お嬢様は天邪鬼です!
お嬢様と私は、とある遊園地に来ていた。
突然、お嬢様が「遊園地に行きたい! 工藤、連れてって!」とおっしゃったためである。
「私、あれ乗りたい。」
お嬢様が指さした先にあったのは、コーヒーカップだった。
お嬢様は、絶対に高速でぐるぐる回す気でいらっしゃる……!
私は身の危険を感じた。
しかし、お嬢様の命令は、絶対なのである。
「分かりました。お嬢様、乗りましょう。」
お嬢様と私は、乗り場へと向かう。
いざ、カップに入ると、お嬢様との距離が近い。
けれど、そんなことは、気にしていられない。いまから、地獄が始まる……!
「これ、回すのよね?」
「はい。その通りでございます。」
私の想像通り、お嬢様は高速でぐるぐると回す。
「きゃー!」
「ぎゃああああああ!」
5分後、私は死にそうになっていた。
「あら、工藤……! 顔色悪いわよ!? 大丈夫? ……まったく、頼りないわね。」
心配されているのか、けなされているのか分からない。
「次いくわよ! 次。」
お嬢様が向かった先は、お化け屋敷であった。
確か、お嬢様は暗闇とかお化けがお嫌いなはず……。
「……お嬢様、大丈夫ですか?」
「工藤、それどういう意味よ!? 私がビビってるとでも!? この私が!」
お嬢様はお怒りになった。
「いえ、なんでもありません! 行きましょう。」
そう言ったが、お嬢様は入り口に入ろうとしない。
「……工藤、しょうがないから、先に行かせてあげるわ。」
それはつまり、先に行きなさいという意味だ。
私はお化け屋敷の中に入る。
お嬢様は私の後にピタッとくっつくようにして、ついてこられる。
「きゃああああ!」
何かに触れたのか、お嬢様が叫ばれる。
「大丈夫ですか、お嬢様!?」
お嬢様は私に抱きついてこられる。
「だ、だ、だ、大丈夫に決まっているでしょう!? 私を誰だと思っているの!」
お嬢様は絶対に怖がっているが、強がっていらっしゃる。
「お嬢様、もうすぐ出口ですよ。」
「く、工藤、歩くの早いわよ。もっとゆっくり歩きなさい。」
「分かりました。」
ようやく、出口にたどり着く。
「お嬢様、出口です。」
「……はあ。……たいしたこと、なかったわね。」
「そうですね。」
同意しないと怒られるので、同意しておく。
「それじゃあ、帰るわよ。」
「はい、分かりました。お嬢様。」
「……また、いつか一緒に来るわよ。」
お嬢様は、私の方を振り返ることなく、おっしゃった。