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探し物

王都マグニス南部は商人達によって賑わう流通のメッカである。

 この島の物流はこのマグニスに集約しそれから各地に拡散する、当然それを商いにしている商人達はこの場所に集うのだ。

 そしてこの場所が特殊なのは冒険者のパーティー募集も行われているという点である。

 なぜならパーティー結成後必要な武器防具やアイテムの補充などすぐにできることであり利便性に優れているのだ。

 この国の経済の中心ともいえるこの場所でカナタはひたすらとある人物を待っていた。


 『”マモル”がこの場所でパーティー募集をしていた』

 この情報を手に入れたカナタは教えられた広場に到着した後すぐパーティー募集の掲示板を食い入るように見た。

 広間は円形で花壇が規則的に配置されていた、その間を沢山の馬車が占拠しその中に積んでいる積荷を商人が売り買いしている。

 掲示板はその広間のちょうど中心に設けられそこには数名の冒険者が集まっていた。

 パーティー募集の期限は一日、朝募集内容が書かれた募集用紙が張り出され夕方には全て廃棄される。再度募集を行う場合用紙に募集内容を書き込まなければならない。

 募集内容はダンジョン攻略、レベル上げの手伝い、ギルドメンバー募集、中には家政婦や友人募集などあり戦闘のみの募集だけではなかった。

 カナタは掲示板の前まで来ると一心不乱に”マモル”の文字を探す、上から下、右から左まで探したが結局お目当ての名前を見つけることができなかった。

 はぁ、と大きくため息をつくと近くのベンチに座り込んだ。

 太陽は西の山に隠れそうになっておりそろそろギルドに戻らなければならない、この掲示板の募集用紙もそろそろ回収されてしまうだろう。

 ギルドの仲間には二日だけ自由行動の時間を貰った、本来ならギルマスの自分がこんなに自由勝手に動いてはダマだとわかってる。そこを無理を言って時間を貰ったのだが時間切れ切れである。

 落ち込んで俯いていた頭を上げ空を見る、太陽の光は掠れ小さな星が薄紫の空を飾っていた。

「戻るか」

 ベンチから腰を上げ、ギルドの方に歩き始める。マモルに会うことはできなかったが彼らしき人物がこの世界にいることはわかった、それだけでも十分な成果ではないだろうか?自分の中で自問自答し帰路につく。

 せめて人目会えれば、それより自分がこの世界にいることを伝えることができれば…

「…!!」

 そんな時彼は閃いた、振り返った先にあるのは掲示板。これを利用すればいい、ここで彼を募集すればいいのだ。

 少し当事者にとっては恥ずかしいことになるのだが今は出会うことのほうが重要なのだ、だから

「我慢しれくれるかい、マモル?」

 明日一番で募集を行うことを決めたカナタのギルドへの足取りはここに来た時よりも軽やかだった。




 同時刻、フレイヤ山エリアB。

 フレイヤ山は麓から上に上がるにつれエリアが分けられている。

 エリアDが麓から八合目、モンスターレベルは四十から五十。

 エリアCは八合目から五合目、モンスタレベルは五十から六十。

 エリアBは五合目から二合目、モンスターレベルは六十、巨体モンスターやドラゴンの徘徊するエリア。

 エリアAが二合目以上、到達した冒険者はまだいない為モンスターやフィールドの状態などは不明である。

 このエリアBに到達したギルドは【ラストピース】の二十名のみ、彼らはこのエリアで二日過ごし今下山の真っ最中であった。

 エリアCまでは歩くことにそれほど苦労しなかったがエリアBに入ってからは大きな岩が点在していることが多く歩くペースは半分近くまで落ちた。何より時折現れるモンスターとの遭遇が冒険者たちの精神を疲弊させている。

 先頭を歩く人物から行進停止と今晩ここで夜を明かすと告げられメンバー達はテントを張り夕食の準備を始めた。

 食事の時は今日の戦利品や出会ったモンスターのことなど、中には下山してからどのようなことがしたいか話す者もいた。

 そんな彼らの中でも一際大勢の人間が集まっている場所ではある噂で盛り上がっている。

「それでその人の持つ武器で攻撃したら血が出るの?」

「そうそう!しかも中身まで出るってさ!」

「エフェクトじゃなくて?」

「聞いた話だとゴブリンがバラバラになったってさ」

「でもそんな生々しい効果のある武器なんて見たことないぜ」

「このエリアでもそんな武器ドロップしないし、そもそもその武器持ってる人間が初心者なら余計に信じられんわ」

「俺が聞いたのがただの噂だからな!作り話じゃないぞ!」

 彼らの話を聞いた周りの冒険者達もそのことについてアレやコレやと自分の意見を出しながら話は大きくなっていった。

 そこから少し離れたところにいる五名の冒険者の内一人もその噂に自分の意見を述べた。

「もしかしてこの噂の人物は固有スキルでも持ってるかもしれないですね」

「武器じゃなくてその人物自体が特別ってこと?」

 銀髪を逆立て黒のレザー装備を着た男性に黒髪のショートヘヤーの女性が答えた。彼女は両手両足に白銀の甲冑を装備していたが食事時もあってか胴や腰は薄い衣服を身に着けているだけだ。

「そうだとすれば今になって噂にはならないと思いませんか?新しくこの世界に来た初心者で抽選で新規プレイヤー特典が当たったみたいな」

「それなら誰かが特殊能力に覚醒した、なんてことも考えられない?レベル六のアイテムを使ったとか」

「まぁ序盤の”はじまりの町”付近でそんな武器が手に入るとも考えられんしな」

 二人の会話に混じったのは少し年上と見られる男性だった、身軽な衣服に着替えており戦闘などまったくする気もない格好だ。

「どちらせにせよ」

 岩の上にいた男性が立ち上がりながら喋る。

「一度会ってみたいものだな、その”変り種”に」

 その男性のこのギルドのマスター、【ユニオン】だった。

「ギルマスが興味持つなんて珍しいじゃない」

「確かに、寝ることと戦うことくらしか興味なさそうだったのに」

「お前らはユニオンを何だと思ってるんだよ!」

 銀髪の男性と黒髪の女性に彼らより少し若い茶髪の灰色のコートを着た男性がつっこみを入れた。

 ははは、と笑い声がおき楽しい夕食も終わりかけた頃見張りが大声で叫ぶ。


「南方からドラゴン!早いぞ!」


 その声を聞いた者の内騎士の者達はすぐに南方に向け盾を構えそれ以外の者はすぐに彼らの後ろに隠れる。

 間を空けることなく暗闇の空から彼らの焚き火の灯りを目掛けて大きな物体が落ちてきた。

 落下の衝撃で小さな石や土、食器が宙を舞いなんとか消えなかった灯りと月明かりがその物体を照らし出す。その姿は大きな岩ようで深緑の体色で大きな翼と四脚、太い尻尾と細い首、頭部には一対の角を生やす。

「第一は正面、第二は後ろ!第三、第四は右と左から挟み込め!」

 ユニオンの指示が飛ぶと同時に全員がドラゴンに向け駆け出す、ドラゴンは彼らの動きを見ながら正面の冒険者達に向け炎を口から吹き出した。

 その炎を受けきるのは先ほどユニオンと共に食事をしていた少し年上の男性だった、当然防具はつけておらず身軽な衣服のままだが彼の手には大きな盾が持たれ彼の足元を中心に魔方陣が展開する。

「こんなことなら装備を脱ぐんじゃなかった!」

「踏ん張ってくださいよ!」

 彼の後ろにいる魔術師は彼に魔力防御アップのバフをかける、それが魔方陣となり彼の防御力を底上げする。

 ドラゴンの炎はバフの付加された大盾に塞がれそれ以上の燃え広がることなく拡散する。その彼の様子を見ながらユニオンが攻撃の指示を出す。

 近接アタッカーはドラゴンの脚や腹、尾を、遠距離アタッカーはドラゴンの翼や頭を攻撃する。

 暴れまわるドラゴンであったが相手が悪い、冒険者ギルドとしてもっとも洗練されたギルドでありそのチームワークの前に戦いはドラゴン劣勢で進む。

 ドラゴンは長い首を下ろした一瞬を突きユニオンが駆ける、彼は手に持つ鳴龍ノ剣が光り彼はそれを思い切り振り切る。

「【ヘヴィスラッシュ】!」 

 それはドラゴンの頭に横から叩きつけられ一文字のエフェクトを残す、ユニオンがバックステップをとったと同時にもう一人が空高くジャンプしていた。

 ドラゴンの頭は先ほどの一撃で地面に着いていた、止めをさすように彼は着地と同時にその斧をドラゴンの頭に叩き付ける。

「【ストーンブレイカー】!」

 その一撃でドラゴンの体は光の粒となって消える、大量のコインを残して。

 ドラゴンが消え皆が達成感に浸っている中ユニオンは止めを刺した彼に言葉を掛ける。

「よくやったな”マモル”」

 マモルと呼ばれた人物は振り返りユニオンに笑顔を向ける、彼はさきほどの茶髪で灰色のコートを着た人物。

「おいしいところもらってすいません、ユニオン」

「勝てればいいのさ、どうせコインは山分けだ」

「でも皆取り合ってますけど…?」

 マモルの言葉を聞き振り返ったユニオンが見たのはコインを取り合うギルドメンバーの姿だった。

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