転生門
前の話のサブタイトルを走れワタシから送れワタシに変更しました。
「ある暮方の事である。ある一柱の神が、転生門の下で男を待っていた。広い門の下には、この神のほか誰もいない。」
と、転生門という題名の本が書けてしまいそうだが、私には文学の才能は無いのでやめておく。
さて、そんな独白など、蟻の巣がどれくらいの密度で作られているのかと同じくらいにはどうでも良い事だ。
それよりも、なぜこんな文を書いたかということの方がよっぽど大事で、それは、そろそろ来るはずの転生者が全く来ないからである。
こんな場合は大概死ぬのに時間が掛かっている事が大半だ。
通り魔や殺人鬼に殺された時に良くある事で、仕方が無いのでこちらから声をかける事も少なくない。
今回、そうだな、転生先にシステムの言葉があるからそれを真似てみようか。
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——異界の英雄の死を確認。対象を召喚の対象に設定。召喚プログラムを本作業に移行します——
私は今姿を透明化して耳元で囁いています。
すると目の前の少年の朧気な目が驚愕に彩られます。
どうやらまだ心臓が止まって無い様で、死ぬまでに時間がかかるみたいです。
アナウンスの時は死とは言いましたが、大量出血によるショック死が予想されるだけで、まだ死んではいません。
諦めてもらう為にも少し急かしましょう。
——召喚先の障害の有無を確認——
——スキャンしています……——
——エラー。召喚先の変更を提案——
——提案中……提案中……——
——承認されました。変更先は竜の頭上——
——それに伴い武具の付与が提案されました。実行します——
これで転移してすぐに竜殺しの称号と最強武器を手に入れる事になります。
因みに提案や承認と言っていますがもちろん全て一人芝居です。寂しいなんて思いませんよ?
それでは、転移者が死にかけのままで異世界に行かないように、傷の治癒ですね。
——英雄の体細胞の組織を再構築します——
——トライ……——
——成功。副次効果として筋肉増強。思考力が加速しました——
ついでに基礎能力も高めておきましょう。
転移者がついに幻聴が聞こえる様になったか……などと言っていますが、私にはわかっています。内心は俺も異世界に行けるんだと喜んでいるのが透けて見えます。
大概異世界転生を望む様な人はそんな風に思っていますから。
——最終確認。プログラム及び環境共にオールグリーン——
——英雄の召喚を実行します。英雄は衝撃に備えて下さい——
——3. 2. 1. 0, ——
——召喚に成功しました。以後召喚プログラムは英雄補助プログラムに変わり、英雄の支援をします——
ついでのおまけに英雄補助プログラムという名の鑑定能力を渡しておきましょう。
それでは
——良い異世界ライフを——
キマりましたね。
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