神ニハマケロ
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ転生者ノ強欲ナネガイニモマケズ
さて、今回こんな文を書いたのにはわけがある。
それは、さっき来た転生者がそれはそれは酷かったからだ。
今思えば私の初手が間違っていたのかもしれない。
だが私の神としての能力は相手の望むやり方で転生者を異世界に送る、だけであったからどうしようもないと言えばそうなのだろう。
まあ、なんにせよ
とりあえずその話を書き綴ることにしよう。
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「どうも、神じゃ」
初手は自己紹介じゃ。これで場を制することができる。
ちなみに今回は仙人風じゃな。
仙人とは言っても色々あるじゃろうが、その中でも扱いやすい、頭はどこの毛も真っ白で、髭を三つ編みにする様な愉快な爺風でお出迎えをしてやったぞ。
「ここはどこかと聞かれたら、天界の言うのが人間にはわかりやすいかのぅ」
質問が来たら偉そうに答える。すると進行がしやすい。これだなら仙人風はやりやすいんじゃよ。
「キミには申し訳ない事をしたのう。お前さんが死んだのはワシの手違いじゃった。」
この言い訳はなんだかんだで使いやすいんじゃよね。気の弱い少年だとこれで無理やり納得する事も多いし。
この少年も気が弱そうじゃから、今回もチャチャっと終わらせれるじゃろう。
「一度死んだ者は生き返らん。それは覆せない掟じゃ」
これに関しては嘘じゃないの。
ワシに与えられた権限も異世界に送るまでじゃし。
「しかし、それでは申し訳が立たん。じゃからお主にはもう一度生を与えてやろう。それもとびきりの特典をつけてやってな」
さあて、今回はどんなものにしようかの。
コヤツも苦労して来たようじゃし、魔法の天才的才能と剣術の才能。極め付けに影に潜る能力とかどうじゃろう。
前回の奴にも中々の特典を与えたが、今回もかなりの奮発具合じゃないか?
「どうじゃ?」
さて、これで後は見送るだけかとおもったのじゃが、そいつが急に怒り出したのじゃ。
まるで火山の様じゃのう。普段は大人しいのに急に熱くなるところが。
この少年は「お前が殺したんだからもっと良い特典を付けろ」と言ってきたのじゃ。確かにもっともなのじゃが、やれ、貴族の生まれにしろとか、姉妹は美人でとか、可愛い幼馴染が欲しいとか。
そこまでしたら、人生つまらんじゃろ。
一応、特典を付ける理由としてワシの手違いにしとるが、コヤツは自転車に乗りながら携帯を扱っていて、前方不注意の末に電柱激突。そのあとに大量出血でショック死じゃぞ。
自業自得の他でもないわい。
じゃが、まあ望むのならしょうがない。
「わかったわかった。ワシが悪かったんじゃ、それくらいしてやろう」
それくらいならつけてやらんでも無いからつけてやった訳じゃ。
しかし、それでも足りんと言う。
全く、年寄りの扱いはもっと優しくしろと親に言われんかったのか……
まあいい
もう、めんどくさいから一気に聞いてやろうか。
「なんじゃ、この際全部言ってみろ。出来る限り叶えてやるから」
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………………
…………
……
こいつ殺してやろうか。
本気でそう思ったのはこれが初めてじゃったわい。これが殺意と言うものなのじゃろうな。
ワシに殺すなどの権限が無くて助かったな少年。
ちなみに最終的にどうなったと思う?
酷いもんじゃよ。全ての武道の才能に最強の魔力。鑑定能力に代理演算。果てには女の子にモテやすい外見にしろ、だ。
外見は貴族に生まれさせるんだから、後は生活習慣さえ守ればある程度はカッコよくなるわ。そこまで頼るか。
はあ、はあ、つい興奮してしまった。
ワシには転生者を殺す権限は無いと先程言ったがの……
飛ばす世界は選べるんじゃよ。
それではな、少年
「良い異世界ライフを過ごすんじゃよ」
次の更新は23時くらいです。