第25話:もう一つのプロローグ
真っ暗な部屋の中。
黒いフードを被った男は蝋燭に火を灯し、汚れた木のテーブルの上に地図を広げる。
「ねぇ・・・何でこんなことするの?」
女の声。
男は一瞬振り向いたが、またすぐ地図を見ながら言った。
「君には分からないと思うよ。咲。
でも、これはやらなければいけないんだ。どうしても。」
「ホントに・・・全然分からない。何で私がこんな目に遭わなきゃいけないの?!
ここどこなの?!何をしてるの?!何を考えてるの?!」
咲はガチャガチャと音を立てながら泣き叫んだ。
咲の腕は壁に鎖でつながれている。
咲は静かに泣きながら言った。
「何でこんなことになっちゃったの・・・?浩太君・・・。」
「・・・分からない。けれどこれはずっと前から決まっていたんだ。
運命ってやつ・・・かな。」
そういって浩太は、はは・・・と笑った。
「でも、もう少しで終わらせることができる・・・この、最後の『失敗作』を。」
そういうと浩太は地図に四ヶ所画鋲を刺した。
「これで・・・よし・・・と。」
「何を・・・しようとしてるの?」
「君はただ黙って僕の傍に居ればいい。君は邪魔な虫を払ってくれるだけでいいんだ。」
「・・・・・・。」
咲は黙り込んだ。
すると、ガチャっと音を立て誰かが入ってきた。
「世界の主様。どうやら奴等が動き出したようです。」
「いよいよ・・・か。まぁ、いいよ。もう遅い。準備は9割がた整ってる。」
「どういたしますか?」
浩太はそうだなぁ・・・と言って少し考えると言った。
「クラシュの幹部を何人か・・・送っておいてくれ。勿論殺したって構わない。この世界の人間には価値なんてないんだから。」
「しかし・・・あの、祐樹とか言う人間は?あれはこちらの世界の人間ではないでしょう。」
祐樹という名を聞いて咲が叫んだ。
「祐樹?!祐樹がいるの?!」
浩太は咲に向かって言った。
「あぁ、来ているよ。だから君を連れてきたんだ。」
そして次は入ってきた男に向かって言った。
「・・・愚問・・・だな。僕がこの世界に足を踏み入れた人間に情を移すとでも思ったかい?」
「いえ・・・申し訳ありません。他には何かありますか?」
「あぁ、西のコトゥール、南のリズレバーク。それと・・・東のチレブイン。それぞれにありったけの邪兵を待機させておいてくれ。クレパには・・・必要ない。既に手を加えておいたから。」
「了解しました。・・・では、失礼しました。どうか、世界の主様の最後の願い、叶いますように。」
「あぁ、ありがとう。君にも期待しているよ。」
男は深く一礼し、部屋を出て行った。
「さて・・・と。そろそろ始めようか。やっと・・・やっと終わらせられる・・・ふふ・・・はは・・・はははは!!!!」
浩太の笑い声が響く部屋の中、咲はただ一人で泣いた。