お嬢様はわがままです!
「工藤、これも。」
私は両手いっぱいに大量の服を抱えている。
「工藤、これも。」
お嬢様と私は、ショッピングに来ている。
既にお嬢様が選んだ服で、私の視界が遮られている。
お嬢様は、2つの服を手に取っている。
「ねえ工藤。これとこれ、どっちがいい?」
お嬢様が私に尋ねられる。
これは、絶対に外すことが許されない2択だ。
「あの、お嬢様、すみません。その、お嬢様の選んだ服で視界が遮られて、見えないのですが。」
「はあ!? そんなの根性で見なさいよ!」
お嬢様はいつも私に無理を……ごほんごほん!
少し厳しい助言を下さる。
「は、はいい!」
私は服を抱えながら、なんとか、2つの服を見る。
青いフリルのワンピースと、ピンクのシンプルなワンピースだ。
お嬢様はたしか、青が好きだったはず。
「どちらもお似合いだと思いますが、青い方が、よりお似合いになると思います。」
「へー、青い方ねえ。じゃあ、試着するから待ってて!」
どっちを選んでも怒られると思っていた私は、少し驚く。
「どう?」
「あ、凄くお似合いだと思いますよ。」
私は服の山を通してお嬢様に回答する。
「……絶対見えてないじゃないの!」
「す、すみません。想像で申し上げました。」
「ちゃんと見なさいよ! ちゃんと!」
私はなんとかお嬢様の試着した姿を見る。
色白のお嬢様には、青いワンピースがとてもよくお似合いになっている。
「とってもお似合いです! お嬢様!」
私は素直に感想を述べさせていただいた。
お嬢様は、「あら、そう。」とおっしゃった。
お嬢様の頬は、ほんのりながら、ピンクに染まっていた。
「工藤。これ、着て帰る。」
「はい! お嬢様!」
ようやく、長いショッピングが終わる……!
お嬢様は、その後しばらく機嫌が良かった。