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第6話:強さの張りぼて

F1並みのスピードで走り続ける車の中、


「武器紙って、こういう風に武器以外のものも作れるのか?」


「え?コレ、武器ですよ?」


と、リータは答える。

「いや、どこが?」


するとシトリアは前の座席にある小さなボタンを押す。


ヒュンヒュンヒュンヒュンヒューーーン・・・・・


あからさまにチャージ音が聞こえるのですが。


ドーーーーーン!!!!

普通ならライトが出ているはずのところから熱光線が発射され、前方にあった岩に直撃。次の瞬間岩はなくなっていた。


「ほらね♪」

そういってシトリアは笑った。


・・・いや、武器っていうか・・・兵器?


「さて、もうすぐ着きますよ!」


気付けば森の中に入っていた。奥には大きな建物が見える。


「おい、そろそろ止まったほうがいいんじゃないか?

見張りとか、いるもんだろ。」


RPGでは大抵いるしね。


するとリータは俺のほうを向いて満面の笑みで言った。


「止め方・・・わかんない。」


「えぇえええ!?!!何で?!」


「いや、さっきから探してるんだけどブレーキが無くて・・・。」


「あ、あぁ、コレ・・・そういえば・・・特攻・・・・。」


シトリアがボソリと言った。


特攻ってどういうことだ?

あの、敵艦に突撃とかか。あぁ〜、なるほど・・・。

車の速さは、体感的には200キロ近くある。


コレでブレーキなしって・・・死にに行くようなものじゃないか?


みるみるうちに建物は近づく、当然の如く見張りの邪族が何匹か気付いて突進してきた。


ドガッ!!


・・・。邪族を思いっきり跳ね飛ばした。


「・・・こうなったら全員道連れです。」


リータが落ち着いた口調で言う。

道連れから俺を除いて欲しいんだが。



ドガッバキッ!!ドンッ!!キィィィ!!!ドンドカ!!!!!バンッ!!!!


車は邪族の黒っぽい血でまみれていた。

気持ち悪い・・・。


しかし、心なしか・・・と言うより、スピードが相当下がった気がする。


これはそろそ「あぁああああ!!!!!」ドガン!!!!プシュー・・・・・・。


リータとシトリアの叫びと共に車は建物に激突し、停止した。

車は思ったより全然頑丈だったようだ。


「・・・計算通りね。」

リータが言う。いや、嘘つくな。


「さて、行きましょうか。」

落ち着いた口調を言ったシトリアの顔は、冷や汗でぐっしょりと濡れていた。


運よく見張りをすべて片付けることができていたので、すんなりと建物に入ることができた。


「・・・ようやく来ましたか。やはり私の占いは百発百中のようだ・・・。」

入ってすぐの広いホールの奥から男の声。


「お、お前は!!」


リータとシトリアが叫ぶ。


・・・俺は何だかまた置いていかれる気がした。



コツ、コツ、と靴音を立てながら近づいてきた男は、

黒いローブを着ていて、光る水晶玉を持っていた。


「こいつは誰だ?」


シトリアに聞く。


「彼は、『クラシュ』の幹部、クレパ街支部長の・・・・・・ジョン?でしたっけ?」


「違いますよ、姫。バケットです。」



「どっちも違う!!!」


すかさず黒ローブの男は突っ込みを入れた。本当に悪い奴か?


「俺の名は、占術のシャミューシャ。まったく・・・何度もクレパを攻めてやっているというのに、俺の名が分からんのか?

まったく余裕だな!シトリア姫さんよぉ!」


「何?!なら・・・低級エクサーでクレパを5度も守りきれているのは貴方の不的確な指示のお陰だったのですか?!

部下からよくお話は聞いております。」


「あん?!なめてんのか?!言っとくけど今日の俺は違うぜ?

何たってコレがあるんだからよぉ!!」



段々と口が悪くなってきたシャミューシャは、ローブの中から武器紙を取り出した。


するとシトリアは小声で話しかけてきた。


「・・・祐樹さん・・・まずいです・・・。

武器紙で作った武器は、邪族には効力が絶大ですが、生身の人間・・・と言うよりエクサーである幹部には、

その武器自体の強さと武器を使う戦士の強さのみが必要になってしまうのです・・・!」


と言うことは、さっき邪族を簡単に倒せたのは武器のお陰、

普通に、幹部ってことは・・・中ボス。俺なんかがいきなり勝てるわけないんじゃないか?


「祐樹さん・・・コレを・・・。」


そういってシトリアは武器紙を俺に渡した。

この、俺依存の方針は絶対に間違っている。


今度は・・・もっと強く・・・もう、ラスボス前の剣みたいなものを・・・!!!

ここはもう美術部の意地だ。こんなところで意地を出してどうするのかも分からないが。



描き終えた俺は、その剣の立体的な姿を想像した。


紙は光を放ち、大きな剣の形へと姿を変えた。

俺の覚えてる限りで、最も強い剣。その名も、聖剣エクスカリバー。

それは神々しい光を放ち、手に取るだけで勇気が出てきた。


「・・・え?」

シャミューシャが驚いた顔でこちらを見る。

シャミューシャが武器紙を使って作り出した武器は、・・・俺の最初に描いた剣だった。


これと同じセンスだったことに異常に虫唾が走る。

読めたぞ・・・こいつは、アレだな?中ボスでも最低ランク・・・途中に出てきたモンスターのほうが強かったりするアレか?


「死ねぇええ〜!!!シャミューシャぁああ!!!!!」


俺は少なからず調子に乗った。


ガキィン!!!!


「・・・何それ?」


シャミューシャは非常に弱そうな剣で俺の一撃を受け止めた。


俺は忘れていた。まだRPGで言うスライムしか倒していないことを。

俺は忘れていた。俺はあくまで美術部で・・・体力も何も持っていないことを。

俺は忘れていた。コレがゲームではなく、命を賭けたやり取りだと言うことを――――――――――


ドカッ!!!



次の瞬間、俺は意識を失っていた。

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