第16話:迷子(2)
・・・・・・・
・・・「・・・う、うぅ〜・・・。」
アレからどの程度時間が経っただろうか。
体はそこらじゅう痛いが、俺は生きていた。
どうやら森の木がクッションとなり何とか助かったらしい、
鎧に枝が大量に刺さっているということはそういうことだろう。
鎧を着ていなければどうなっていたか・・・想像するだけで恐ろしい。
そういえば・・・フランチュールは?
辺りを見渡すも何処にも・・・・・・
・・・そういえば体が重い。
フランチュールは俺の上に乗っていた。
少し一安心・・・
俺はあちこち痛む体を、ゆっくりと起こす。
ゴロリとフランチュールが仰向けになる。
!!!フランチュールは腹が血にまみれていた。
「おい!!大丈夫か?!」
・・・返事は無い。
おい・・・これはまずいんじゃないか?
血を見て少し気分が悪くなったが、そんなことを言ってはいられない。
俺は鎧を脱ぎ服の一部分を切って止血を施す。
こんなことなら・・・もっと保健の授業、真面目に受けとけばよかった・・・。
俺は痛む体に鞭を打ち、フランチュールを担ぎ上げる。
うっ・・・体に力が入らない。でも・・・
俺はとにかくどこか人のいる場所へゆくために歩いた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
あれからどの程度歩いたか、何やら大きな音がする。
俺は音の聞こえる方向に進む、すると二本の大きな木の先に町が見えた。
助かった・・・。
既に体はボロボロ、疲れて今にも倒れてしまいそうだ。
町の中へと入る。
そこは小さなレンガ造りの家が並んでいた。
人通りは殆どない。
そんな時、一人の老人がいた。
「あの・・・すいません・・・病院ってどこにありますか?」
俺は焦る気持ちを抑え、ゆっくりとした口調で聞こえるように尋ねた。
「・・・。」
無視。
「すみません、聞こえていますか?」
少し失礼かと思ったがそう尋ねると、老人は俺のことをギロリと睨み、ペッ!とつばを吐き捨て何処かへ行ってしまった。
・・・は?
俺はその後、何人もの人に話しかけたが、なぜか誰も話を聞いてはくれなかった。
自力で探そうにも病院らしきものは見えない。
ダメだ・・・もう・・・動けない・・・・・・。
俺はその場に倒れこんでしまった。
もう動く気力も無い・・・・・・、こんなところで・・・・・・死ぬのか・・・・・・?
再び意識が途切れそうなとき、声が聞こえる。
「おい!!あんた大丈夫か?!」
男の声・・・・・・
俺が男の声だと認知したとき、俺は意識を失ってしまった。
「おい・・・おいってばっ!!!」
バシャッ!!!
顔が急に水に濡れ冷える。
「うわっ!!冷たっ!!!!」
俺は飛び起きる。それと同時に酷い痛み。
「おい、あんまり暴れるな。」
それは先ほどの男の声だった。
「・・・ここは・・・?」
「ここは俺の診療所だよ。まったく・・・あんたらもここに迷い込むなんて不運だな〜・・・。」
「フランチュールは?!!」
男は隣にあったベットを指差し、言った。
「あ?あの女の子か?あの子なら平気だ。ほら、何かちゃんと止血できてたみたいだしな。傷もそんなに深くねぇし。
っつーか質問ばっかだな?お礼の1つも言ってみろよ。」
そういうと男は笑った。
「すみません・・・ありがとうございます。」
「なぁに、気にすんな。と言うよりあっちの女の子よりも問題はあんただ。あちこち骨が逝っちまってるよ?
よくここまで人一人担いで来れたもんだな。」
気付けば俺は体中を包帯やギプスで覆われていた。道理で体が動かない。
「まー、とっておきの薬を塗っておいてやったからな、3日で動けるようになるよ。」
「すみません・・・でも、俺お金は・・・」
「あぁ、金か?別にいいよ。ボランティアみてぇなもんだ。あんたらみたいな行き倒れに金なんか求めてねぇよ。
それにエクサーのあんたがこんなところに来るなんて、何か訳アリなんだろ?」
「いや、普通に馬車から落ちて・・・。」
俺がそういうと男は顔を怖くして言った。
「馬車から?はは・・笑えるな、その冗談。・・・で、目的はなんだ?」
男は脅すようにいう。
「だから、本当に馬車から・・・「嘘つくんじゃねぇ!!」
男はそういうと一度深くため息をつき、また話し出した。
「・・・悪い、怒鳴っちまって。お前みたいなガキが・・・そんなわけないもんな。」
「・・・どういうことですか?」
俺はおそるおそる聞いた。
男は質問には答えずに話し出した。
「もう知ってるかもしれねーけど、この町はエクサーを歓迎するようなところじゃねーんだ。
だから、その怪我が治ったらとっとと出てってくれ・・・
3日は絶対安静。この部屋を貸すから絶対に3日間は出るな。いいな?」
俺は黙って頷いた。
男は、頭を軽く押さえながら部屋を出て行った。
・・・全然意味が分からない。
エクサーって、この国を守るヒーローみたいなもんじゃないのか?
今まで行った街では、俺達はだいぶ歓迎を受けていた。
歓迎・・・それは姫であるシトリアの存在があったからかもしれんが、
まずこんな風に排他的な対応を受けたことはこの世界に来て一度もなかった。
混乱しながらも色々考えていると、
何だか気分が悪くなり、俺は眠りについた。