2話 信頼
俺達の前に現れたソイツは何者なのか。彼は笑って俺達に言った。
「全員揃ったようだね」
不気味な顔したソイツは思った以上にまともな話し方をした。
「無理にとは言わない。地球を助けるために私についてきてほしい。」
「どういうことだ」
「俊輔先輩の言う通りよ、部長は何か知ってますか?」
「俺も何も知らない」
部長も知らないか・・・まぁ、当然か。
「地球を助けてくれとか言われてもなぁ、まずあんたのこと何も知らないわけだし」
「光の言う通りだ。」
と俊輔。
「それはすまなかった。」
男が頭を下げる。
「私の名はプラマ。この世界ではない世界・・・いわゆる異世界からきた。」
「異世界ってあの、異世界?」
佳が質問になっているのかどうかわからない質問を投げかけるが、まぁ今は仕方が無いだろう。彼女にしては冷静な方だ。
「その異世界からきたアンタがなんで地球を助けるとかどうとか言ってんだ?」
「異世界のバランスが崩れると地球のバランスも崩れる。表と裏、プラスとマイナスのような関係だからどちらか片方でも崩壊することは許されない」
なるほど。だからか。
「だから地球を救うためにも私についてきてほしい。」
「なんて言ったら本当についていくとでも?」
俊輔がキレ気味に聞く。
「命の保証もないんだろ?」
部長も冷静だが機嫌はよくなさそうだ。
「私も行かない」
佳も同じ反応だ。
「・・・異世界に行って何をすればいいんだ?」
「光!何を言ってる!」
「そうですよ!」
驚く俊輔と佳。
「地球が危ないんだろ?それに、この男の人がこの部活に来たのもきっと理由がある。みんなでできることをしてみないか?」
「ふざけてんのかてめぇ!」
誰かがキレた。
「部長の言う通りだ!」
「何言ってるんですか!冗談はやめてください!」
俊輔と佳も続く。
「え?いや、俺はただ・・・」
圧力に押されて何も言えない。
「私も無理にとは言わない。」
とプラマ。
「だったら尚更だ。俺達が行く必要はない。もちろん光もだ。」
「それでも何かしないと・・・」
「落ち着け光。」
「部長まで・・・」
「でも、地球が危なくて俺達に何かできるなら・・・みんなならわかってくれるよな?」
「いい加減にしろっ!!」
「俊輔・・・」
「なんで・・・なんでだよっ!」
「なんでってなにがですか!」
「みんな地球を守りたいとか思わないのか?!
やれることやってみんなを助けたいと思わないのか!」
「まずお前はあのプラマって人を信じてるのか?!」
「・・・っっ」
でも。
「この人の言ってることが本当かは確かにわからないけど・・・やれることをしたいんだ。プラマって人が言ったように強制じゃないんだ。俺だけでも行くぞ」
ここまで言えば流石に・・・。
「そうか。勝手にしろ。」
俊輔?
「俺は行かない。」
部長まで?
「私達もです」
佳まで・・・
「君だけのようだね。どうする?私も無理に君だけ連れていきたくはない。」
「・・・いや。連れていってくれ。」
「本当にいいんだね?」
「あぁ。」
「・・・行くぞ。」
彼がそう言った瞬間、少し頭がぼーっとしたかと思うと、いつの間にか知らない場所に1人たっていた。
「ほんとに来てしまったのか・・・」
「・・・」
「・・・」
涙が出てきそうになる。だって・・・意識が飛ぶ中聞こえたから。みんなの俺に対する罵声の声が。
部長も。佳も。そして・・・俊輔も。
悲しかった。誰も相手にしてくれないまま、ここがどこかもわからない異世界へ。
もうどうすればいいのかわからない・・・。
だが、俺はここで1つ疑問に思った。
・・・プラマがいない。