第20話:始まりの最初
フランチュールの大暴れも治まった頃、シトリアはすっかりいつも通りに戻っていた。
正直、誰かに恨まれるってのは勿論相当嫌だ。
良いことをするというのに恨まれるなら尚更。
でも、何ていうのかな・・・。ここで逃げるって言ったらシトリアが悲しむような気がした。
さっきは俺は早く出て行きたいと言うべきだ、と言われたけど、きっと本心じゃないって分かったし。
んー・・・シトリアを悲しませちゃいけないってとっさに思ったんだよな。
って、何考えてるんだろ俺は。
考えるほどよく分からなくなっていく頭の中を振り払うように首をブンブンッ!と振った。
ふと窓から外を眺めるリータの姿が見えた。
その顔はとても悲しそうだった。
「リータ?」
俺は話しかけるべきか少し迷ったが、静かに声をかけた。
リータは俺のほうを向き、問いた。
「祐樹さんの手当てって・・・誰がしたんですか?」
「・・・?いや、名前は分からないけど、とりあえず医者なことは確かだな。」
リータは何故か少し驚いたような顔をして、そうですか・・・とまた窓を向きなおした。
「知り合い・・・なのか?」
リータは窓の外を向いたまま答えた。
「以前、共に仕事をしたことがあったんです。彼との時間は、今思うととても楽しいものでした・・・。
・・・でも、救えなかったんです。彼の故郷を。」
言ってる意味は良く分からなかったが、俺は言った。
「・・・今度こそ、救おうな。」
俺の言った言葉に、リータが何を感じたのかは分からない。
けどリータは、小さく頷いた。
「もうすぐリズレバークです。下車の準備をお願いします。」
運転手の声が聞こえる。
そういえば、そういえば過ぎるが・・・
「ヴェイって・・・どこだ?」
シトリアも今思い出したように言った。
「あの本・・・えーっと、ここにありますけど・・・その、大分前から黙りっぱなしなんです。」
俺はシトリアからヴェイを受け取り、開いた。
前、一瞬だけ中身を見たが、そのときは文字がびっしりと書いてあった。
「文字が・・・消えた?」
リータが驚いた顔をして俺の持つ本を覗き込み言った。
「まさか、1-β様に何か・・・?」
ふむ・・・確か二代目がどうだとかってやつの話だな。
「その1-βってやつはどこにいるんだ?」
「リズレバークにいるはずです。リズレバークに何かあったのかもしれません・・・。」
「あー、着きましたよ。」
運転手がそういうと馬車は止まった。
俺達は馬車から降りた。
「ふむ・・・特に街には異常ありませんね。丁度いいです。祐樹さんも一度彼女に会ってみましょうか。」
グギュルルルルル〜!!!・・・・・・
「・・・と、その前に腹ごしらえですね。うん。」
シトリアは頬を赤らめながら言った。
こんばんは、甘味です。
ようやく第二章スタートです。
と、言ってもこの話は何だか新しさが無いので、
実は第一章と第二章の狭間のお話だったりします。
次話でようやく第二章らしく・・・なるはずです。
では、第二章からもよろしくお願いします。