番外2:リータの道(2)
「えー、本日は大変良い天気に恵まれ、
まさに何といいますか、試験日和とでもいいましょうかね。
もう、とにかく今日は皆様の頑張り日和といいますか。あ、私は騎士団長のリータと言うのですがね。
騎士団長って言うのは、まぁ・・・・・・・」
・・・話長い・・・。
今日は入団試験。何故式を執り行っているのか分からないんですが、とにかくこいつは何なんですか?先程からにこやかな顔で話し続けている。
いや、これが講評とかなら分かります。いや、百歩譲ればそれは分かります。
「と、言う感じの仕事をしているわけなのです。
まぁ、とにかく私が一番偉いということだけ分かっていただければそれでいいかなーなんて。
とにかく今日は良い天気に恵まれましてね、まさに試験日和といいますか・・・」
それさっきも言ったよ!
先程から日差しを浴びながらも立って話を聞かされている入団志願者たちももうフラフラ、私もフラフラだ。たぶん30分は余裕で過ぎた。
「・・・と、まぁこんな仕事をしているわけで。ふぅ、で、まぁ私が騎士団長になったのは今から3日前のお話になりますね。
あのときは私も若かった。上司にも逆らいたい盛りでね、もう騎士なんてやめてやろうかと何度思ったか・・・ふぅ・・・」
3日前?3日でこんなに老けたんですか?
心なしか騎士団長もハァハァ言っている。そんなに苦しいなら喋らなくて良いのに!もう1時間近く経ったころ。
「おら、てめぇ、いい加減にしろやぁ!!こっちは試験受けにきたんだっつーの!!」
誰かが一人そういったと思ったら、それに乗じて周りの入団志願者が騒ぎ出す。
あぁ、大変だ。止まらない。
正直私もそれに加わろうかと思ったが、騎士団長の顔を見た瞬間にそんな気は一瞬で消えうせた。
騒ぐ入団志願者にその顔は見えていない。その・・・鬼よりも怖いだろうその顔に。
私の隣にいた子とふと目が合った。
彼女も半泣き状態。私も半泣き状態だ。
ジャキンッ!!
騎士団長が剣を抜いた。・・・あ、マズイ。私はこんなとき動物的本能が働くんだなぁと、ふと思った。
私はその騎士団長の様子を見て、恐れからペタリと座り込んでしまった女の手をとっさに取り、
避難した。一応・・・いや、死活問題だった。
ヒュンッ!!!
騎士団長の剣が一閃を放った。
「・・・え?」
先程まで騒いでいた入団志願者が静まる。
特に何も起きて・・・
ズドドドドドドドドドドッ!!!!!!!
騎士団長の足元から地面が崩れていく。そのままポカンと立ち止まってしまっている入団志願者まで崩れていき・・・。
ズズズズズズズズズズ・・・・・・。
・・・先程までいた入団志願者はおよそ50分の1となった。って言うか6人しかいない。
騎士団長は入団志願者が地面に落ちていった穴を見てニッコリとした顔を取り戻すと言った。
「今年は6人ですか!いやぁ、予想通り残りませんでしたか!」
・・・へ?
「入団試験終了です。良かったですねぇ、皆さん。」
・・・・・・これは後から知った話。
これは毎年行われている試験方法で、騎士たるもの耐え忍ぶ力を持て。だとかそういうものらしい。
大抵誰かが騒ぎ出すか、貧血でぶっ倒れるかで殆どいなくなるらしい。
さて、これで私は晴れて騎士団に入団できた。・・・達成感が0なのは言うまでもない。
・・・それにしても騎士団長は素直に凄いと思った。
地面が崩れるほどの技って・・・と、思っていたが。地面が崩れたのも元々仕掛けがしてあったからだとか。・・・ダメだわ。
まぁ、とにかく騎士になれた、何も言うまい。
「あ、あの!!」
そういえば私が助けた女が私の目の前にいた。
「あの、ありがとう!!えと、名前・・・」
「リータ。」
・・・え?
「あぁ、リータさん!本当にありがとう!私、騎士になるのが子供の頃から夢だったの!!」
「え、いやいやいや、私何も喋って・・・」
「謙遜しちゃダメよ。リータ。」
私の後ろで勝手に声を出していたのは・・・昨日の少女。
「え、あ、何でここにリータ?」
色々疑問が出てきて色々混ざった。
「何よ。あなたは騎士団長ながらも、あえて入団試験に入り込み有望な若者を選び、助け出したんじゃない。」
少女が言った。
「そうなの!?リータさん!貴女、騎士団長なのですか!」
「そう、貴女も誇りに思うことね。リータに選ばれたことを。」
「はい!本当にありがとう!リータさん!では、失礼しました!」
女は私と少女に一礼し、走っていった。
「・・・って、どう何がどうしてどうなったの?!」
また色々混ざった。すると少女はふぅとため息をつき、話し出した。
「あの、入団試験のあとに騎士団長が倒れたのよ。歳の割りに頑張りすぎたみたいで。
騎士団長は私が選んでるから、就任させて3日でぶっ倒れるような人を選んだー、なんてなったら私の人選にミスがあったってことになるじゃない?
困るじゃない?で、ま、昨日貴女が良かったのよ、本当に、その、丁度良かったの。」
「・・・それ、誰でもいいんじゃないの?」
「えぇ♪」
少女はニッコリと笑っていった。
「でも、こんなチャンス滅多に無いわよ?」
むー・・・そりゃそうだ。
「はい、じゃあ、決まりと言うことで。」
「え、何も言ってな・・・」
「じゃあ、明日から早速仕事だから。あ、そういえばまだ名前を言ってなかったわね。私の名前はシトリア。この国の第三王女よ。」
第三王女って言ったら・・・あの、相当偉いあれ?
「私の名前は・・・「貴女は今日からリータ。今日は就任式があるから参加してね。」
・・・何かもの凄く押し込まれた感が・・・。
でも、まぁ今度からあの長い名前を名乗らなくて済むことを考えると、親には悪いけど少し気が晴れたり・・・。
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――――――
午後5時。
私は何もかも初めて見るものだらけの宮殿へと就任式にやってきていた。
カタ・・・
就任式まで時間がある。暇だった私はせっかくだし彼方此方みて回りたいなと、無駄に広い廊下を歩いていた。そんな時、その音は聞こえた。
何だろう?どこから聞こえてるんだ?
どこから・・・。分かった。あからさまに盛上がっている壁。と、布。・・・隠れているつもりなのだろうか。
「何をやってるんですか?」
「何?!見つかっただと?!」
・・・。布をバッと投げるとそこにいたのは若い男だった。
「・・・誰だお前。」
いや、貴方が誰ですか逆に。
「いや、今明らかに怪しいのは貴方なので、貴方から名乗ってください。」
「俺か?俺はな・・・この宮殿で国王を暗殺しに・・・ハッ!」
男はとっさに口を押さえた。え、マジ?
「本当なら、見過ごすわけには行きませんね。騎士団長として!」
もうすっかり騎士団長気分。というより、言ってみたかった。
「違うっ!口が滑っただけだ!」
「いや、せめて否定しなよ?!」
「あ・・・・・・。」
バカなのか?いや、バカだろう。これは。
「・・・まぁ、いい。どうせここで死ぬんだからな。お前は。」
「・・・へっ?」
ガキィィインッ!!!!
男はいきなり剣を振った。私がとっさに回避するとその剣は地面にぶつかり大きな音を立てた。当たったらひとたまりも無かっただろう。
仕方ない・・・
私は剣を抜いた。
「私の名前はリータ!貴殿の名を名乗れ!」
騎士はこんな風に戦うような気がする。映画で見た。
「あん?・・・あぁ、俺、騎士じゃねぇからわかんないわ。」
キィンッ!!
私は剣でガードした。今度は・・・こっち、からっ!!
ガインッ!!
・・・へ?私は男の腕を切った。・・・はず。男は普通の服を着ている。なのに剣が通らない。何故?
「ほぉ、威力抜群だな。これ。」
「な、何をしたんですか?!」
「おいおい、それで武器紙を使ったなんていえるわけ無いだろ?」
「思いっきり言ってますが?!」
「はっ!しまった!!」
武器紙・・・?聞いた事がない。
もう一度っ!
ザシュッ!!
今度は普通に男の腕に私の剣がかすった。
「って、えぇ?!これ、一回しか効果出ないのか?!!」
「・・・へぇ、そうなんだ・・・。」
「ちょ、ちょっと待て!!!」
そういって男は胸ポケットから紙を取り出した。
「何、それ?」
私は分かりながらもあえて聞いてみた。
「あん?武器紙・・ハッ!」
それ言われて描かせるバカいないよねぇ?
私は剣を振りかぶり死なない程度の一撃を・・・
「はい、残念でしたー。」
誰かの声が聞こえたかと思うと目の前がボッと赤くなり、私が今倒そうとした男は一瞬で灰となって消えた。
「へ?」
「惜しかったな残念ー!でもま、コイツはバカだから勝てないとおかしい、か。」
何処から聞こえているのか分からないその声。
「誰だ?!」
「さぁ?俺もわかんねぇな。」
そういうと、私はこの場から何かが消失したことを感じ。男の声は聞こえなくなった。
・・・何だったんだろう?
ってか、そういえば・・・時間?!マズイ!!私は走って会場に・・・
バンッ!!
「遅れてすいませんっ!!!」
既にいた結構沢山の人。偉そうな人だったり、恐らく騎士団の一員の人だったり。
中にいた人たちは一度驚いた顔をして、クスクスと笑い出した。
え?何?何で笑ってるの?
私は一番近くにいた男性を見る。その男性は頬を赤らめ目をそらした。
・・・私は自分を見る。
「あぁああああああー!?!?!?!!!!?!?!?!??」
・・・な、なんじゃこ・・・の声も出せない。
も、燃えてる・・・。いや、何といいますか。これは、はい。さっきのあれですか。何で気付かなかったんだ私は・・・
上着が、ね、もう、無い?みたいな。いや、あるけど。タンクトップ未満、水着以上な着衣度と言うか・・・
「うわあぁあああん!!!!!!」
限りなく薄着になっていた私は奇声を放ったあと、今までで最高の走りで更衣室へと向かった。
こんばんは、甘味です。
12話でヴェイが言っていたリータの恥ずかしい話とはこのことでした。
緊張ではなくリータは頑張って戦っていたということです。
次回からリータ先生編です。
では、これからもよろしくお願いします。