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思惑とおもわくとオモワク

その国の北側には大きな山がそびえ立っている。

この島の中心にありこの島でもっとも高いもの、それがフレイヤ山。

唯一冒険者に踏破されていないこの山こそ”元の世界”に戻れる可能性がある最後の場所と言われている。

ただしこの山は登るにつれ出現するモンスターのレベルが高くなることが大きな問題であるがそれ以上に生還した冒険者が口を揃えて突破できない本当の理由を語る。


「【二首の竜】」




その国【王都マグニス】、この島でもっとも大きな街でこの国の首都である。

唯一城があり各地に点在する街とは比べられないほどの大きさを誇りそれに比例して住人や冒険者の数も多い。

ここで買えないものはないと言われるほど市場の種類は多くこの世界を本当のゲームとするならフレイヤ山はラストダンジョン、この街は冒険者が立ち寄る最後の街と言える。

 この街の西側には冒険者ギルドの本部が数多く置かれており有名所のギルド本部前では毎日のように入団申請の申し出が行われていた。

 そのギルド本部が立ち並ぶ一角に一際大きな建物がある、他の建物に比べ土地面積は四倍ほどはあるであろうか。全体的に灰色の石によって形作られており白いセメントのようなもので隙間は埋められている。

 そのギルド前には冒険者と思われる人物が沢山列を作っている、皆このギルドへの入団希望者。手には入団希望の用紙を持ち今か今かと自分の順番を待っていた。

 入り口で数名のギルド関係者がその対応を行う、それほど入団希望者が殺到するギルドの名は入り口の上側に掛けれられていた木製の看板に書かれていた。


 ギルド【stars】


 そのギルド内部には入り口前の冒険者の数に劣らず大勢の冒険者がいた。

 思い思いの武器や装備に身を包み入り口からすぐ広がる広間やそこから伸びる廊下で話し合いを行っているようだ。その顔には笑顔はなく何かしら心配ごとがあるかのように見える。

 彼らが話し合いの最中何度も見ていたのは広間の奥にある一室だった、そこは大会議室と書かれておりギルド内での打ち合わせに利用される場所だ。

 本来であれば”このギルド”内での話し合いに使われるのであるがそれ以上に活用されていると言えるであろう、その部屋には現在この世界の冒険者ギルドマスターがほぼ全員集まっているのだから。




 その会議室は静かだった。四十名近くのギルドマスターが皆声も音も立てず黙っている。

 そんな中一人の人物が話していた、彼の名はリディルド、ギルド【ディープブルー】のギルドマスターだ。

 彼は自分が立案したとある作戦について話終えたとこだった。

「私はこの戦いを一刻も早く終わらせ元の世界に戻りたい、この気持ちはここにいる皆も同じだと思う。だからこそこの作戦に参加してほしい」

「お気持ちはわかります、ですが一度メンバーにも聞いてみないと」

「今ここでお聞きしたいのは各ギルドのメンバーに作戦の是非を聞いてほしいということではなくここにいるギルドマスターのあなた達が私の提案に賛成してくれるのかどうかという点です」

「急に呼び出されて急にそんな作戦について賛成しろと言われてもなぁ…」

「別に嫌なら反対とだけ言ってくれればいい、やる気のない人間と戦うことなどこちらとしても願い下げだからな」

「その言い方はないだろ!」

「臆病な奴に用はない、この街で誰かが元の世界に帰らせてくれるのを待っていればいい」

「馬鹿にするのか!」

 怒りに震える男はBPに手を突っ込みリディルドを睨み付ける、そして勢いよく立ち上がりBPから剣を引き抜くが彼の目の前を何かが遮った。

「邪魔をするな!」

「まぁまぁ」

 怒る彼を遮ったのは藍色の両手槌、そしてそれを持つ人物は傍に座っているカナタだった。

 カナタの行動にほとんどのギルマス達は驚いたがごく少数の人物は彼の行動より彼の持つ龍の腕に視線を送った。

「リディルドさんの言い方には棘がありますが剣を引き抜くほどのことじゃないでしょう?」

「うるさい!黙…」

「私は会議をしに来たのです、あなた方の喧嘩を見に来たわけじゃない」

 カナタの目には何かしら恐怖を感じるものがあった、先ほどの怒りはその恐怖のようなものに紛らわされていく。

 彼は少ししてから剣を戻し椅子に座りなおした。

「リディルドさんも謝って下さい、他人を下にしか見ないあなたの言動では誰も作戦に関していい顔はしないでしょうから」

「それなら君もこの街で待っていればいい」

「じゃああなたのギルドだけで行けばいいのではないですか、わざわざギルドマスターを全員集める必要などないのではないですか?」

「では他のギルドマスターに再度訊ねる、私の作戦に賛成の者は挙手を」

 リディルドの発言を聞いた者の内誰も手を上げる者は当然の如くいなかった。

「…臆病者共が!」

「君には誰も付いていかないよ」

 そう言ったのは白に金の縁取りがされたオーブ【白光聖套ミエリーシャイン】を着たワイノスだった。

「貴様はどうなんだワイノス!お前こそ一番大きなギルドのマスターでありながら俺の気持ちはわからないのか!」

「気持ちは痛いほどわかる、まだ小さな子を何人も受け入れている【sts】としてもなるべく早く元の世界に戻りたいし返してあげたい。でもそれ以上に信頼関係がない以上無謀な作戦に参加はできないな」

「無謀じゃない!必ず成功する!」

「一時的な連携ではその作戦ではは無理だってことだよ、少なくともギルド加入メンバー全員でフレイヤ山を踏破するってことは簡単じゃない。日帰りでは行けないから何人かで交代しながら夜を過ごさないといけないし食事や精神面のケアだってそれを担当する者を選抜しなければならない。武器防具の修理や消費アイテムの運搬も考えればかなり繊密な作戦を立てないければ駄目だろ?」

「そんなこと言われなくてもわかっている!」

「わかっていないさ、君は自分達のギルドが強い強いと言われているから勢いに任せている訳じゃないだろうね?少数精鋭の君のとこにはわからないかもしれないけれど人数が多いギルドにはその人数分問題があるんだよ、それらをクリアしてからじゃないと作戦には参加できない」

 リディルドは観念したのか椅子に座った、それから大きく一度深呼吸をしてから黙った。

「その作戦に関して私に再度練り直させてもらえないだろうか」

 そう言いながら一人の人物が立ち上がった、全身を白銀の甲冑に身を包み真っ赤なマントをなびかせた長身の男性。彼の名はユニオン、ギルド【ラストピース】のマスターでレア六武器ロングソード系統【鳴龍ノ剣】を持つ人物である。

「私個人としてもなるべく早い内にフレイヤ山踏破はしたいと思っていた。結果として元の世界に戻れれば御の字、できなくても探索できるのであれば越したことはないと思う。どうか私に任せてもらえないだろうか、頼む」

 彼はそういうと頭を下げた、その姿にギルマス達はどよめく。【ラストピース】は少数精鋭の誰もが認めるギルド、二十名ほどしかいないものの各地の山や洞窟の探索を率先して行いフレイヤ山のエリア”B”に唯一到達したギルドでもある。

 そんな経験豊富な彼が頭を下げてまで作戦の一任を願い出たことに反対する者はいなかった。

「ギルド内でも話し合いをさせてくれるなら僕は賛成かな」

 そう言ったのはワイノス。

「私はあくまで確実にフレイヤ山の攻略をしたいだけだ、極端な作戦変更を求められると言い合いになるかもしれないが作戦内容に関してギルド内から提案してくれるのはこちらから願いたいことだ」

「他の皆はどうかな、まぁユニオンの作戦練り直しが行われてからになるんだろうけど」

 もっとも経験のある人物と一番大きなギルドのマスターが組んだ以上反対する者は出てこなかった。

「それじゃあユニオンの作戦練り直しが終わってから再度集まるということで、ただし一応各ギルドのメンバーには今後フレイヤ山踏破に向けて全ギルド協力の下作戦が行われると伝えてほしい」

 ギルマスの面々は頷いた。

「それじゃあ今日は解散、追って連絡は宜しくユニオン」

「わかった、それとリディルドはこの後私のギルドに来て欲しい。作戦について再度説明してほしい所がある」

 不貞腐れた顔のリディオンに表情を変えずユニオンは言った。

「…どうせ内容を変えるなら俺の話などどうでもいいだろ」

「別に全部を変える訳じゃない、よくできているところもあるし私個人の”見たこと”を含ませたい所のあるのだ。まぁ各ギルドのことも考え細分化するところは多いがな」

「…わかった」

 リディルドは返事を返しそれをきっかけに自然とギルマス達は解散していった。




 日が沈み暗くなった部屋にユニオンは一人椅子に腰掛けていた。

 机の上の紙には所狭しとフレイヤ山踏破作戦について内容や課題等書き込まれておりその作戦について話し合っていた人物はもう自分のギルドに戻っている。

 しかしユニオンはその人物とは別の人物のことを考えていた、リディルドが怒らせたギルマスを”彼”がなだめた時自分が持つ鳴龍ノ剣から不思議な感覚を得た。

(あの両手槌の噂が本当だったとすれば、俺の疑問に彼も同調してくれるかもしれない…)

 このロングソードを手に入れた時から自分の体に起きた不思議なこと、ずっと疑問に思っていたことが紐解かれるかもしれない。

 ユニオンはそう思いながらある人物の名を発した。

「君ならわかってくれるか、カナタ君」

 彼はそう呟き鳴龍ノ剣を握り直した。


見切り発車ですが三章スタートです。

ちなみに前回分からアチコチに話が飛びますのでいつも以上に訳がわかりません!

今回も勢いだけで頑張る。

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