺が雪菜さんに勝ったらパートナーになってくれるかな?」
俺は自分が放った言葉とは思えないことを言っていた。
「集くんが私に勝つことが出来たら、パートナーになるよ」
雪菜は真剣な表情で言葉を返してきた。その言葉を聞き俺の中の何かが動き出した気がした。
「わかった。なら本気で行かせてもらうわ」
俺は再度雪菜に向け走り出す。雪菜はその場を動かない。またさっきと同様に全ての攻撃を躱すのだろう。
それでも俺は全力で雪菜に斬りかかる。雪菜は避けられるが、俺はすかさず剣を振るい雪菜の攻めをやめない。
雪菜も躱すことが出来なくなりとうとう、受け流しはじめる。
「まだまだーーーー!!」
俺は連撃をやめない、日向との試合で体力ならついているし、元から体力には自信があった。だからその体力をフルに使い、雪菜が受け流せなくなるまで攻撃を続ける。
そして俺自身が雪菜の行動に慣れてきた。
というより何故か雪菜の行動がわかる。単純な連撃でもてきとうに攻撃しているわけじゃない。何故か感覚でわかる雪菜の動きに体が勝手に動く、そして雪菜の次の行動を予想し一撃を放った!
「はああああああああ!!」
キーンと甲高い音が上がる。すると今までにない手応えを感じた。
「ここまで出来るとは思わなかったよ」
俺と雪菜はお互いの剣で押し合う。
「やっと目が慣れてきたからさ、一撃入れさせてもらったよ!」
俺は力押しで雪菜を押していく。
「私もそろそろ本気を出させてもらうね」
雪菜は力押しだった状態から力を抜く。俺は剣から力が抜けた瞬間を狙い雪菜に斬りかかる。雪菜は一瞬で後ろに下がるが、俺の剣は雪菜の腹部を切り裂く。切られた場所は赤くラインが残る、これによりどこに攻撃が当たったかわかるようになっている。
だが雪菜は一瞬で後ろに下がり、ダメージを減らした。直撃していればかなりのダメージが入っていたが上手く避けられてしまった。
そして雪菜は数歩後ろに下がり距離を取る。
「おいおいマジかよ!! 柊さんがダメージ受けてるぞ!」
「Bランクの相手と試合した以来じゃないか?」
雪菜がダメージを受けたのは、Bランクの能力と戦った以来らしい。まだパートナーが決まっていないということは雪菜はBランクの能力者にも勝ったのだろう。
「一撃入れられるなんて思わなかったな、ホント……。私、集くんの事舐めてたかもしれない、だから今からは本気で行かせてもらうね!」
雪菜は剣を握っていない左手を前にかざす、そしてここにいる全員が想像もしていないことが起きた。
「第一位階アクセス」




