第四十話 私の主
扉の先はすぐ砂地になっており突き当たりには大きな建物があった。
外観からもそうだが、高嶺が『我が城』と言うだけはある。
よく漫画やアニメで出てくるお城そのものだった。
「着いてこい中に案内する」
蓮達は高嶺とアイクの後ろをついていく。 そして俺達の後ろを佐倉 鳴が見張っている形だ。
「いいのかよ、このままついていって」
雅人は横にいる蓮に心配そうに声をかける。
「今はあいつらの様子を見るしかない、後は仲間として行動するかはその後だ」
蓮は高嶺の背中を真っ直ぐに見ながら、雅人に答える。
「あたしはアンタに任せるわ、どっち道逃げられそうにないし」
凪は後ろで蓮達を見張っている鳴を横目で見る。
今の状況は少しでも動けば鳴の能力で三人とも撃たれかねない。
いくら蓮であっても背中を向けた状態で鳴の攻撃に対応することはできない。
蓮達は高嶺に続き建物内を歩いていると他の生存者の男を見つけた。
だがその生存者の男は高嶺達とは違い、体は汚れ今にも倒れそうな状態で歩いていた。
「おい、お前大丈夫か」
雅人は生存者の男に話しかける。
だが生存者が雅人の方を見た瞬間、生存者は震えだした。
「すいません、今すぐ綺麗にしますので」
生存者の男が見ていたのは雅人ではなくその先にいた高嶺だ。
「……」
高嶺は何も言わずにそのまま歩いていく。
「おい高嶺、何でアイツはお前とは違ってあんなに汚れてんだよ」
雅人は高嶺に迫る。 後ろにいる鳴を警戒しつつ、高嶺との距離を縮めた。
「アイツが弱いからだよ」
「弱いだ?」
「弱い奴が強い奴に従う、そんなことはこの世界じゃ当たり前だろ? ただ守られるだけの奴なんざ此処にはいらない。 必要なのは此処で生き抜く為に必要なコマだけだ」
雅人は額に血管を浮かべる。
「この世界だからこそ上下関係はハッキリさせておかなくちゃいけない、アイツは守られてる分、守っている俺たちに逆らわず従いコマのように働く、そうしていれば命の保証はされる、そうだろ?」
「弱いから従うなんて間違ってんだろ、お前は王様にでもなったつもりかよ」
「フハハ、なったつもりか…………わらわせるなよ。 俺はこの城の王だ」
その瞬間高嶺は心圧をはなつ。 その場にいた全員が高嶺の心圧に当てられた。
雅人は右足を一歩後ろに引いてしまう。 高嶺から放たれる心圧もそうだが、何よりも眼光でも相手を圧倒していた。
「その考え気に食わないわね」
凪は雅人の前に入り高嶺を睨みつける。
「さっきから聞いていれば戦えない能力者はコマだとか俺は王だとか、あんた何様なの?」
「……」
高嶺は凪を見て急に黙り込んだ。 そして次に発した言葉に三人は驚くことになる。
「お前いいな、気に入ったお前を俺の物にする」
「あんた何言って!!」
高嶺はそう言いスタスタと歩いていく。
「何だあいつは」
「何なのよあいつ」
凪と雅人はただ呆然とすることしか出来なかった。
だが蓮だけは違った。 高嶺の心圧を受けながらも意識は全く別のところを向いていた。
蓮は鳴の横まで下がり喋りかける。
「佐倉 鳴だっけか? 佐倉は何で高嶺の下に着いてるんだ?」
蓮は唐突に鳴に話しかける。
鳴は犬のように首を傾け何を言っているの? と言わんばかりの表情をしていた。
「あの人は私の主」
「主ね……」
蓮は高嶺の方を見てそう呟く。 自分とは全く別の考えを持っている相手にまったく共感出来ない思想、そしてその相手について行っている鳴の事を心配に思ってしまう。
ただ高嶺に付き従う鳴は『本当にこのままでいいのか』と思っているのかどうかということを。




