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番外1:フランチュールの冒険(1)

「ねぇ、フランちゃん。遊ぼ?」

「おい!ガキは黙ってろ!!今日は俺と遊ぶんだもんな?」

「おいおい、黙って聞いてれば・・・俺に決まってるだろ?」


私の目の前で頭の悪そうな男達がもめている。

まったく、私はあなたたち全員まとめて興味が無いというのにね。


私は常に無表情を作り、彼らがもめている間にすっと抜け出す。

いつもこんな調子。男はみんな顔なんだものね。


私の住んでいる街は小さな田舎町。

言葉も、容姿も、考えも汚い人で溢れている。

犯罪なんて当たり前。この街の人は例え目の前で犯罪が起きても平気でコーヒーを啜る。

そんな街に私は住んでいる。



できるだけ人目につかないように・・・歩いていても誰かと出くわしてしまう。

その男の子は手に花束を持ち、頬を赤く染めてジッと私を見ていた。


「あ、あの・・・」


声をかけてきた。やっぱり私なのですか。


「何ですか?」

私は無表情で答えた。


可愛らしい顔立ちのその男の子はどぎまぎしながら私に告げた。


「その雪のように白い肌を持つ花のように可憐な貴女の全てを愛しています。僕と・・」


男の子はそこで言葉を詰まらせた。はぁ・・・。

「ダメです。全然ダメです。無駄に綺麗な言葉で飾ってる時点でダメです。

周りを言葉で飾らなければならない気持ちなんて大したことないに決まっています。

よって、私は貴方とはお付き合いできません。さようなら。」


私は強い口調で男の子に言い、後ろを振り向いた。


後ろで男の子の啜り泣きの声が聞こえる。

「もう僕は駄目だ」とか「生きる意味が無い」とか。あぁ、もう。


私は早足で男の子の泣いている背中を追い、静かに耳元に口を近づけそっと言った。


「貴方は十分魅力的ですから、もっといい恋をしてください、ね。」

そして私は再び後ろを振り向き走った。


早く私のこと忘れてくれればいいのだけれど。


男の子の見えなくなるところまで走って私は一息ついた。・・・一息つきたかったのに。

私の目の前には強面の見た目20代前半の男。どうやら愛の告白、ってわけではなさそうだけど。


「なぁ、そこの可愛い嬢ちゃん。俺と一緒に楽しいとこ行かないか?」


まぁ、どうせろくな所では無いと分かるけれど、一応聞いてみた。

「楽しいところとは、どこですか?」


「へへ・・・興味持ってくれてんのか、まぁ、すぐ分かるからよぉ。」

そういって男は私ではない誰かに目配せをする。


するとどこからか3人の男が現れた。


「・・・どういうことでしょうか。」

「あ?お楽しみの余興だよ。」

そういって男達はニヤニヤして私を見る。


はぁ、何故こんなに面倒な人たちに出くわすのでしょう。今日に限ったことではありませんが。


男が私を捕まえようと両手を広げる。


・・・何が楽しくて貴方達に捕まらなければならないのですか。


私は自ら男の懐へ入り、鳩尾に一撃浴びせた。一瞬のこと。何があったのか他の3人には分からない。

「・・・あれ、どうやらお仲間さんは気絶してしまったようなのですが。」


わざとらしくそんなことを言ってみる。お願いだからこれで察して逃げ帰ってほしいのですけど。


男達は一度驚いた顔をしたが、結局私に向かって飛び掛ってきた。


え・・・、もう、嫌なのに。


私は1人に鳩尾への一撃、そしてもう二人のお腹には堅いモノをグリグリと押し当てた。


「撃たれたくなければさっさと倒れてる人を背負ってどこかへ行って貰いましょうか。

・・・それと、そんな態度では女性は誰もついてきてくれませんよ?第一貴方達、格好悪いですし。」



私がそういうと男達は青ざめた顔をしてどこかへと行った。

・・・ふぅ。


ふと視線に気付く。大方私を助けようとでもしたのでしょうか、男がガタガタと震えながら影からこちらを見ていた。

あー・・・。もう。



・・・私は、自分ではよく分からないけれども結構綺麗な部類らしい。

けれど、この容姿で得したことなんてあまり思い浮かばない。

強いて言えば・・・ドアを開けなくても誰かが開けてくれる事くらいかな。


あぁ、誰か私の心を物凄い勢いで奪ってくれる人はいないのでしょうか。

そうすれば初めてこの顔が役に立つというのに。



・・・ふいに何やら賑やかな音。この街では珍しいその楽しげな音。

今日は何かあったかしら?


私はその音に向けて足を進めた。


すると、音の元ではパレードが行われていた。

そこには一台の車がゆっくりと走っていて、その周りには男達が群がっていた。


あぁ、そういえば聞いていた。

確か最近王女が死んだとかどうとかで、私と同じくらいの子供が姫になったとかどうだとか。

それで、世界中を回っているだとかどうだとか。

まぁ、私は関係ないけれどね。


・・・けれどやっぱりどんな子なのか気になるわけで、私は人ごみの中へと入っていった。

珍しく周りの男達は私のことを気にすることなく姫とやらをボーっとした顔で見つめていた。まぁ、それはどうでもよいとして。



私は男達を押しのけて車の近くまで行った。


・・・私は息を呑んだ。


姫は男達が見とれるのも分かるほどに綺麗で清楚で輝いていた。


「綺麗・・・」意識せずともそうつぶやいた私の声に気付いたのか、姫は私をジーッと見つめ、

ニコッッ!と、擬音がくっついてきそうなほどに飛び切りの笑顔を見せた。



今日の日記。姫は大変なものを盗んでいきました。私の心です。とでも口ずさみたくなるほど。

こんなつまらないことを言ってしまうほどに私は酷く動揺していた。


いや、アレ運命の人じゃね?


ってゆーか、もう、他にいなくね?


もはや、今日会ったこと自体運命じゃね?


あ、分かった。私、姫と結婚するために生まれたんだ。もう、それしか考えられないわ。



「姫っ!!!」

私はボーっとしているうちに走っていってしまっていた車に駆け寄り、声を出していた。


「何ですか?」


「私と・・・結婚してくださいっ!!!!」


自分でも何言ってるのか分からないくらいバカなことを言った。

けど、姫はそんな私にまたニッコリと笑ってみせて言った。


「無理♪だってあなた、女だもん♪」


ガーン。こんなときに性別と言う壁があるなんて。


「・・・だったら・・・私・・・いや・・・俺・・・男になりますっ!!!」


姫は一瞬驚いた顔をした。正直私も自分で言っておいて驚いた。

すると姫はまた私に笑いかけて、車から一度降りた。

側近と思しき老人が呼び止めたが、姫はそれを気にせず私の元に歩いてきた。


緊張でガタガタ震えている私の首を抱え、口を私の耳元に置くと、

「期待しといてあげる、よ♪」


耳に当たる姫の吐息で私の体温は急・上・昇♪

自分の顔が真っ赤になっているのが分かる。


姫は私から一歩離れるとパチッ★とウィンクしてまた走って車に戻っていった。


・・・それから10数分、姫がこの街から去っていくまでの間、私はずっとその場に立ち尽くしていた。

心臓をはちきれんばかりにドキドキさせながら。



そして次の日。

「フランチュールさん!!何ですか?!その格好は!!!」


「うっせぇよボケ共が!!近寄ってくんじゃねぇ!!」


帽子にレザージャケットとレザーパンツにレザーブーツ。普段は親父の趣味であるお姫様衣装だけれども、今日は断固拒否した。

まぁ、周りの男達が驚くのも無理はないだろう。


「うぇええ〜ん・・・フランちゃんが・・・」


「泣くなバカ!!ウゼぇんだよ!!」


私・・・改め俺は完全に変わった。

姫に相応しい男になるために。


方向性が違うか?そんなことは無いだろう。


まぁ、とにかく・・・


・・・どうしよう。


そういえば相手は王族家だぞ。

俺の家も一応この街では一番の金持ちだが、王族家とはまったくつりあわない。


・・・そうだ・・・。思いついた。


「親父!!!俺、旅に出る!!!っつーか拒否権は無い!!」


「そうか・・・お前もそんな歳になったか・・・。ならば何も言うまい、コレを持ってゆけ。」


やけに物分りの良い親父は俺に銃を手渡した。


「その銃は我が一族に代々伝わる銃でな、無限に弾を発射することができる。

きっとお前の助けになるだろう。それと・・・これも。」


親父が手渡してきたのは、小さな紙とペン。


「これは・・・?」


「それは武器紙と言ってな、そのうちお前でもどうしても勝てない敵が現れるだろう。そいつと戦うときに好きな武器を描けば、

きっとお前の力になるだろう。お前にはこの紙を使いこなす素質がある。」


「・・・よくわかんねーけど、サンキューな!親父!」


「ちょっと待て、その前にその服を脱いでこっちを・・・。」


親父が持ってきたのは・・・お姫様衣装。


バンバンッ!!!


親父からもらった銃は早速役に立った。



・・・と、まぁ俺は旅に出た。


王族に認められる英雄になるために。そしてゆくゆくは姫と結婚するために。

番外編第一回、フランチュール編第一話です。


第13話でフランチュールがシトリアに呼び出されるまでのお話となっています。

ちなみに2話構成です。


フランチュール編の次にリータ編のお話も既に浮かんでいるのですが、このペースでは第二章に入るまで何日かかるのか少し不安です。が、どうにかやっていこうと思います。


引き続き『あおしろ』をよろしくお願いします。

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