第三十七話 コピー能力
「私も早く治してそっちに参加できるようにするから」
最後に雪菜のその言葉だけを残しそれ以降雪菜から声が聞こえることはなかった。
「雪菜急に雰囲気変わったな」
俺は雪菜の急な態度の変化に疑問を感じた。
「そうか? 俺が雪菜の立場なら同じ様になるかもな」
蓮は閉ざされたカーテンの方を見て話した。
「どういうことだ?」
俺は蓮の視線を辿り閉ざされたカーテンの方を見る。
「自分は動けず、だけど同じ環境にいる仲間は動ける状態で、危険な環境に飛び込もうとしている。 それをただ眺めているだけなんて嫌だろ?」
俺は雪菜の立場を自分の立場に置き換えて考えてみた。
同じ様に強大な敵に挑み、だけどダメージは確実に自分の方が少ない。 だけど自分より早く立ち上がり、皆の為に戦おうとしている。
(俺が同じ立場ならボロボロの状態でも動こうとするだろうな……。 だけど雪菜は知っている、この世界の怖さを……だから早く治して万全な状態にして戦える様になろうとしているんだ)
俺は蓮の方を見る。
蓮はブレアのヘルブラストをガードしていたが、直で攻撃を受けてしまっていた。
その後もまともに動けなくなるほどのダメージを受けていたはずだ。
「どうして蓮はそんなにピンピンしてるんだよ」
「俺か? 回復が早いからじゃね?」
蓮は首を傾けてまたニヤリと笑った。
特に深い意味がある様な感じには見えなかった。
「まあ能力者にはある程度回復能力の差はあるさ、集お前にも時期わかるさ」
蓮はパイプ椅子から立ち上がり。 立ち上がる際も体を痛がる様なそぶりは見せていない。
「そんじゃ行くわ」
「ああ、気をつけてな」
蓮は保健室から出ていく。
「お話は終わったかな? それじゃあカーテン閉めとくね」
坂町がいつの間にかベットの隣まで来ていた。 そしてリクライニングを直しカーテンを閉める。
「ありがとな」
俺は閉まったカーテンの向こうに感謝を伝えた。
カーテンの向こうの人影が歩こうとしていた足が止まる。
「集くん、これだけは約束してくれないかな」
「なにをだ?」
「雪菜を悲しませないであげてね……。 あのこ本当に脆いから」
その言葉を残し坂町は保健室から出て行った。
俺は閉ざされたカーテンの向こうを見る。
もう見えない雪菜の方を見る。
(雪菜が脆いか……)
いつも強い雪菜しか見てこなかったから、脆いなんて言葉があまり響いてこなかった。
俺は目蓋を閉じ意識を落とす。
体が動ける様になれば、俺自身の能力のことも調べる事ができる。
俺自身の能力、皆の能力をコピーする力。
(やっと能力を手に入れたんだ……)
今までずっと憧れていた、そして届くことのなかった異能の力を俺は手にする事ができたんだ。
集の意識は徐々に深い闇に落ちて行った。




