第13話:食事と決闘?(1)
俺とシトリアとリータの3人は、
ヴェイを馬車に乗せたままで馬車を降りた。
どうやら馬車は一時的に降りただけであって、
少し時間が経ったらまた同じ馬車で行くらしい。
ヴェイは「何で連れてってくれないんですかぁ〜!?何で何でぇ〜?!」
などと騒いでいたが、気にしないことにした。
街の中に入るとそこは程よく賑わっていた。
程よい、というのは、露天商の声や街を歩く人の話し声は聞こえるが、
人とぶつかるような心配があるほど人が多いわけではないと言った感じだろうか。
ふむ・・・何で俺はこんな説明をしたんだろう。
「さてー、まずは腹ごしらえですね。」
「あぁ、そうだな。何か店とか知ってるのか?」
リータがニコニコしながら話す。
「はい!私知ってます!!えーっと確かこの近くに・・・あった!」
リータが指差す先には、何だか案外普通な木造なお店。
まぁいいな。
「うん、ここなら・・・行きましょう。」
シトリアとリータは一瞬目を合わせニヤリと笑うと足早に入っていった。
俺も後を追って入った。
中は特に・・・強いて言うならば汚い。
衛生的にどうだろうって程ではないが。
「いらっしゃい!こっち空いてるぜ!」
武器屋とかに居そうな強面のオジサンが出迎える。
いや、どこもかしこもガラガラなのだが。
中にはシトリアとリータしか客はいなかった。
俺は店主に軽く会釈し、カウンターの席にいるシトリアの隣に座った。
「で、何にすんだい?」
「え、メニューって無いんですか?」
「祐樹さんモグリですねぇ、ここでは任せますと言うのが当たり前じゃないですか。」
シトリアがニヤニヤしながら言う。
・・・いや、初めて来たところなんだから知らないのが当たり前じゃないですか?
「じゃ・・・任せます。」
「私はメルヴェイピザで。」
「あ、私もそれで。」
「おい、今普通に頼んだだろお前ら。ちょ、すいません、俺もやっぱり「メニューの変更はできないんだ。すまんな兄ちゃん。」
店主がニヤリと笑う。
・・・はめられた?
店主はその場で調理に取り掛かる。
店主は驚くほど手際が良く、見る見るうちにピザが形作り窯の中へと入れた。
「そういえば・・・お金あるのか?」
「あぁ、そのことならご心配なく、何しろ私はお姫様ですからねっ♪!」
そう言ってシトリアは自分の胸を叩いた。
「・・・あぁ、そう。」
「はい焼けました。メルヴェイピザ二枚!」
店主が2人の前にピザを置く。
「いっただっきまーす!」
2人がピザを貪り食う。目の前で作られたからこそなのか、メチャメチャ旨そう。
「・・・で、俺のはないんですか?」
「あぁ、今から作るよ。」
店主が作業に取り掛かる、何を作るんだろう・・・
「それにしても・・・何でそのピザはそんなに旨そうなんだよ・・・。むかつくな・・・。」
「え?あぁ、はい?いや別においしくなんか無いですよぉ?」
そういうリータは幸せそうな顔をしている。
「食べたいんですか?」
シトリアもまた幸せそうな顔をして言う。
「もらっていいのか?!」
「えぇ、私少しお腹一杯ですし。はい、あ〜ん・・・」
シトリアが俺の口に向けてフォークに刺したピザを差し出す。
「いや、普通に食べていいか?」
「ダメです。ルールです。」
「何のだよ。いや、頼むから普通に食わせてくれ。」
「・・・いらないんですか?」
俺の目の前で小さく切られているというのにピザの上に乗っているチーズがトロリとこぼれそうになる。うわぁ・・・・・。
「や、すいません何でもいいんでください。」
「はい、じゃ、あ〜ん・・・」
シトリアがニッコリとして口に近づける。
何だかむず痒いが俺は口を開け食べようと・・・
バタンッ!!!
ドアが開く、入ってきたのはシトリアと同じくらいの年齢に見える少年。
「姫ぇ〜!!!いつの間に・・・いつの間にそんな男を!!!!
俺という人がいながらぁああ〜!!!!!!」
・・・何だこの展開。
気にせず食べようと思ったがシトリアが手を引っ込める。
「あ、あなたは・・・!」
「そこのお前!!!俺と姫を賭けて決闘しろぉ!!!」
「いや、ちょっと待て、今のは別にそういうのじゃないぞ?
話がちょっと飛びすぎ「表でろやぁああ!!!」
するとシトリアが俺の腕に抱きつき
「やめて!私この人とは離れたくないの!」
「てめぇえええ!!!!もう姫とそんな関係に・・・!!!!」
シトリアを見るとニヤニヤしながら俺を見ていた。・・・からかってやがる。
「おい、いやコイツは今冗談を言っただけだか痛たた!!!」
少年は俺の腕を引っ張り外へと連れ出した。
口に物を入れながら頑張れー。と言うリータの声が聞こえた。
・・・「で、何で俺はお前みたいな小さい子供相手に決闘なんてしなきゃいけないんだ?」
「勝った方が姫に相応しい。これでいいな?」
コイツ・・・人の話聞いてない。
「おいおい・・・子供相手にあふんっ!!!」
軽い一撃が空腹の俺の腹に当たった。
「おいおい、いつまで話すんだよ?男なら拳で語りな。」
「・・・ね?」
シトリアがため息混じりに言う。
いや、何が、ね?だ。どうしろと言うんだ。
「来ないんだったらこっちから行くぞ!!」
少年は俺に殴りかかってきた。
えーっと・・・俺は俺の顔に向かってくる手を受け止め、
後ろに回りこみ暴れないように抱きかかえた。まぁ、子供だもんな。
「ちょ・・・やめ・・・やめろーー!!!この・・・この変態が!!!」
変態?・・・えーっと・・・。
「シトリア、ちょっと質問いいか?」
俺は暴れる少年?を抱きかかえながらたずねた。
「コイツ・・・男か?」
シトリアはニッコリと笑って首を横に振った。
・・・。今度は俺が抱きかかえている少年・・・?に尋ねた。
「お前・・・女?」
「変態!!」
俺は慌てて手を離すと少年・・・ではなく少女はすばやく俺から離れた。
「いやいやいや!!だってシトリア・・・なぁ?!」
「いや、私に振られても〜?」
「お前知ってたんだろうが!!」
「てめぇ変態!!姫にそんな口聞いてんじゃねぇ!!」
すると店から店主が出てきた。
「お客さん、もうできましたよ?」
ギュルルルル〜・・・
「・・・よし、お腹が減った。」
俺は店の中へと逃げた。