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クロッシングワールド  作者: たぬきいぬ
第一章     序章
17/151

第十六話 序列六十位VS無能力者

 デバイスが警報音のようなものを上げて試合の終わりを告げる。


「勝者 柊 雪菜」


「クッソオオオオオオ」


 挑戦相手の男は地面に両手をつきうなだれていた。


「さすが柊、Dランクなのに六十位なだけあるぜ!! Cランクを物ともせず倒しやがった!」


 序列。

 それはエデンにおいて自分の力の証。序列が高ければ高いほどエデンでの生活は優遇される。

 序列は各学区での自身の評価となる。雪菜の序列は六十位と高くないように見えるが、Dランクでこの順位は雪菜の以外いないだろう。


「これパートナー決まるのか?」


「次は誰が行くんだ?」


 ギャラリーがそれぞれ試合の余韻に浸っている。まだ熱は冷めず次の決闘を待ち望んでいる。


「これでCランク以下はもう柊さんには挑戦できないだろうな、だけどCランク以下は挑戦できないけどそれ以外なら挑戦できるんだぜ?だし、柊さんは挑戦された試合は必ず受けるし、ふざけて申請するやつがいれば周りが許さないしな」


 真也は意味ありげな顔をしていた。そして真也は手にしていたデバイスを操作し始めた。


「まあDランクの雪菜さんがあそこまでの戦いを見せたんだ、あんな実力差見せられたら流石にCランク以上じゃないと挑戦しないだろうな」


 ふと気づいた。さっきまで手元にあったデバイスがない。


「そんじゃ、なんのランクでもない集くんに挑戦してもらいますか!!」


 俺はこの時気付いた。真也が操作していたのは真也のデバイスではなく、俺のデバイスだったことを。


 真也は勢いよくデバイスの画面を押し、俺にデバイスを投げる。

 そこに表示されていたのは申請完了の四文字。


(おいおいまじか!)


 真也は無能力者の俺に柊さんと試合するように仕向けたのだ。


「また申請が……。え?」


 雪菜の声は周りにもを聞こえておりまた次の挑戦者がいると盛り上がり始めた。


 そして俺と雪菜の目が合う。雪菜のデバイスにはこう表示されているはずだ 〈高坂 集さんから決闘の申請があります〉と。


 俺が無能力者と知っている雪菜は驚いた顔をしていた。俺も必死で手違いと伝えようとするが真也から話を聞いた通りだと、ふざけて申請するやつはいないと。


 俺の手元にはデバイス、言い逃れのできない状況になってしまった。


「挑戦者でで来いよ!」


「待たせるなよ!」


「早くしろよ!」


 周りで試合を早く始めるよう促す声が多く聞こえる。


「どうすんだよこれ! 俺無能力者だぞ!」


 俺は真也の襟を掴みありったけの怒りをぶつける。


「まあ一回挑戦してみろよ、ちょうど擬似アーツも持ってるみたいだしな」


 さっき日向との試合をした時に使わなかった擬似アーツがポケットに入ってた。


「なんでわかったんだよ」


「俺の能力。擬似アーツって変なノイズが聞こえるんだよ」


 真也の能力は聴音。指定した場所の音を聞くことができる能力と聞いているが、擬似アーツがノイズを出しているなんて、使っていても全く気づかなかった。


「あれ取りに行くの面倒なんだが」


 日向は気を利かせて擬似アーツを用意してくれていたが、真也にその期待を持つのは無謀に近い。

 だが真也は何故か擬似アーツを持っていた。


「さっ。これ使っていいから行ってこいよっ!」


「なんで持ってるんだよ!」


 真也は俺に擬似アーツを渡してきた、そして勢いよく俺の背中を押し、俺はギャラリーが囲む輪の中心まで押し出される。


「次の挑戦者あいつか」


「どんな能力で戦うんだ?」


 周りから様々な声が聞こえる。


 無能力者の俺に能力はない。こんな無能力者が雪菜に試合を申し込んだとなれば周りが黙っちゃいないだろう。


 そして俺は雪菜の前まで近づく。


(事情は後で説明すれば良いか)


 俺はこの試合を早く終わらせ雪菜に事情を説明すればいいやと考えていた。


「ごめん、雪菜さん連戦になるけど挑戦させてもらうよ」


 俺は覚悟を決め雪菜の返信を待つ。


「まさか集くんから申請が来るとは思わなくて驚いちゃったな。だけどごめんね、私は必ずTOEで優勝したいの」


 雪菜は自身のデバイスの画面を押す。俺は雪菜にどうして優勝したいのか聞きたかったが、雪菜から放たれる空気がそれをよしとさせない。


「ランク—学内序列 位と、ランクD序列六十位の試合を開始します、テンカウント後試合を始めてください」


 デバイスから自動音声が鳴り響く。試合が始まる時、デバイスはお互いのランクを読み上げるシステムになっている。だが俺にランクは無いため電子音は俺のランクの時は何も言わなかった。


「あいつのランク聞こえたか?」


「聞こえなかったけど、ランクなんて言ってた? デバイスで確認するか」


 周りがざわめき出す。それぞれが持っているデバイスで俺を写す。


 デバイスからの流れるカウントダウンが始まると同時に周りが騒ぎ始める。


「10」


「え? どういつこと?」


「9」


「デバイスの故障か?」


「8」


「俺のも写ってないぞ?」


「7」


「これ故障じゃなく無いか?」


「6」


「そういえばあいつ見たことあるぞ」


「5」


「Fクラスの高坂じゃないか?」


 周りの騒ぎ声は大きくなる。


「4」


「あいつ最近Aクラスの前で騒いでた」


「3」


「高坂集ってあれじゃん!」


 雪菜はアーツを出現させ構える。雪菜は気づいているんだろう。今の状況を。だが手加減するような雰囲気はない。


「2」


「学生の中でたった一人しかいないあいつだろ」


 俺は真也に渡された擬似アーツに意識を送り、剣の状態にし強く柄を握りしめる。


「1」


「無能力者だ」


「0」


 カウントダウンは0になり、俺はカウント0と同時に雪菜に向け駆け出した。

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