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短編集 冬花火

浮遊水晶

作者: 春風 月葉

 私は抗わない、私はもがかない、私は溺れない。

 都心を流れるのは人の海、酷くごちゃごちゃとした渦に呑まれながらふわふわと進むのは私だ。

 私はどこでだってただ流れに身を任せ浮遊する一人のクラゲだ。

 海に流れがあるのなら、きっと私は溺れない。

 友人の言葉に流され、親の意思に流され、私の運命に流された。

 この世界は暗く深いから、別に周りが見えなくたって変わりはない。

 ぷかぷか、ぷかぷか。

 コツンと何かにぶつかっても、それが人か壁かもわからないから、また私は流され出す。

 なにかとぶつかる度に寂しさを感じ、後には空虚な気持ちになる。

 なにかに触れたくて手を伸ばしても、そこには決まってなにもない。

 誰かに気付いて欲しくて光ってみても、海の暗さに搔き消える。

 大きな傘を差してみたこともあったが、傘の下からはなにも見えなかった。

 仕方がないからひらひらと踊ってみても、そのうちに飽きてやめてしまう。

 結局、私はただ流れる。

 そこには意味も私も何もない。

 なにもないから流される。

 私一人にはどうしようもないのだ。

 広い海にそう吐き捨て、私という一人のクラゲも街の流れの中に消えていく。

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