11話 『太陽』《ザ・サン》
アルカナ正教会の集まりの後日、私はある人物に呼び出されていた。
『親睦を深めたいから』という理由らしい。
因みに、先日の集まりで仕事が忙しいと言った人物の1人である。
「ごめんねー!遅れちゃった!」
待ち合わせをしていた喫茶店に、少し遅れて私を読んだ人物が現れた。
「いえ、大丈夫です
私もさっき来ましたので……」
「そう?気は遣わなくて大丈夫だよ?」
とても明るくて気さくそうな女の子だった。
「えっと、シンシアさんでしたよね?」
「うん!シンシア・ソルだよ!」
シンシア・ソル。『太陽』の名を冠する魔法使い……のようだが、正直全然魔法使いに見えない。
服装も学院の制服のようなものを着ていた。
「その服装……学院生なんですか?」
「え?あー、それはね……」
シンシアさんが言い終わらないうちに、辺りの人達がざわざわし始めた。
「あれ……シンシアちゃんじゃない?」
「え?……うわ、本当だ!」
「……やけにざわついてませんか?」
「あはは……やっぱりもう少し地味な格好で来た方が良かったかな……」
「?」
私が頭に疑問符を浮かべていると、近くに座っていた男性が近寄り、シンシアさんに声をかけた。
「あ、あの……シンシアさんですか?」
「はい、そうですけど……」
……何だろう。男性のほうがかなり興奮しているように見える。まさかナンパだろうか……
などと考えていると、
「お、俺、ファンなんです!握手して頂いても良いでしょうか!?」
「わぁ、ありがとうございます!
これからも応援よろしくお願いしますね☆」
そう言ってシンシアさんと男性が握手した。
「ちょ、お前狡いぞ!」
「わ、私もお願いします!」
続々と人が押し寄せて来た。
アルカナ正教会というのはこんなに人気な団体だったのか!?
「僕もお願いします!」
「ちょ、店長落ち着いてください!」
……何か店長まで壊れてしまっている。
その後騒ぎは長期に渡り、結局私達はろくに会話も出来ないまま店を出た
「ごめんねぇ……せっかくお話出来たのに……」
「それは良いですけど……大丈夫ですか?
随分疲れてるみたいですけど……」
「うん……やっぱり変装とかするべきだった……
アリアちゃんにはありのままを見て欲しかったし……」
「あの、アルカナ正教会ってあんなに人気だったんですか?」
「あー……私ね、アルカナ正教会とは別でちゃんとお仕事してるんだ。
『アイドル』って言って分かる?」
……アイドル。聞いた事はある。
村でもたまに話に出ていたが、縁のない話と忘れていた。
確か、可愛い女の子やかっこいい男の人がステージで歌って踊るのだ。
「シンシアさんが、そのアイドルなんですか!?」
「うん……アルカナ正教会としてより、アイドルとしての私が人気なんだよ、多分。」
後でステージの様子を魔法で記録した映像を見ると、会場は大盛り上がりで、ステージ上のシンシアさんを含む女の子達を観ていた。
映像からでも会場の熱気が伝わってきた。
「……アルカナ正教会とアイドルの両立って出来るんですか?」
「両立っていうか、アイドルの仕事、正教会の仕事、って別々に考えてるよ。
どっちも全力でやらないと、皆の期待に応えられないから。」
「……何だか、シンシアさんが戦ってる姿を想像出来ないんですが……」
「そうかな?えへへ……」
彼女……シンシアがえげつない戦い方をするというのをアリアが知るのは、もう少し後の話である……