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第8話:力と格好は伴わない

シトリアと共にクレパまでやってきた。


・・・はいいものの、どうしたらいいのか分からない。



真っ向から勝負を挑んでも勝てないだろう。


「・・・ここは、暗殺ですね。」


可愛らしい少女の口から出たとは思えない。

が、それしかないのかもしれない。



「暗殺って・・・どうしたらいいんだ?」


「シャミューシャは偉そうに町役場の中にいると聞きます。

今思い出したのですが、そういえばこんなこともあろうかと・・・ってか、遊び心で、ここの町役場には隠し扉を設置してみたりしたんです。

ゲームとかではよくありますよね?」


「む・・・確かに。」


「そこから入れば、上手くシャミューシャの後ろ側に回れるはずです。

後ろに回ればこっちのもの。

・・・後は一撃で始末するだけです。」


そう言ってシトリアはニヤリと笑った。


「そういえば、街の人っていなくないか?」


「はい、クラシュに特に狙われているクレパは重要保護区として、街の人は首都に避難させているのです。

で、一部エクサーで街自体を守っています。」


「へぇ〜・・・」


「あ、あった。アレです。」


シトリアが指差す先にはいかにも町役場と言ったセンスのビルがある。・・・そういえば、こっちの世界の建物って、

たまにこっちの世界と同じなんだが。ほとんどヨーロッパなのに。


「あ、公共の機関は遊び心で、

そちらの世界と同じデザインにしたりしてるんですよ?住民からは不評なんですけどね〜・・・浮いてるって。」


そういってシトリアは苦笑いした。


まぁ、確かに。


「そういえば、遊び心って・・・

全部シトリアが建物のこととか決めてるのか?」


「はい、まぁ、姫ですから。」


姫ってそんな国事どころか細かいことまでするのか?


「あ、この壁です。・・・え〜っと・・・セイッ!!」


シトリアが壁を蹴飛ばすと、壁は簡単にはずれ、

中に入れるようになった。


「さぁ、中に入りましょう!」



・・・カチッ!


ガシャン!!!


・・・え?


何か踏んだような音と共に、

壁の抜けた部分が閉じられた。


「おぉ〜、これ、トラップにもなるんだな。」


シャミューシャの声。少し離れたところでシャミューシャは片手に水晶玉を持ちながら武器紙をまじまじと見つめていた。


「お前らは占いとか信じない派なのか?

行動が全部筒抜けなんだが。」


シトリアが緊張した面持ちで口を開く。

「・・・・・・どうしよう。」


ここは落ち着こう。

俺はシトリアに目配せした。



「ってか、何で幹部とやらのお前が率先して出てくるんだ。」


「常識には捉われないそれが俺のやり方だからだ。」


「それはこっちの世界では遠まわしに非常識と言う気がする。強い奴は後から出てくるのが定番なんだぞ?」

・・・ゲームの定番だが。


「そうなのか?じゃあ、俺は最後に出なきゃだな・・・」


よし、乗ってきてる。


「それに、最後の最後で倒したほうがかっこいいだろ?こんな最初で潰したって何も格好良くないって。

弱いものいじめみたいなもんじゃないか?」


「ふむ・・・まぁ確かに・・・。」


バカだ。強いけどバカだこいつ。


「な?分かったら一回自分の持ち場戻ったほうがいいって。」


「あぁ・・・そうかもな・・・」


そういってシャミューシャは後ろを振り向き歩いていった。


ヒュンヒュンヒュンヒュン・・・・・・・


いつの間にか隣からいなくなっていたシトリアがあからさまなチャージ音を出しながらバカでかい銃を持って近づく。



「いっけーーーー!!!!」


ドォオオン!!!!!!


銃から発射された光線はシャミューシャに直撃・・・・・・


うわぁ・・・狙ったことだが、卑怯だなコレは・・・。


「おいおい・・・何のマネだよ?」


直撃・・・したと思っていた。

シャミューシャは無傷。


「武器紙って便利だな〜・・・何でもできるじゃねえか。」


シャミューシャの周りにはうっすらと光の膜が見えた。

バリアってやつか・・・。


「あぁ〜!!祐樹さん!!!!」


シトリアが俺に残り少ないはずの武器紙を一枚投げる。


いや、戦っても無理なんじゃ・・・?



武器紙には既に変わった形の図形が描かれていた。


これに描くのか?線を無視して描く・・・のはダメだよな。もし、効力が消えたりしたら困る。いや、既に困ってはいるけど。

これは・・・そうだ・・・アレが描ける。



俺はRPGと言ったら剣だと思っている。

途中に色々試しても何だかんだで剣が一番強いからだ。


でも、それはRPGの話だ。あくまで俺は、剣の修行を積んだ主人公じゃない。

じゃあ・・・修行を積んだことがある武器を使ってみようか。



俺はその武器を描いてその武器の立体的な姿を思い浮かべた。

こっちの世界でもある・・・ゲームの世界でも大抵あるが、主人公に使ってもらえることはまずない、あの武器を。



「・・・どうした?何か出すのかと思ったら、お前、素手で戦うのか?やっと楽しめると思ったのによぉ?」


「祐樹さん・・・死にたいんですか・・・。」



「別にふざけてなんかない。」

俺には自信があった。何たって俺は、あっちの世界でこの小さな武器を使うことに関しては最も長けてるからな。


「はっ・・・ふざけやがって・・・。」


シャミューシャはローブから武器紙を取り出そうとする。



・・・ヒュン!!!



次の瞬間、手に取ったはずの武器紙は消える。


「え・・・?」

シャミューシャは驚いた顔で自分の手を見る。


「お前が・・・やったのか・・・?」


「何がだ?」


ヒュンッ!!!パリンッ!!!



次は水晶玉を壊した。


シャミューシャは急に軽くなった手を再び見つめた。


「すごい・・・。」


シトリアの声が聞こえる。・・・すごい?このくらい当然だろ?


次は・・・


ヒュンッ!!


「な・・」ヒュン!!!「ちょ・・・」ヒュン!!ヒュン!!!!

「ま・・」ヒュン!!!!ヒュン!ヒュン!!ヒュン!!



「・・・痛いか?」


シャミューシャは涙目だった。立場が今、明らかに逆転した。


「お前・・・その玩具で攻撃かよ・・・。」


「玩具?玩具にやられてるお前は何だ?」


「うるせえ・・・玩具使うようなガキになんで俺が負けなきゃいけねえんだよ!!!!」


シャミューシャが突っ込んできた。

は・・・バカめ。


俺はとどめの一発を込め、シャミューシャに向けて放った。


ヒュン!!!


その一発は、ちょうどシャミューシャの耳元に当たり、爆音を放った。

シャミューシャは一瞬で意識を失い、その場に倒れた。


シトリアが俺のほうに走ってきて言う。

「ゆ・・・祐樹さん?!!すごい!!すごいです!!!私、何があったのかまったく分かりませんでしたよ?!

さっきまでの祐樹さんはどこに行ったんですか?!何を使ったんですか?!」



「ん?あぁ、・・・コレ。」



「・・・え?・・・コレですか?冗談でしょ?」


「いやいや、じゃあ、見てみろ。」


ヒュンッ!!


俺はできるだけゆっくりとした動作で、シャミューシャに向けて金属玉を放って見せた。


「嘘・・・パチンコで倒したんですか・・・?信じられない・・・。」


「まぁ・・・倒せばいいんだろ?倒せば。」


俺が落ち着いた口調で言うと、シトリアは一度プッと吹き出して言った。

「・・・あは・・・あははは!!!!すごいです!!勇者っぽくないですけどいいですよそれ!!!

あは・・・は・・・でも・・・かっこよかった・・・ふふ・・・ですよ・・・?」


いや、そんな笑いを堪えながら言われても。



「・・・。」


俺はシトリアを置いて町役場を出ることにした。


「ちょっと、祐樹さん!!!冗談ですって!!!かっこよかったです!!!!」

シトリアがバカにする笑いではなく、笑顔で言った。




「でも・・・・・・剣術できるようになりたいな・・・。」



勝ったことには勝ったのだが、何となく俺はすっきりしなかった。

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