お嬢様はかわいいです!
「工藤、ちょっとそこに正座しなさい。」
お嬢様がおっしゃったので、私は指示通り正座する。
私は、何か失態をしてしまったのだろうか。
「目を閉じなさい。」
私は目を閉じる。
お嬢様が、私の後ろに回り込まれたのが、足音から分かる。
何かされる……!
「わ!?」
お嬢様が、私に何かを被せてきた。……アイマスクだろうか?
「じゃ、ちょっとまってて。」
お嬢様は私を残したまま、部屋を出ていかれた。
……もしかして、放置プレイ?
怒るのすら、めんどくさいと思うほどの失態だったのだろうか……。
私は一人で反省していた。
しばらくして、ドアが開く音がする。
お嬢様が戻ってこられた。
「まだ、目を開けちゃだめよ。」
なにやら、ごそごそと何かの作業をしていらっしゃる。
私はお嬢様の作業が終わるまで、待つ。
「はい、じゃあ、目隠しを取っていいわよ。」
私は目隠しを取る。
その瞬間。
パンッ! と音ともに何かがこちらに飛んできた。
お嬢様が手に持っていたのは、クラッカーだった。
私の頭にはクラッカーの中身が乗っかっている。
「工藤、誕生日、おめでとう!」
お嬢様が笑顔でそうおっしゃったことに、私はポカーンと口を開けて驚く。
「ほら、あんた、今日誕生日でしょ。仕方ないから私がお祝いしてあげるのよ、感謝しなさい。」
お嬢様は、テーブルの上を指さし、言った。
「ほら、ちゃんとケーキも準備したわよ、感謝しなさい。」
テーブルの上には丸いケーキがおいてある。ピンク色のクリームと、イチゴ、チョコレートが載っていた。
「ほら、食べなさいよ。私が『あーん』してあげるから。」
お嬢様は、ニコニコしている。
「あーん、ですか!?」
私は、お嬢様のこの行動の真意を探る。
少し前の紅茶事件からして、このケーキも何か仕込んであるに違いない……!
でも、お嬢様の命令は、絶対なのである。
「はい、あーん。」
お嬢様はケーキを私に差し出されている。
覚悟を決め込み、それを口にする。
そのケーキは、甘くて、おいしかった。
「お嬢様、これ……!」
「何よ、私が何かケーキに入れてるとでも思った?」
私はぎくりとする。
「今日は工藤の誕生日だもの。ちゃんと祝うわよ! ……おめでとう。工藤。」
「はい! ありがとうございます! お嬢様!」
私は笑顔でお嬢様に最大の感謝の意を示す。
お嬢様は、わがままで、天邪鬼で、気まぐれだけれど、
とっても、可愛らしいお方なのである。
私は今日もお嬢様と過ごせてよかった。
そう思う一日であった。
最後までお読みいただきありがとうございました。