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番外3:学園リータ(2)

「先生、おはようございます。」


・・・・・・・・・、あ、先生って私のことか。


「あ、あぁ?!おはよう、えーっと、・・・。」

名前を思い出せなくて困っているとその男子生徒は私をジーッと見て、わざわざ名乗ってくれた。


「赴任したばかりだから仕方ないですよね。僕は祐樹って言います。」


むぅっ!コイツめッ!さりげないフォローが染みるぜッ!

とか何とか考えてみたり。

・・・でも、こんな生徒ばっかりならうまくやっていけるような気がする。


・・・って、ハッ!!しまった!私は人探しが目的だったっ!・・・この調子で大丈夫なのかな・・・・・。


「先生?」

祐樹君が不思議そうな顔で私を見る。


「あっ、あぁ、祐樹君!さ、教室行きましょう!」


はい、と頷く祐樹君と共に私は担当する教室へと向かった。




「はい、初めまして皆さん。私は梨射多リータと言います。先日既に話があったかもしれませんが、

本日から、えーっと、まぁ幾らか勤めます。特に文学の授業を担当します。」


男子生徒たちがフゥ〜!!!と唸る。

ふっ。私の美貌を持ってすれば、当然の反応ね。

よく見れば盛り上がっているのは端にいる眼鏡男子集団のみだということは目を瞑っておく。



ところでそういえばさっき祐樹君と会ったときは意識してなかったけど、祐樹君は目の色が黒だったなぁ。


・・・で、何でみんな目が黒いんですか?

右の女子から左の男子までみんな目が黒いんですけど?・・・え、何?誰でもいいの?救世主だらけですか?・・・クロイドのやつ・・・。



「では、今日一日頑張って勉強しましょうね・・・。」


私は早速の幸先の悪さに頭を痛めながら教室を出た。


どうやらこの学校は何校かの学校と隣接・・・と言うより合同で学校事業を行っているらしい。

先生もあっちの学校へ行ったりこっちの学校で授業をしたり・・・大忙しだ。


学校は小等学校だったり中等学校だったり、男子高校もあったり女子高校もあったり・・・全部で5校にも及ぶ。

私は来たばかりだから、と2校分の授業しか割り当てられていない。


・・・で、ものの見事に迷いましたとさ。

どうしよう。授業前だから誰もいない。職員室にも戻れない・・・。


あわわわわ・・・やばい。心なしか動転してわぁあああ・・・・!!!!


「せ、先生。大丈夫ですか?」


私が頭を抱えていると男子生徒が話しかけてきた。


「え、こんな時間に何で?」


「あ、いや!あの、えーっと、ちょっと体調が悪くて・・・。・・・そんなことより、先生こそ授業じゃないんですか?」


「え、いや・・・その・・・迷っちゃった、テヘ♪」


頬に指を当てて可愛さアピーールッ!これで道を教えてくれない男子はいな

「先生なのに分からないんですか?そういうものは事前に知っておくべきですよまったく・・・。」


なッ・・!?私のアピールが効かないっ?!な、何だ、この不届き者はっ!


「君、名前は?」

この不届き者の名前を聞いておこう。


「浩太です。」


浩太は一度ため息をついて廊下の先を指差していった。

「次の授業だったら、ここを真っ直ぐ行って右に曲がって真っ直ぐ行って突き当たりで左に曲がったところの突き当たりの教室です。」


ふっ、何だかんだで教えてくれるのね。


「そう、ありがとう♪」

私は飛び切りの笑顔を浩太に・・・・・・って、いねぇええ・・・・・・。失礼にも程があるでしょ・・・。



えっとー、真っ直ぐ行って・・・・・・・・



あぁ、着いた。ここだ。


そういえば・・・浩太は私の担当のクラスの生徒だったはず。何で違うクラスの私の授業の割り当て知ってるのかしら・・・?

・・・あぁ、そうか。あの子私のファンね。あの、今流行のツンドラだかツンメレとか言うやつね。きっと。うんうん・・・


ドアの前で頷いていると中の生徒がジッと私を見ていた。いけないいけない・・・。



ガララッ!


「どうも、おはようございます。

今日から皆さんの国語の授業を担当する梨射多です。まだ分からないことだらけですが、どうかよろしくお願いします。」


私はそういって生徒達にペコッと一礼した。


生徒達はボーっと私を見る。・・・?


「え、えと、じゃあ、授業始めようかなー・・・。」


よくわからない空気の中、私は授業を始めた。


「じゃあ、教科書の153ページから、えーっと・・・宏詩君。ここ、読んでください。」

私は名簿から一番近くにいた生徒を指した。


「あ、あひ?!」


あひ、って何?


「あ、わえ?おうあ??!ああわあわあ?!!!?」


「・・・大丈夫?」


私が少し顔を生徒に寄せて言うと。その生徒の顔はみるみるうちに赤くなった。


・・・バタ・・・


「え・・・。」


宏詩君は机に大きな音を立てながら伏せ倒れた。


教室がざわめく。


「だ、ちょ、みんな!!ちょっと落ち着いてっ!?あわわわっ!!!」


「先生が一番落ち着こうよ?!」

そういってくれたのは見知らぬ女子。あれ、このクラス、女子居たの?


「え、っと、これ、え、どうすればいい!?」

思わずその女子に聞いてしまった。情けない・・・。


「と、とりあえず保健室っ!!!」

「そっかっ!じゃ、じゃあ誰かっ!!」


ガタガタガタッ!!



・・・・・・みんな行くことないよねぇ・・・。


「あはは、初日から先生災難ですね〜。」

さっきの女子生徒が言う。


・・・?・・・私が不思議そうな顔をしているとその生徒は続けて話した。


「このクラスは女子が私しかいませんし、教科の先生も男の先生ばっかりなんですよ。

だから、先生みたいな綺麗な人が来たからみんなボーっとしちゃって。宏詩君なんかガチガチに緊張しちゃって。」


そういって女子生徒は可愛く笑った。

ほほぅ、この女子おなご見る目があるではないか。


「貴女の名前は?ごめんなさい、まだ覚え切れてないの。」


「あ、私は咲って言います!木城咲です!」


「へぇ、これから色々よろしくね、咲さん♪このクラスで頼れるのは咲さんだけみたいだし・・・」

全員出て行ってしまったときに開けられたドアを見つめながら私は苦々しく笑った。



キーンコーンカーンコーン・・・



「・・・と、鳴りましたね。結局殆ど授業できませんでしたね・・・あはは・・・。」


「さて、じゃあ、咲さんは次の授業の準備しよっか。じゃあ、私は職員室に戻るね。」


咲さんは私に授業頑張ってください♪と手を振ると次の時間の教室へと移動していった。



・・・はっ!しまった!!職員室ってどうやっていけばいいんだろっ?!!!


・・・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・


と、まぁ黙ってたらノリで着くかなーとか思ったけどやっぱり無理な訳で。


私はさっきも見たような廊下をうろうろしていた。



ヒュンッ!!!カランッ・・・



・・・へ?


私の目の前を通った何かは壁にぶつかり大きな音を立てた。

壁に刺さっているのは・・・クナイ?何でこんなところ・・ヒュンヒュンッ!!!


危なっ・・「誰!?」

私は声を張り上げ周りを見渡した。しかし、そこには誰もいなかった。


・・・どうなってるの・・・?



結局私は誰がやったのか知ることもできず、職員室に辿り着くこともできず、何となく家路についていた。

まぁ、今日はもう授業は持ってないはずだから平気なはずだけれど。今頃、学校も終わったに違いない。だいぶ長い時間迷っていたし。


「・・・。」


つい最近聞いたことのある声が後ろからぼそぼそと聞こえた。


「誰?!」私が振り向くとそこにいたのは、見る目がない男代表の浩太だった。


「ちょ、そんな怖い顔しないでくださいよ。先生と一緒に帰ろうかなーって思っただけですから。」


何だ・・・ふっ、もてる女はつらいわね・・・。

私と浩太は一緒に歩き出した。


浩太が歩き出して少し経つと話し出した。


「そういえば、梨射多先生ってどこから来たんですか?」


「えっと、まぁ、遠いところからかな。」

としか答えられない。この世界の地理は分からないし。


「遠いところって?」

浩太がまたたずねる。

「遠いところは・・・遠いところよ。」


「・・・・・・。」

浩太がボソボソと何か単語を口にした。


「え?」

「いえ、何でも無いです。まぁ、誰にでも事情はありますよね。」

そういって浩太は軽く笑って見せた。



「誰にでも・・・ね。」


浩太は再び繰り返して言うと、何か違うところにいるかのように空を仰いだ。


何だか不思議な子・・・そう思って私は何かを聞こうとしたとき、浩太はいつの間にかどこかへいなくなっていた。


こんばんは、甘味です。

少々長くなってしまったので、学園リータ編はもう少し続きます。

次回は本編に関わる結構大切な話になります。


では、これからもよろしくお願いします。

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