10話 『仲間』《パーティ》
アルカナ正教会による会議(?)の後、私は初対面の人たちから再び声をかけられた。
レオさんの言った通り、癖の強い人がほとんどだったけれど……
「じゃあ、僕から行かせてもらおうか。」
白いローブの男性が最初に口を開いた。
「僕は『魔術師』、
マーリン・ロッド。
……まぁ、これくらいにしておくよ。あんまり説明しても混乱するだけだろうしね。」
「まぁ、そうだねぇ。どうしようか。
こっちは20以上居るわけだし……あんまり一気には覚えられないかもね。」
マッドさんが心配したのか口を挟んだ。
確かにあまり一気には覚えきれないけど……
「今すぐ覚える必要もありませんよ。またそれぞれ会った時にでもゆっくり話しましょう。」
盲目の青年がそう言った。
……しかし、仲間となる以上せめて名前くらいは覚えたいものだ。
「せめて、皆さんのお名前だけでも……」
「ふむ……ではこうしましょう。」
盲目の青年がどこからか大きめの紙を取り出し、その紙に向かってボソボソと何か言い始めた。
「あの、何をしてるんですか?」
青年の後ろから覗き込んでみると、紙に物凄い速さで文字が書き込まれていた。
どうやら青年が言った言葉を自動で記録しているようだ。
「そして最後に……『風景転写』《フォトグラフ》」
文字列の端に、アルカナ正教会のメンバーの顔の絵が浮かび上がる。
まるで本物のような精巧さだ。
「はい、これはまぁ、名簿ですね。
名前とそれぞれの容貌、ついでに冠する名も。
どうぞ。これで覚える事ができますよ。」
「あ、ありがとうございます」
青年は私に紙を手渡した。
書かれていることから、彼は『審判』、ロー・トリアルであると分かる。
とても分かりやすい。
……あれ?
「えっと、ローさん……ですよね。
あの、盲目、なんですよね?」
「えぇまぁ、はい。」
「どうして私の顔も知ってるんですか?」
そう。その紙には初対面であるはずの私の絵も載っていた。
私も仲間って事だろうけど、他のメンバーはともかく盲目の彼が私の姿が分かるはずがない。
「……あぁ、その事ですか。
私はちょっと特別な目でですね……ほら。」
ローさんが閉じていた瞳を開けると、夜の星空のような、紫がかった色の上に無数の光の点がある、普通ありえない瞳が姿を現した。
「魔眼『ゲイザー』……
遍く全てを見通す瞳。私には過ぎた代物ですね。
まぁ、助かってますが。」
「はぁ……」
……そう言えばレオさんが言っていたな。
『天眼』と呼ばれる全てを見通す魔法使いが居ると。
「まぁ、聞きたいことがあれば何でも。
これから、よろしくお願いしますね。」
……ローさんはアルカナ正教会でも群を抜いた常識人で、私は度々彼に手助けされるのだった。