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メシマズ・パラレルワールド

作者: 山平学美

体調が戻ったので、まず一つ目に短編を。

こういうパラレル系の異世界って見たことない気がするので、書いてみました。

ご飯が不味いのは嫌ですよね。


朝日が部屋を照らす。

それは、彼女の目覚めを促すのに充分だった。

今日は日曜日、学校はない。

二度寝しても良いかと思考したが、空腹を感じ寝具から起き上がる。


リビングには、母が先に朝食を済ませていた。

この家では、朝食は自分で用意するのがルールのため彼女は、トースターに食パンを入れ、焼けるまでの間にインスタントのミルクティーを作る。

ミルクティーの粉末の入ったマグカップにお湯を注ぐだけのシンプルな飲み物、彼女はこれが好きだ。

今日は何をするかと考えながら、ミルクティーを一口飲む。


「ーーーーーーっっっっっぶっふぅ!!」


飲み込む前に吹き出した。

むせた訳ではない、反射的に吹いたのだ。

優雅にテレビを見ていた母が心配そうに視線を送る。

しかし、今の彼女には一切気付く余地がなかった。


「まっっっっっっず!?」


いつも飲んでいるミルクティー、香りも風味も可もなく不可もない一般的なインスタントのミルクティー。

しかし、紅茶とミルクの割合が絶妙で甘みも丁度良い彼女好みの味なのだ。

そういう味のそれが、全く別物の味になっていた。

紅茶の部分は渋く、ミルクの部分は乳臭さを、その二つを混ぜ合わせ適当に甘みをつけただけになっていた。


「どうしたの?ミルクティーなんて対して美味しいものじゃないのは当たり前でしょ?」

「…………え?」

「ほら、パン焦げちゃうわよ?」

「え、あ、うん……うん???」


上手く働かない頭で焼けた食パンを皿に乗せる。

ジャムはいちごを持って、食卓に着く。

ジャムをパンに塗り、一口齧る。


「ーーーーーーーーーーっっ!!」


冒涜的な甘さと、いちごのどの部分を齧れば味わえるのかわからないような酸っぱさとえぐみ。

そして、ベタベタと口内を纏わりついてくる不快さ。

ジャムといえば、値段や販売元で味や食感は大きく変わるものの、変わり種でなければ大抵は美味しく頂けるものだ。

どのように作ればこうなるのか?

パンはミルクティーやジャムに比べればマシである、例えるなら、売れ残ってパサパサになった安物の食パンのような残念な味であるが。


「ごふっ、うっ、げほっ」

「あらあら、もう、大丈夫?お水でも飲んだら?

あら、ニュース。そういえば、昨日は首脳会談があったわね」

「…………へー、どことだっ…っけ!?」


母の発言にテレビに注目した。

そこには、おそらく日本の内閣総理大臣であろう50代ほどの男性と握手をする……
















青い肌に毛の生えていない頭頂部から触覚のようなもの生やした2M以上の巨人がいた。


「な、なにこれえええええっっ!?」


彼女は余りのことに気を失ってしまった。

口の中は未だジャムの不快さを残したまま。

遠くから、母の心配する声が聞こえたが、彼女はそのまま暗闇に心を預けた。











「………………ん」


目が覚めたのは昼時であった。

おそらく、まだ寝ていた父親を起こして自室のベッドに運んでもらったのだろう。

朝起きた時の光景と同じ、彼女の部屋だ。


「え?なに、え、夢?あれは夢だったの?いやでも、あの不味さは夢にしてはリアルすぎる」

「夢ではありませんよ、現実です」


えっ、と彼女は声のした方を見た。

そこには真っ白なふわふわな毛にエメラルドのような綺麗な瞳、後ろ足に長靴を履いた姿で仁王立ちする猫がいた。


「…………猫が喋ってるよ、私、頭がイカレタのかな???」

「いや、正常ですよ貴方は。まぁ、運が悪かったというのはありますが」

「え?運が悪かった?」

「簡単に言えば、この世界は、貴方が元いた世界のパラレルワールドのようなものです」








「………………はい???」

「まぁそれが普通の反応ですね、この世界は貴方のいた地球とある一点が異なったことにより起きた世界です。その一点は、中世辺りから異星人との交流が起きたこと」

「異星人……あの青いハゲの巨人」

「わかりやすいですが、物凄く失礼ですね。まぁ、当たりです。さらに言えば彼らの種族以外の異星人もたくさんいます」

「ひぇ……」

「安心してください、はっきり言って姿形が違うだけで貴方の元の世界と一緒で平和ですから」


彼女は混乱したまま、猫(?)の話を聞いていたが、急にある事実に気がついた。


「待って、そもそも、元いた世界って……私なんでこの世界にいるの!?」

「それもご説明します、と言っても、かなり複雑な内容でして」

「元いた世界に、この世界の私が行ったってこと?」

「いいえ」

「えっ」


「この世界の貴方は消えました。突然ね、わかりやすく言えば神隠しにあったといえばいいのでしょうか」

「は……え、意味がわからない」

「私はある異星出身で、その異星では宇宙内のパワーバランスや異常現象を管理・調査・対処するのを(ことわり)としているのです。

この地球が様々な異星との交流を持つようになってその範囲も劇的に増えて、あ、これはいらない情報ですね。その中でも私は、地球内の日本を担当している者の一人です。

で、先日の12時前、いつものように異常がないか探っていたところこの世界の彼女の周りに見たことのないエネルギー反応を感じたのです」

「エ、エネルギー反応?」

「そうです、私は詳しく探ろうと彼女に接近しようと思ったのです。直感ではありましたが危険を感じたのです。緊急時には他者のプライベートスペースへの侵入も許可がでていましたから、急いでこの部屋に転移しました。ですが、私が転移した直後、12時になった瞬間に、この世界の貴方は光に包まれて消えました。消えたと思ったのです。そしたら一瞬消えたように見えたものぼ光が落ち着くと居たのです。

消える前と同じ姿で、寝ていました」


消えたこの世界の私が、寝ていた。

つまり、それはーーーー。


「私は何が起こったのかわからずとりあえず、監視する事にして見守っていました。

分析上、遺伝子レベルでこの世界の貴方と同一であると判明してはいたのですが。

本当に戻ってきたのか、何もなかったのか。

私の直感が間違っていただけなのか。

そして、朝になり、朝食を摂取していた貴方を見てわかりました。

貴方は、この世界に本来いた貴方ではなかった。

すぐにパラレルワールドを管理している部署に連絡し、確認を取ったところ私の考えは的中していました。

貴方は、この世界に転移してしまっていた」


彼女は薄々気が付いていた、自分が住んでいる世界とは違うということを。

しかし、それは真実を改めて言われる覚悟ができているということとは違う。

彼女は急激な不安と恐怖を抱く。


「私、急に居なくなったってこと?帰れるの?私、元の世界に帰れるの?どうしよう、みんな心配してる」

「とりあえずですが、一応こちらでも対処はしています。貴方が元いた世界では貴方は居なくなってしまっているので、こちらの方から変身のエキスパートを派遣して貴方を演じてもらっています」

「え?」

「なので向こうの世界の心配は及びません、本来なら貴方を早々に帰還させれれば良いのですが」

「帰れないの?」

「実は貴方がこちらの世界の人間でないと判明した直後に、送り返してもらうよう要請したのです。あ、そういった専門の部署がありまして、特に問題なく帰還させられると思っていたのですが。

なぜか、何度試してもエラーが出てしまったのです」

「私、帰れないの……?」

「必ず帰します!早く帰りたいのは重々承知の上ですが、今はまだ。

そのかわり、この世界にいる間は我々で安全を保証させていただきます!」


正直、彼女は泣き出して目の前にいる猫(?)に八つ当たりしたかっただろう。

しかし、向こうも必死なのだろう。何となくだが、疲労と罪悪感を抱いているように彼女は感じた。

とりあえず、この世界の異星人が帰るための手段を探す間はこの世界にいる必要がある。

つまり、この世界に住むことになる。


「……ちょっとまって!!!!こっちの世界にいるってことは、あのクソ不味い食事をまた取らなきゃいけないってこと!?それとも、たまたま、私が不味いのを選んだだけ!!???」

「あ、えっと、そうですね……隠しても意味がありませんし言いますが、この世界の食事は基本全部不味いです」













「い、いやああああああああああああああ!!!帰りたいいいいいいいい!!!!!」



果たして私は無事に元の世界に帰るまで、生き残れるのでしょうか?

彼女はどうなるのでしょうか。

他にもファンタジー異世界物の連載作がありますので、良ければそちらもどうぞ。

何かありましたら、感想にお願いします。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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