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第15話:迷子(1)

何故だか分からないがヴェイに散々怒られて数分後。

「ふぅ、お待たせしました。」

少し疲れた顔をしながら3人が戻ってきた。


「何を買ったんだ?」


「はい?あ、えーっと、コレです。」

そういってシトリアは武器紙を見せた。


「武器紙って、普通に売ってるのか?」

「えぇ、大体の街には売っています。クレパのような田舎町にはありませんが。

しかし高いんですよね・・・。」

そういってシトリアは苦笑いした。


「あと・・・これも・・・ありますよ。」

ドスンッ!


3人の中で一番疲れきった顔をしているリータが俺の前に大きな皮袋を置く。

「これは?」

「姫からの・・・プレゼントです・・・。」


俺は袋を開け、中にあったものを取り出す。

これは・・・何?


「それは、フジュグレの革で作った鎧です。流石にその村民みたいな服はダメかなぁと。ここから先は少し危険ですしね」


へぇ・・・俺は今着ている服の上に着た。

フジュグレって何なのかは知らんが、ちょうど良い重量感。走れないというほどでもないし、どこか心許無い雰囲気もない。


「これ、いいな。」

「気に入ってもらえてよかったです。じゃあ、出発しましょう。」


シトリアがお願いします、と言うと馬車は動き出した。



出発して1時間経っただろうか、俺は体を横に倒し、シトリアは疲れていなさそうだったが、3人は買い物疲れからか眠っていた。

ヴェイもさっきから声を出していないということは眠っているのかもしれない。寝るのかどうかは知らないが。


むぅ・・・暇だ。


俺はとりあえず眠ろうと近くにあった薄めの布団を被り、目を閉じた。



-------・・・ゴソ・・・

何やら物音、大方誰かの寝返りだろう。

眠るときに物音に気を取られるとなかなか眠れなくなるんだよな。


・・・モゾモゾ・・・


モゾ?何だか変な音が・・・


モゾ・・・

むおっ!何か布団に入ってきてる感触。


その『何か』は俺の目の前にモゾモゾと頭を見せた。

この帽子は・・・フランチュール。


「おい・・・何でこんなとこにいるんだ?」


「・・・グスッ・・・。」


・・・返事は無い。・・・泣いてる?

とりあえずこの状態でいるわけにもいかないので、布団から抜け出そうとする。


抜け出そう・・・としたが、フランチュールに酷い力で腕を掴まれた。出るなってか?


ガタンッ!!

馬車が少し揺れる。するとフランチュールはキャッ・・・と声を上げた。

フランチュールは俺の腕を掴むと、自分のほうへ引っ張り抱きついた。ってかおい、またこんな感じか?


「おいやめ・・「・・・怖いんだよこの野郎・・・。」


言葉は威圧的だが弱々しい声。


「高いところ苦手なのか?」

フランチュールは黙ってうなずいた。・・・意外だ。

もう何も言うまい。これ以上腕を千切れんばかりに握られたらたまったもんじゃないしな。



俺は再び目を閉じた---------



-------


----




・・・アレからどのくらい時間が経ったのかまったく見当がつかない。

背中に圧し掛かるような力を感じる。フランチュールはまだ眠っているようだ。



ズガァアン!!!!!


馬車に大きな衝撃。

フランチュールにまた握り潰されるかと思ったが、

眠っていたお陰で大丈夫だった。

しかし何だ?


俺はフランチュールを起こさないように立ち上がり、運転手の近くへと行った。

「何があったんですか?」


「どうやら・・・奴等に感づかれたようです・・・。」

「奴等?」

「この辺りを縄張りにしてる、グーヅマンです。奴等はいわゆる鳥人の姿で、ここを通りすぎる馬車を襲うんです。」


「・・・で、今まさに襲われてると?」

「はい。」

運転手は落ち着いた口調で答えた。



「・・・落ち着いてられないんじゃない?」

運転手は尚も落ち着いた口調で言う。

「・・・はい。やばいです。」


ズガァアン!!!


「ってか、今何されてるの?」

「えーっと・・・撃たれてます。」


「・・・俺はどうしたらいい?」

「追い払ってください。」


・・・そんな無茶な。

「その、少し出てください。今スピード落としているので大丈夫ですから。」

「いや、銃で狙われてるのに外に出ろってか?」


「このままではこの馬車ごと落ちますよ?」

・・・。


俺は外へ出た。外は相当な高さで下なんか見れたものではなかった。


「うわわわあああ!!!!!怖い・・・怖い!!!!」


「怖いとかどうでもいいんでチャッチャと倒してくださいー。」

運転手の投げやりな声が聞こえる。


俺は仕方なく、さっきシトリアから何枚かもらっておいた武器紙を取り出し、銃を描いた。

・・・流石にここでパチンコを出すわけにはいくまい。



俺は少し大きめの銃を手に持ち、構える。

・・・しかしグーヅマンとやらの姿は見えない。


「下にいますー。」


下?下を見るのか?

うぅ・・・。


俺は下を軽く見る。

・・・いた。

その姿は邪族のように禍々しいものではなく、どちらかと言うとかっこよい部類だった。

とりあえず俺は一発よく狙い・・・放った。


俺の銃は少し大きめの弾丸を出し、見事命中・・・するわけなかった。



さらにその攻撃で俺が外に出ていることに感づいたグーヅマンは俺をジッと見つめ、

肩に背負っていた銃を俺に向ける。


「え、ちょ、待った待った!!!!」



ズドーン!!!


「・・・え?」


「ちっ・・・起こしてくれればいいのによぉ・・・。」

そういって俺の隣にいるのは・・・フランチュール。

フランチュールが泣いたせいか目の辺りを赤く腫らしながら、シャミューシャが使ったものと同じバリアを発していた。


「起こすって?」

「さっき姫が言ってただろ?この辺りはグーヅマンの住処なんだよ。だからそれを追っ払うために俺が呼ばれたんだよ。」

そういうフランチュールの膝はガクガクと震えていた。


「って言うか・・・大丈夫か?」

「問題ねぇ。その銃をよこせ。」


俺は言われるままに銃を手渡す。

「って、お前、銃なんか扱えるのか」バンッ!!!


グキャァアア!!!!


恐らくグーヅマンによるものと思しき悲鳴が響く。


「残り5匹・・・。」


バン!!バン!!バン!!!!バン!!!


「残り1ひ・・・・ヒィッ!!」


調子良く敵を打ち落としていたフランチュールが悲鳴をあげる。

「どうした?!」

「ふぇぇん!!!!!怖いぃ!!怖いよぉ〜!!!!下・・・下見ちゃったぁあ!!!!」

今までの口調からは想像できない泣き声。今まで見ないで撃ってたってのがすごいんだが。


尚も最後の一匹を打ち落とそうとするフランチュールは膝どころか腕までガクガクに震えていた。


「祐樹ぃ・・・手を・・・手を貸して・・・・。」


震える声でフランチュールが言う。


俺はフランチュールの腕を支えた。



バンッ!!!!


その一発は見事グーヅマンに命中。

グーヅマンは悲鳴を上げながら落ちていく・・・。


ドォオオン!!!!!!


馬車が大きく揺れる。

グーヅマンが落ち際に銃を放ったよう「あわわわわ!!!!」


「え、ちょ、フランチュール落ち着」

そう言いかけたとき、フランチュールは暴れだし馬車の周りの小さな囲いから飛び出てしまった。

フランチュールの腕を支えていた俺の体も例外ではなく空中に投げ出され・・・


「あぁ〜!!!!!!」


パラシュートなしのスカイダイビング?


フランチュールと俺はドンドンとスピードを上げて地上へと降下していく。

もう半分失神状態のフランチュールが俺に捕まる、と言うか抱き着く。

「おい!やめろ!!スピードが!!!」

フランチュールが俺にくっついたことでスピードはさらに上がる。



どんどん地面が近くに・・・


ズザザザザッッ!!!!!




・・・・・・体に何かが刺さるような感覚を覚えたとき、

俺は意識を失っていた。

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