第3話:運命と不思議な絵
一通り授業も終え、
週1しか活動がない美術部所属の俺は学校からの帰り道だった。
「・・・?」
道に紙が落ちている。
クルミシア美術館、の入館証・・・?
クルミシア美術館は・・・確か先月この近くできたんだったな。
美術部として、一応そういう情報は耳に入ってくる。
家に帰ってもやることがあるわけではない。
これはラッキーと捕らえて行ってみるか。
俺の住んでいるところは、然程都会と呼べる所ではない。
故に、そのクルミシア美術館は非常に目立つ建物であった。
その場だけヨーロッパにいるような古き良きな空気を感じさせる。
外見はわざと古めかしくしてあるが、中は普通に近代的。
入館証は、専用のリーダに通すことでドアを開くことができる。
置いてある作品も近くにあるボタンを押すことで自動的に
作品の説明をしたりで、よくある美術館と然程変わらない。
一通り見て回ると、一際異彩を放っている絵があった。
周りの綺麗な彫刻とも、細かく描かれた風景画とも違う。
ただ大雑把に空を大きなキャンバスに描いた絵。
それも、空を白で描き、雲を青で描くと言う奇抜さ。
こういうものを主とした個展に置くならばまだしも、
普通に美術館に置くには余りにも粗雑で、余りにも奇抜だった。
奇抜だからこそなのか、その大きな絵には引き込まれるような印象を受けた。
よく見ると大きな絵のど真ん中に、小さな黒点が見える。
その黒点に何の意味があるのか、俺にはわからなかった。
そうだ、この絵の説明を聞けばよいのだと、
ボタンを押す。
「この絵は描かれた年代、作者共に不明。
題名として『世界のすべて』と呼ばれています。
題名をつけたのは作者と考えられているが、実際のところは分かっていない。」
・・・絵に関する説明が全くない。
そうだ、この絵を写真に撮っておこう。と、俺は携帯を取り出した。
ここは特にカメラ撮影は禁止になっていなかったはず。
カシャッ!
撮った写真を一度見る。
・・・気のせい・・・だろうが、黒点が少し大きくなっている気がする。
いや、ほんの少し、恐らく気のせいなのだろうが。
「・・と・・た・・・。」
「え?」
どこからか、非常に小さく少女の声が聞こえた気がした。
周りを見渡すが、誰もいない。・・・気のせいか・・・?
その後俺は再び彼方此方見て周り、
美術館を後にした。