第九話 縮む距離
ジリジリと甲高い電子音が部屋に鳴り響く。スマホのアラームが鳴り、徐々に意識が覚醒していく。体を起こしベットに腰掛ける。
(やば、風呂も入ってないのに寝ちゃったのか)
気づくと外は明るくなり朝になっていた。昨日は帰ってからベッドに倒れ込んだ後気づかないうちに寝てしまっていたらしい。
テーブルに置いてあるリモコンでテレビをつけ、帰ってすぐ眠ってしまっていたため、とりあえずシャワーを浴び汚れた体を洗い流した。体を拭き、何気なくテレビに目を向けると、ニュースが流れ始める。
「次のニュースです。学生が行方不明人になっている事件が多発しており、昨日までで学園島・本島合わせて約50人もの学生が行方不明になっているもようです。この問題は7年前と同じ事件とみて調査を進めているもようです」
ここ最近連続で起きている学生の行方不明事件、7年前も同じ事件が起き、多くの学生が行方不明になっていた。7年前に行方不明になった学生達はまだ見つかっておらず、子供を失った親は今も心を痛めている。
そして今、またその連続行方不明事件が起きてしまっていた。
7年前に起きていた事件が何故今になってまた起きたのかはわからない。何か原因があるのだろうか、何かをきっかけにこの事件が起きているのか調査はされているのであろうが、まだ一つも手がかりは掴めていないそうだ。
朝食はバター塗ったトーストと牛乳のみだ。貧乏学生には朝からサラダや味噌汁といったごちそうにはありつけない。実家にいたころはいい生活を送っていた実感できる。
洗面所で歯を磨きをし、寝癖などがないか鏡でしっかりチェックし制服に着替え登校の支度をした。
家を出て電車に乗り通学路を歩く。昨日のことを思い出し、今日は雪菜に会うのが少し楽しみになっていた。この大きな学校で雪菜を見つけるのは大変だが、学年でもトップクラスの美少女と仲良くなったのだこれからもっと仲を深めたいものだ。
すると校門をくぐってすぐのところで声をかけられた。
「集くんおはよう。昨日は大丈夫だった?」
雪菜の方から声をかけられ少し驚いてしまう。
「おはよう雪菜さん。大丈夫っだったよ多少は体痛いけどね」
アーツでの攻撃では傷にはならない。だが感覚として痛みは残る。棒状のアーツで殴られれば痛みがあるのは当たり前だ。これが本当の鈍器なら大怪我になる。
「なら良かった。結構クタクタにされちゃってたから心配してたんだよ?」
〈クタクタ〉なんて言葉を始めて聞いたが、雪菜から聞くと可愛く感じる。ボコボコよりもクタクタの方が聞いてて悪い気はしない。
俺のことを考え、選んだ言葉なのだろう。女の子から『ボコボコにされてたね』なんて言葉を聞きたくないものだ。
「まっこれからはああいうのに巻き込まれないように気をつけるよ。」
昨日みたいなことはもうこりごりだ。女の子に助けてもらうことも、男としては少しプライドが傷つく。
「こんな所で話しているのも何だし教室に向かおうか」
ここで話していては周りからの目が気になる。学年でトップクラスの美少女と学年で、いやこの島で一番最底辺の男が話しているのだから周りが気にしないわけではない。
だが雪菜にとってはそんな立場は関係ないみたいだった。雪菜は全く気にしていない様子で会話を続ける。
雪菜と話していいる途中で、いきなり背中を軽く叩かれる。この感覚をいつもうけている俺は声を聞かなくても誰だかわかる。
「おい日向。今いいところなんだから邪魔すんなよな」
雪菜には聞こえない距離で日向に言い放つ。雪菜みたいな美少女と他愛のない会話をしているなかを邪魔されたくない。
「おいおい、美少女捕まえて何してんだよ」
ひたすら肘でお腹のあたりを小突いてくる。
「やめい、やめい、やめい。朝からテンション高いなお前」
日向は気分がいいとこうして背中から襲いかかってくることがある。
「いや~。集が真也と風音以外の人と仲良く話しているの初めて見たからさ」
日向は本当に嬉しそうにしていた。この学校での俺の扱いを知っている日向は、俺に仲良く話ができる相手が新しく出来たことを心から喜んでいるみたいだった。
雪菜を放置して話をしてしまったことを思い出し、雪菜に日向を紹介した。
「こいつの名前は 夏希 日向 俺の友達」
「夏希 日向です。よろしく。ってこんなごく普通の挨拶でいいのか?」
いつも俺とふざけているため、こう真面目な女の子と話すのはかってがわからないらしい。
風音といつも一緒にいるのだから真面目には慣れているのだと思っていたが、タイプが違うみたいだ。
「普通の挨拶でいいんだよ。他にどんな挨拶があるんだよ」
軽いツッコミをしていると雪菜も話し始めた。
「柊 雪菜です。よろしくね。クラスは違うけど仲良くしてね」
日向と雪菜がお互いに自己紹介をし合ったあと校舎に向かった。




