第9話:旅立ち(1)
ブンッ!・・・ブンッ!・・・ブンッ!・・・
「で・・・俺は・・・いつまで・・・こうしてれば・・・いい・・・んだ・・・?!」
俺は部屋の中でバカみたいに重い剣で素振りをしていた。
「はい?剣を使えるようになりたいって言ったのは祐樹さんじゃありませんでしたっけ?」
ブンッ!・・・ブンッ!・・・ブンッ!・・・
「いや・・・言ったけどな・・・アレは・・・つぶやき・・・みたいな・・・もの・・・で・・・!」
するとシトリアは耳に手を当て、
「・・・はい?何か言いました?」
「やってられるかーー!!!!」
俺は剣を投げ飛ばした。
「じゃあ、パチンコでもう戦い続けるんですか?
ガキ大将ですか?貴方は。」
「意味わかんねーよ・・・。」
「ホント・・・意味分かりませんねぇ・・・勇者さまぁ・・・。」
真後ろからどす黒い声。
この声は・・・
俺は後ろを振り向こうとすると片手で頭を掴まれた。
「痛い痛い!!!!」
「私も痛いんですよ?」
俺に飛び切りの笑顔を向けるリータは手に俺の振っていた剣を持っていた。
「え・・・あ、いや、あの・・・。」
「リータ、やめてあげなさい。」
シトリアが言うと、リータはすぐに手を離した。助かった・・・。
「ってか・・・俺はいつになったら帰れるんだ?
一度帰らないと不味いのだが・・・。」
「あぁ、ご安心を。
あちらの時間は止めておきましたから。」
「え?どういうことだ?」
「あの、あちらの世界との入り口を閉じたのです。
入り口を閉じればこちらの世界とあちらの世界は別世界。
別世界となれば、時間軸も異なる・・・
・・・まぁ例えて言うなら、2つの歯車があったとして、
2つがくっついていればどちらかが回されている限りそれは同じように回るけど、
2つを離せば2つの運動は同期しない・・・って感じでしょうか。」
「・・・まぁ、とりあえず時間は大丈夫なんだな?」
「はい、誰かに入り口をこじ開けられなければ大丈夫です。
まぁ、こじ開けられたときは2つの世界の終わりでしょうけどね。」
「・・・?」
俺が不思議そうな顔をすると、シトリアは続けて話した。
「今、世界の主は力を蓄えているのです。
その力が完全になれば、入り口は自ずと開かれ、世界の主の力はあちらの世界にも及びます。
後は、ヒーロー不在の怪獣アニメ状態ですね。」
・・・考えただけでも恐ろしいな。
つまり、入り口を通ってあの邪族達が俺の世界で
大暴れってことだろ・・・。
「これからの当面の予定ですが、
祐樹さんとは、これから世界中の占拠された街の解放、
及び邪族の殲滅・・・最終的には世界の主の撃破・・・」
「ちょ、ちょっと待てよ!
俺、こんなんだぞ?!それでまたアレよりも強いやつと戦うのか?!」
「旅先で強くなればよいのです。それに、一人じゃないんですから。
私とリータ・・・が一応います。」
「私がビシバシガシゴシバキボキ鍛えてあげますからね!」
リータが指を鳴らしながら言う。
バキボキがシャレにならないのですが・・・。
「で、とりあえず今はどうするんだ?」
「とりあえず首都であるリズレバークへ行きましょう。
まず、現在の状況を把握できないと動きようがないですので。
リズレバークには、馬車で・・・まぁ、1日で着きます。」
「へぇ〜・・・ってか、武器紙は使わないのか?車に変えれば断然速いだろ?」
「この街にあった武器紙がですね、取り戻したのはいいのですが、
シャミューシャが使いまくってしまいまして、この街にいるエクサーに分配したらなくなってしまったのです。」
「そうなのか。」
「さて、まぁ、とりあえず今日は休んでください。
明日の朝、出発しますので。」
「あ、あぁ。分かった。」
「では、良い夢を。おやすみなさい♪」
そういって、リータとシトリアは出て行った。
俺は、端に置いてあったベットに寝転んだ。
・・・別にプレッシャーを感じないわけではない。
怖いと思わないわけでもない。
俺が、やらなければならない。俺が強くならなければならない。
俺は明日の旅立ちに備えて目を閉じた。