プロローグ
ーーこのまま全て失ってたまるか。
建物は倒壊し、地面はえぐれ、綺麗だった学園島の風景はもうそこにはない。学園島の自動修復機能は限界を超え建物の修復は不可能な状態になった。
わずかな視界の中周りを見渡す。俺は空中に浮いており、学生達を見下ろしていた。
地面に突き刺さる無数の剣。地面に倒れている学生達。その中には剣が体に突き刺さり血を流している人もいる。
なんとか立っている学生もいた、その全ては俺に敵意の目を向けている。そして諦めまいと、それぞれの能力で俺を狙うが攻撃は当たらない。
俺ではない俺が軽く手を振り下ろす。敵意を向けていた学生達は吹き飛んでいく。
「諦めてたまるか! 皆んな立ち上がれ! 諦めたらそこで終わりだぞ!」
一人の男子学生が声を上げる。その学生からまだ諦めないという強い意志を感じた。絶望的状況でまだ諦めてはいない。だが俺ではない俺が手を学生の方に向ける。その瞬間、学生に無数の剣が降り注ぐ。学生は自分の持っている剣でなんとか対抗するが、全てを落としきれず無数の剣に体を貫かれる。剣は深く地面に刺さり学生は串刺しにされる。
ーーやめろ、やめろ、やめろ、やめろ!
これは全て俺ではない俺がやったこと、体には大量の血を浴び、眼前に広がる地獄は俺にこれでもかと言わんばかりの絶望を与える。
だが諦めるわけにはいかなかった。俺のために命をかけてくれた仲間達の為に俺は最後に残った力を使う。
ーー必ず全てを変えてみせる。
俺が見ている世界は徐々に色を失う。俺の中にいる俺ではない俺と離れていく。
ーーこれでいい、これでいいんだ。後は任せたぜ。
次の瞬間俺は世界と切り離された。