お嬢様の命令は絶対です!
1話ごとに完結します。
(6話ほど投稿予定です。)
「ちょっと、工藤! 背中、かゆいんだけど。」
私は本条家に仕える執事である。名前は工藤。
お嬢様のわがま……ごほんごほん!
お嬢様の命令に従う。それが私の使命。
「はい。お嬢様、お背中をおかきします。」
私はイスにお座りになっているお嬢様の背中の方へ回る。
そして腰をかがめながら、服の上から背中をかく。
「ちょっと工藤! 服の上からかいても意味ないでしょ!?」
お嬢様の発言に、私は困惑する。
「そ、それでは、どうやっておかきすればよろしいんですか?」
お嬢様は、ニヤっと笑い、おっしゃった。
「直接に決まってるじゃない。」
「ちょ、直接……ですか!?」
おろおろする私に、お嬢様はおっしゃる。
「そうよ。直接よ。」
「それは、一体どうやってですか。」
お嬢様は、ドレスを着ていらっしゃる。背中だけ捲れるものではない。
「そんなこともわからないの!?」
お嬢様は顔をしかめる。
「脱がせばいいじゃない。脱がせば。」
「脱が……っ!? い……いや、お嬢様。それは、その……。」
「何よ。何か私に文句あるの!?」
「い、いえ、滅相もございません!」
「私の命令は?」
お嬢様が、この質問をしたとき、私がお答えできる言葉は1つだけしかない。
「絶対です。」
私は、恐る恐る、お嬢様の背中のファスナーに手をかけた。
その時。
「あ、やっぱり、もうかゆくなくなった!」
そうおっしゃったお嬢様はイスからいきなりお立ちになった。
急だったため、私は驚き、後ろに倒れ、尻餅をつく。
お嬢様は後ろを振り向き、私におっしゃる。
「あれれ? もしかして、本気にしちゃった? 本当なわけ、ないじゃん。」
お嬢様は高らかに「あははっ」とおっしゃった。
「工藤の慌てっぷりったら、笑える!」
私は今日も、お嬢様にイジメ……ごほんごほん!
お嬢様から笑顔を受け取らせていただいているのである。