第4話:絵の世界・現実の世界
美術館を後にした俺は、やっぱり特に外ですることも無いので、家に帰った。
とりあえず、さっき撮った携帯の写真を印刷しておこうか。
俺の携帯は32MBのMSDしか入っていない分、少しの容量も無駄にはしたくないからだ。
いや、もっと容量が大きいものが欲しいのだが、
電器屋に行ってもいつの間にか違うものに気をとられ、いつの間にか違うものを買って帰って来てしまう。
ノートに字を書き間違えた時に、消しゴムで消したあとに
また同じ間違えた字を書いてしまうアレと同じだ。
携帯を手に取り、
専用の印刷機に画像を転送っと・・・。
ピピッ!ウィーン・・・
ガッシャン・・ガッシャン・・・・
バカでかい音と共にA4サイズの専用紙に空が描かれていく。
ウィーン・・シュー・・・
お、できた・・・?!
黒点がさっきとは比べ物にならないほど大きくなっている。
さすがに見間違いのレベルではない。
「ふわあーーーーーー!!!!」
声が聞こえる。どこから?
部屋には俺一人。
じゃあ誰が声を?
声は・・・写真から聞こえる。
黒点がどんどん大きく・・・
声もどんどん大きく聞こえてくる。
黒点が人の形に見えて来た・・・
何だ?何が起きている?俺は疲れているのか?
見て取れるほどまで近づいてきている。少女の姿だ。
それはまるで俺に向かって落ちてきているかのようだ。
「あぁああーーー!!!!あふん!!」
うわ!!写真に衝撃が加わる。
もう絵には少女しか描かれていない。
写真の中の少女がこちらに気付く。
・・・夢を見ているのか?写真が動き出すなんて・・・
少女が手を伸ばしてきた。
その手は絵を抜け出し俺の顔に・・・。
手は俺の顔を抓る。
「夢なんかじゃないですよ?」
話しかけてきた。
頭が痛くなってきた・・・。
「まったく・・・いつになったら気付いてくれるのかずっと待っていたのですよ!」
その声は夢の少女とまったく同じ。
「・・・お前は・・・何だ?」
「何だって・・・言っておきましたよね?あなたの夢で。」
夢?
「ってことは何か?お前は夢に出てたそれか?」
「それです。」
「そうか・・・すまん。俺、少し病院行ってくる。」
「だから夢とかじゃないんですってば!」
少女が怒って言う。
「と、とにかく大変なんです!すぐに来てください!」
「どこに?」
「こっちの世界にです!」
「こっちって・・・どっちだよ。」
「こっちです。」
そういって少女は俺の腕を掴み、写真のほうに引っ張る。俺の腕は写真にぶつかることなく、絵に引き込まれた。
「え?」
少女は俺の腕をグイグイ引っ張る。もちろん俺の体はA4サイズの写真には入りきらない。
「痛い痛い!!無理!」
「あ・・・この入り口では小さいですね。
コレの大きな・・・元の絵はどこですか?」
「元の絵は、クルミシア美術館に・・・」
「じゃあ、そこに向かってください!全力ダッシュでお願いしますよ!こうしてる間にもこっちは大変の大変なのです!」
「え、そんなこと言われても」
「早く!!!!」
少女が鬼気迫る顔で言う。
「はいっ!」
勢いで返事をしてしまった。
俺は仕方なく出かける準備をし、再び美術館に向かった。
「700円になります。」
え、マジで払うのか。これでさっきのが夢だったってなったら俺はとんでもないアホだな。
「早く払ってください!」
少女の声、何だ話せるのかよ。
今の異常な状況に少し順応し始めてしまっている自分が少し嫌になった。
中に入り、空の絵の前に行く。
「さ、突っ込んで行ってください。」
えぇ〜、コレで普通に絵にぶつかって破ったりしたら警察・・・と言うか病院送りじゃないか?
「早く!!」
少女は威圧的なトーンで言う。
分かったよ。分かってるよ行けばいいんだろ?
俺は目一杯助走をして、文化部なりの本気のダッシュで絵に向かって突っ込んだ。
「いっけぇーーー!!!!」
絵にぶつかる!!と思いきや、本当に俺は絵をすり抜けた。
そして俺は草むらに直撃した。
「いって〜・・・・・・・。ノバフッ!!!」
少女がのしかかってきた。
少女は俺の顔にズイッと近づき言う。
「やっと会えましたね!!!勇者様!!」
勇者・・・と言うとアレか、魔王を倒したりするアレか?
「俺が?」
少女はコクコクと頷く。
「勇者?」
少女は再び頷く。
「俺が勇者?!!!!」
「はい!」
少女は笑顔で言う。
「いやいや、それは無いだろ?!せいぜい俺はアレだぞ?村人1だろ?!」
「何ですかそれ?私とコンタクトを取れる唯一のあっちの世界の住人なのですよ?祐樹さんは。」
あっち・・・ってのはさっきまで俺がいたところの話か。
「コホン・・・そういえば自己紹介遅れました。
私は、ヴェルイス国の姫、シトリアと申します。
今回勇者様にご連絡させていただいたのも、こちら側に来るように手はずを整えたのもすべて私です。」
「姫?お前が?」
「はい!」
「姫ってのは、もっと煌びやかな・・・こう・・・」
シトリアは実際姫と言うより町娘と言った感じだった。まぁ、RPGとかのイメージだが。
バシッ!シトリアが俺の頬を軽く叩く。禁句だったのか。
「ってか、すまない、そろそろ降りてくれないか?」
正直ちょっと重い。
「あぁ、すみません!あまりに嬉しかったもので!」
ドーーーーン!!!
辺りに轟音が響く。
「はっ、こんなことしている場合ではないのでした。
今の状況を説明しますね!」
そういってシトリアは説明を始めた。