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番外3:学園リータ(3)

先生として働き始めて何週間か経った。

もうこっちの生活にもすっかり慣れ・・・って、アレ?そういえばここに何しに来たんだったっけ?


「リータぁ、腹減ったぞこのやろぉお〜・・・!!」


クロイドが学校の教科書などがぶちまけられた机に突っ伏しながら言う。


「はいはい・・分かったよ・・・。」


「お、っつーか待て、やっぱり料理っつったら裸エプ

ドカッ!!


私が机を蹴ると机はクロイドの鳩尾へとダイレクトヒットした。

このセクハラ病は何週間経っても治らない。ふっ、まぁ私がそれだけ魅力的ってことよね。


クロイドがいつものように「すいませんすいません・・・普通に作ってくださいお願いします・・・」と、

腹を抑えながら頼んできたので、私は仕方なく作ることにした。



トントントントンッ♪


こちらの食材の扱いにも慣れてきた。

どれも美味しいし栄養もある。特にチョコレートとか言うお菓子を作った人は天才としか思えない。もうすっかりとりこだ。

最近お腹周りに少し不安を感じてきている。あっ、少しね?少し・・・。


ジュージュー!


学校での様子は・・・そうねぇ、祐樹君と、浩太と、咲さんとは良く話すわ。

一番のお気に入りは祐樹君ね。生徒と先生の危険な恋・・・悪くないわ。

別にこっちの世界の昼ドラとか言うものに感化されたわけではありませんよ?



・・・はい、できた。


「クロイドー?できたよ?」


「ダメだ。そんなんじゃ俺は立ち上がれねぇ〜・・・。ご飯ができたかどうか新婚さん的に教えてくれ。」


「ご飯、出来上がりましたよ、あなた♪・・・って何言わせるんだアホッ!

あー、もういいから運ぶの手伝って!」

「えー?顔を近づけて上目使いでおねだりしてくれれば

何かを言いかけたクロイドに、私は包丁を握りなおし、もう一度聞いてみた。

「普通に手伝う・・・・・・よな?」

「喜んでっ!」


何でコイツは何かマニアックな注文をするんだ・・・。

ってか、何?レパートリー無限なんですか?


「って、おぉ〜!!凄いなリータ!相変わらず物凄いできだ!これだったらいつでも俺の嫁に迎えてや


キッチンの小さなテーブルに置かれた料理を見て、そう言いかけたクロイドのわき腹をギュっ!と抓り、黙って運べと笑顔で言った。

褒められるのは嬉しいはずだけど、何だろう、クロイドに褒められると何かむず痒いのよね。

何だろうこの感じは・・・・・・不快感かしら。


「いただきます!!!」


そう手を合わせて言うと、クロイドはガツガツと食べ始めた。

・・・まぁ、こうやって食べてもらえるなら作り甲斐がある・・・かもね。


「美味しいよ。リータ。」


ふと箸を止め、クロイドが真顔で私に言った。


「だっ・・・え・・・・・・そう・・・・・。」


わー・・・何で私ドキドキしてるんだー・・・。

何だこのドキドキはー・・・


一人でモジモジし始めた私をクロイドが不思議そうな顔で見たので、私はごまかすように箸を手に取り、食べ始めた。


む・・我ながら美味しい・・・



「ふー、食った食った・・・。ごちそうさまー・・・。」



プルルルルルッ!!!!


電話の音だ。え、何で?


「はい、・・・もしもし。」


「あ、リータ?突然だけど帰って来てくれない?」


「・・・姫?」


あっ!しまった!救世主を探しにきたんだった!!!


「え、あ、すいません!まだ救世主は・・・」


「いや、それはもういいわ。どうせ無理だと思ってたから。こっちでどうにかコンタクト取ってみるわ。

・・・と、こんなことは今はどうでもいいの。邪族が急に各地で暴れだして、人不足なの。だから急いで帰って来て。」


・・・?よく分からないけど非常事態なことは伝わってきた。


「・・・で、どうやって帰ったらいいんですか?」


「・・・ノリ?」


「えぇ?!!?帰る方法無しですか?!」


「冗談よ。クロイドに伝えておいたから。そこから来て。」


・・・ホントに非常事態なのかな・・・。



私は電話を切った。


「で、クロイド、どうやって帰ればいいの?」


「んー・・・っとだな・・・・・・」



帰る方法は意外にも家の中にあった。

何故かお風呂が元の世界と繋がっていたようだ。いや、何かの拍子に帰っちゃったらどうするつもりだったの?


「あ、おかえり。リータ。」

繋がった先でシトリア姫が出迎えた。



・・・何か異世界を旅してきたって感じが0なんだけど・・・。



「リータ、クロイド。早速だけどグォズィに向かってくれる?物凄く速い馬車は用意しておいた。どうにか・・・頑張って。」


「リータ!!早く行くぞ!!」

クロイドが張り切って・・・と言うより焦って私の手を引っ張り、馬車の元へと走っていった。



私達は馬車へ乗り込み、グォズィへ向かった。

クロイドは焦る気持ちを抑えようとしているのか馬車の中で膝を震わせていた。


「・・・どうしたの?」

私はクロイドに尋ねた。


「グォズィは・・・俺の故郷なんだよ。」

「えっ・・・」


なるほど、だからこんなに焦ってるんだ・・・。


「・・・着きましたよ。」

運転手が言った。


って、本当に速いっ!・・・いや、それに越したことはないのだろうけど。


私とクロイドは馬車を降りた。そして、それと同時に私達は言葉を失った。

私達の見る先は、怪我をした人や、ボロボロになった家屋があった。


ふと街の誰かが私達を見つけ、声をあげた。

その声と同時に私達に向けられたのは、嫌悪の目だった。


「今更来て・・・何を・・・」「エクサー至上主義が・・・・」

「只の人間は・・・死ねと言ってる・・・」「あれこそ・・・・・悪魔・・・」「エクサーを・・・・許すな・・・」


人々がそう口々に言った。


今まで黙っていたクロイドが口を開いた。

「リータ。・・・楽しかった。けど、お別れだ。お前がここに居ちゃいけない。」


「え、クロイドは・・・」


「俺はエクサーじゃない、医者だ。この街に必要なんだ。リータ。お前には今できることは何一つない。」



クロイドは突き放すような口調で言った。


「・・・帰れ。」


私は黙って馬車に乗った。そうするしかなかった。



さっきと同じように物凄いスピードで走る馬車がリズレバークに着くまでの時間が、限りなく長いような気がした。

こんばんは、甘味です。

ようやく番外編終了です。

次回から何事もなかったかのように本編に戻ります。


では、これからもどうかよろしくお願いします。

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