番外1:フランチュールの冒険(2)
俺は、各地で依頼を受けながら旅をすることにした。
人々に認知されていけば、王族家の目に留まり、
姫との結婚を許可されるに違いない。
私は、主に街を荒らす盗賊団や、人々に危害を加える動物の討伐を主に行った。
何故なら一番目につくし感謝されるからだ。
そこは効率よくいこうと思う。
カー・・・カー・・・バサバサバサッ!!
私の目の前に伝達鳥が飛んできた。
伝達鳥とはこの国の主な遠距離の伝達手段。
そのスピードは超高速、とにかく速く飛ぶことのみに特化したフォルム。
所謂、定向進化ってやつだ。
伝達鳥は手紙を運ぶことに使われる。
私の前に現れた伝達鳥にも手紙が付けられていた。
私はその手紙を取り広げる。
―フランチュール殿へ
―どうも初めまして。私はリズレバークのジャベル=ヤ・シピルと申します。
―最近の貴女の活躍の程を聞きつけ、是非やっていただきたい依頼があるため、こうして筆を取らせていただきました。
ほほぅ、俺も結構有名になってきたな。もう、リズレバークから依頼が来るほどになるとはな。
―私は王族家専属の料理人でありまして、10日後にある貴族内での食事会にて、
―王様より『みなの驚くような料理を作れ』とご命令をいただき、
―フランチュール殿にはその材料を集めていただきたいのです。
材料だぁ?
草集めなんてお断りだぞ。俺は農家じゃねぇんだ。
―勿論普通の材料ではございません。
―集めていただきたい材料は・・・
ここで一枚目が余白をたっぷりと残しながら途切れる。
もったいぶる意味がわからねぇよ。
―・風神竜の血
え、あ、ちょっと待て、この時点で結構無理じゃ・・・。
―・鬼山天狗の扇
―・人喰い葡萄
―・鉄人の剣包丁
―・魔神虎の小指の爪
・・・よし、この依頼は流石に無理。
軍隊がいるだろ。これは。
―以下の材料がシピカ湖沿いの塔に保管されています。それを運んでいただきたいのです。
むっ。急激に拍子抜けた。ただの運びの依頼か。
じゃあ俺はあんまり関係ないな。こんな甘い依頼を受けても意味はない。
―報酬として、幾らか金をお渡ししたいと考えておりますが、私の一存では払える額に限度がありますので、
―さらに、食事会への参加を報酬としたいと考えております。
―私の料理を存分に味わっていただきたく思います。
食事会・・・?それって、姫の親である王様がいるんだよな?
今のうちに仲良くなっておいて・・・ふふ・・・
オーケー受けたぁ!!この依頼!!俺が責任を持って届けるぜ!!
と言うことで意外にもシピカ湖の近くにいた俺は、すぐにその塔へと向かった。
「・・・ここか。」
塔に到着。・・・洒落ではない。
塔と言う割にはそこまで高いというわけではなく、3階建ての只の建物と言った感じだった。
俺は早速中に入った。中は結構広い。
「ひっ!誰ですの!?」
どこからか少女の声が聞こえる。上か?
何故いるのかは知らんがここは格好良くいこう。
「私の名はフランチュール!王家専属料理人から依頼を受け、食材を受け取りに来たっ!」
「王家?そうですの?じゃあ・・・」
トットッと音を立てながら少女は階段から降りてきた。
えーっと、え?
少女の体は手足が獣のようだった。
獣・・・とも呼べないか。何と言うか、悪魔のような手足だった。
「はい、フランチュールさんこんにちは。私は『世界の主』様よりこの塔を守るように命じられたキュペルと言いますの。」
と、少女はニコリと笑いかける。
世界の主?何それ?
少女は続けて話した。
「フランチュールさんは此処に用があるということは私の敵さんですの。だから死んでもらうのですの♪」
少女は飛び切りの笑顔で・・・って、え?
「いや、ちょっと待って。全然状況がつかめない。俺は只食材を・・・」
「問答無用ですのー!!」
キュペルはその大きな足で一気に私に向かって走ってきた。
速いっ・・
少女は俺に体当たりを食らわせた。
「ぐっ・・・。」
売られた喧嘩は買う。それが男だ。例え相手が年下であろうともっ!!
俺は親父から譲り受けた銃を構えた。
最初使ったときは気付かなかったが、この銃は超高圧で空気を押し固め、
その空気を打ち出す仕組みになっているようだ。
だから弾は減らない。威力も普通の鉛玉を打ち出す銃にまったく劣らない。
バンッ!!!
俺は少女の足に一発当てる。
「・・・何かやりましたの?」
少女は・・・無傷?
当たったはずだろう?俺が外すなんてこと・・・。
バンッ!!バンッ!!
再び足を狙って二発。少女は動くそぶりを見せていない。当たっている・・・はず。
「無駄ですの♪」
少女はニッコリと笑ってみせた。
「私は半邪ですの♪いくらパンパンその玩具で撃っても一生勝てませんの〜♪」
半邪?何だそれ?
答えてくれるかは知らないけれど一応聞いてみた。
「半邪って何?」
すると少女は腰に手を当てて胸を張りながら言った。
「それは、人間と邪族の能力を半分ずつ受け継いだ新たな種族なのです!ふっふっふ〜♪私は凄い子ですの♪」
・・・邪族・・・聞いた事がある。
そう、それは親父が昔言っていた。
そしてその邪族に通じるのは・・・武器紙か!
私はそういえば持っていた武器紙とペンを取り出す。
さらさらさらりと絵を描く。
「・・・何ですの?それ。」
私の手元に出来上がったのは、・・・うん、これはもうどこからどうみても銃だろう。
「銃だ!!!」
「それって、あの、鉄の塊と言うんじゃありませんの?」
「うるさい黙れっ!」
どこからどうみても銃だというのに・・・。ねぇ。
バンッ!!
「武器紙で作られたものだと分かっていて当たるおバカさんはいませんの〜♪」
おぉ、ちゃんと弾がでた・・・。
って、そこはびっくりするところではないな。どこからどうみても銃なんだから。
少女は余裕に避けた。
バンッ!!バンバンッ!!
「何度やっても無意味ですの〜★」
少女は俺の撃ち出す弾を避けながらも近づいてくる。
まずい、この距離はっ!!
ガキィンッ!!!
銃が・・・。
「自分からやってくるほどだからよっぽど強いのかと思ったけど、全然弱いですの〜♪」
そういって少女はその禍々しい腕を振りかぶる。
やられるっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんてね。
バンッ!!!
「この後に及んでそんな銃で撃つんですの?意味が無いと何度も・・・」
「はい残念でした。自分でわかってないのか?」
俺の打ち出した空気玉は少女の腹を貫いていた。
「半分邪族なのは分かったが。肝心なところが人間じゃ仕方ないよな。」
おぉ、今、俺かっこいいぞ。
・・・さ、最初から気付いてたんだぞ!!
ただ、すぐに終わらせるのもどうかなーって思っただけだ!!
少女はその場で灰になって消えた。
「ふぅ、これで後は持ち帰るだけだな〜。」
俺は階段を上っていった。
・・・・・・・・・
・・・・・
・・
一階の柱の影。
「チッ・・・やっぱり出来損ないじゃあ守りきれなかったか。
まぁ、いい。全てはあの方の思い通りに進んでいる。面白いものも見れたしな。」
カツ・・カツ・・・
男は静かに塔を後にして行った。
「お、重いっ!重すぎるぞコレは!!運ぶだけで筋肉が隆々になりそうだ!」
大きな荷物を持ちながらゆっくりと階段を下りるフランチュールの知らないところで、
確実に何かが動き始めていた。
――――――
と、俺は何とか期限までにリズレバークに到着した。
重いのなんので移動に時間がかかってしまった。
「おぉ!フランチュール殿!お疲れ様です!」
料理人が俺を出迎える。
「てめぇどういうことだこの野郎!!番人がいるなんて聞いてねぇぞ!!」
料理人は不思議そうな顔をして言った。
「変ですねぇ。その塔には警備兵2人しかいないはずですが?」
「警備兵?そんなの何処にも・・・。」
「ま、まぁいいじゃないですか。で、材料のほうは?」
「あぁ、これだ。・・っしょっと。」
俺は重い荷物を料理人の前に置いた。料理人は中身を見る。
「・・・はい、確かに!では、明日、食事会ですので!ご参加ください!場所は・・・」
その後俺は料理人から食事会の場所や今日泊まる宿を聞き、報酬の金を受け取った。
「さて・・・何をするかな。」
そういえば初めてだな。リズレバークに来るのは。
人が多いったらありゃしねぇ。みんな平和ボケした顔してるなぁ。
俺はそんなことを考えながら街を歩いていた。
バサッ!!バサバサバサッ!!!
俺の前に伝達鳥が現れた。おいおい、俺は明日大事な用があるというのに・・・。
まぁ、一応中身は確認しておくか。
―フランチュールへ
―メルヴェイに来なさい。
―以上。
誰だよコイツ。偉そうに。ぶっ飛ばしてやろうか?差出人はどいつだぁ?
―シトリアより
「すぐに行きますっ!!!!」
俺は街の中で手紙に向けて精一杯の返事をした――――――
こんばんは、甘味です。
と、まぁこのような形で第13話に繋がります。
次はリータ編です。
本編では地味になりかけているリータが大活躍?します。