第八十六話
「うおおおおおお!!」
雅人とガウスの拳がぶつかり合う。ガウスの巨体から放たれる拳の威力は雅人の力よりも上回っており雅人に対してのダメージの蓄積が徐々に増えていく。
拳がぶつかり合い、相手が隙を見せれば体や顔に拳がぶつかる。
(やばい意識が……)
雅人の連撃はガウスにもダメージを与えているが、ガウスからの雅人へのダメージの方が蓄積を上回っている。
雅人の額からは血が流れ腹部にガウスの拳が入ることであばら骨も折れている。口から血を流しながらも足を踏ん張りガウスへの連撃をやめない。
(こんなところで負けられないんだよ……)
雅人は拳に心力を流し込む。
「だあああああああああああ!!」
ガウスが雅人の気迫に押されてしまう。
「急に一撃一撃が重くなった」
ガウスは目を見開く。自分の拳と対等の力、徐々に力が増していきガウスが押され始める。
ガウスは雅人の拳に纏っている心力の色が徐々に黒くなってきていることに気が付いた。
「なんだその力は?」
ガウスは殴り合いながら雅人に話しかけるが雅人は返事をしない。
徐々に徐々に黒くなる心力を纏った拳にガウスは恐怖を覚え始める。
(この俺が恐怖を感じている?)
ガウスは自身の耐久力には自信があった。自分の主に耐久力を評価され主の下にいた。そのガウスが自身に蓄積されていくダメージに、雅人が纏う拳の心力に恐怖を感じていた。
一撃一撃がガウスに命中するたびにガウスは体が重く感じていた。重い拳がガウスの体にめり込み、明らかに体格差がある中で圧倒的な力の差を雅人はガウスに与えていた。
「があああああああ!!」
雅人の拳の心力は真っ黒に染まりガウスの拳が雅人の拳に押し負ける。ガウスの拳は大きく弾かれその一瞬で雅人はガウスの腹部めがけて拳を放つ。
ほぼ意識のない状態で雅人はありったけの心力を込めて拳を放った。
黒く染まった心力がガウスの腹部にめり込みそのまま拳を振り切った。
「がっ!!」
ガウスの巨体は反対側の壁まで吹き飛び壁に大きな穴をあけ、建物の壁をぶち破りガウスは塔の下へと落ちていく。
雅人はふらふらな状態でガウスが落ちた先へ歩く。
雅人は壊れた壁から下を見下ろした。
「嘘だろ……」
雅人は自身の心力をすべて使い拳を放ったためもう心力は残っていない。
形成状態のアーツを維持するので精一杯の状況だった。
だがそこから見えるのは絶望的な光景だった。
ガウスは雄たけびを上げ塔の壁をよじ登り徐々に雅人がいる階層まで上がってくる。
「この高さから落ちてまだ生きているってのかよ」
雅人は遠距離の攻撃方法を持っておらずここからもう一度叩き落すことは不可能。
「ワガアルジタメニーー!!」
徐々に振動が雅人の居る階に近づいてくる。
そしてガウスは白目をむき、雅人が居る階まで一気に跳躍する。
「諦めてたまるかーー!!」
雅人は自身の拳をガウスに向け放った。




