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人間少女と妖精の旅  作者: 梨由
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始まりの章

はじめまして。梨由と申します。今回初投稿という形でオリジナル小説を投稿させていただきます。

皆さんお暇がありましたらぜひ読んでください。

 小さなころからお母さんが読み聞かせてくれた物語。

 妖精さんが、綺麗で豊かで安全な妖精達の国を飛び出して、いろいろな国を飛び回る物語。

「私もいつか妖精さんみたいにこの暖かい家を飛び出して、お外の世界に行ってみたい!」

 ずっとそう思っていた。

 『何もない殺風景なこの街で夢を抱く者は、大人になるまでそれを追い求めるだろう。』

 誰かが昔そんなことを言ってたような気もするしそうでないかもしれない。

 ただ私はその言葉通り……いやちょっと違うが、ほぼその言葉通りその夢を大人になるまで追い求めた。

 そして得た結果が、今のこの状態だ。

 炎天下の下、荷物は少し大きめの薄茶色のトランクに、収納場所の多い便利なポーチ。服装は、質素なワンピースにお母さんからもらった大切な帽子。そしてその帽子についている羽の柄が入ったバッチ。

  はたから見れば田舎娘の旅行旅、だけれど私は今れっきとした冒険者なのである。いや厳密にいえば今からなるんだけれども。

 とにかく、私は今夢にまで見た冒険の旅へ飛び出そうとしているのだ。

  あぁ、なんて嬉しいんだろう、なんて幸せなんだろう! 夢にまで見た冒険の旅が今目の前に! 喜びのあまり飛び跳ねてしまいそうだ!

 そうして心で思ったままの行動を取ってしまった自分の失態に気付いた私は少しばかり後悔し、羞恥心を隠すために両手で顔を覆う。

 考えてみればなぜ私はこんなみすぼらしい姿でトランク抱えて路地の真ん中で顔を隠してうずくまってなきゃいけないのだ……。だがしかし、よく考えてみろクロエ・カーベンディッシュ。長い年月をかけてお金を貯め勉強し、お母さんを説得して、町のみんなも説得してようやく、ようやくこの日がやってきたんだぞ! あぁ妖精さん、ついに私の冒険が始まります!

 私は心の中でそう自己完結すると、再度トランクを抱えなおし息を整えると街の中心部に向かった。

 が、さて、まずこの≪人間の国≫を出なければならない。というのも、この世界はいろいろな≪種族≫が共存している。それぞれの種族にはそれぞれの陣地が与えられることになっており、各種族が各陣地で独自の文化を栄えてるそうな。

 私は≪人間≫の種族で、人間の国でずっと暮らしていた。だけど、16歳になったことで、大人として認めてもらい、そんなこんなで私には外の世界に出る許可が下りた。最も外に出るには認定試験というものを受ける必要がある。

 基本的に認定試験に必要な知識は世の中の歴史や現状、そして生き抜くために必要な最低限技術や知識だ。

 護身術やサバイバル術、そして他の国の公用語など……まぁ覚えるものはたくさんある。

 そんな難しい認定試験を私は16歳になるまでに猛勉強して受かり、そうして認定バッチなるものをいただいた。このバッチは扉を通るために必要なバッチで種族ごとに中の柄が違う。一応すべての種族の柄は把握しているがそれでも他の種族のバッチなんてまだ見たことがない。他にもこのバッチは身分証明書としても使えたりして、結構大切なものだったりする。

 話を戻すが、人間という種族は数多い種族の中でもとても弱い部類に入る。多くの種族が身体やその他さまざまな面で優れている反面、人間という種族には何もない。しいて言えば知恵だろうか? いや文化交流が行われるようになったこの時代に知恵でできた魔法具や武器なんてものは役立ちやしない。身を守る程度しかできないだろう。それだけできれば十分ではないかと? 確かにそうなのだが、残念なことにこの世界にはたまに戦争というものが起きるらしい。

 何百年か前に起きていた大戦争の時だって人類は生き延びることで精いっぱいだったというし、まぁ実際生き残っていたのが不思議なくらいだったらしい。

 まぁ今となっては決められた法のおかげで滅亡の危機にさらされることはないけれど外の世界は別だ。法など無関係な外は人にとってとっても危険な世界。己の身は己で守らなければならない。身を守るすべを持っていてもたまに起きる小さな戦争に巻き込まれることだってある。

 そんな恐ろしい場所に私は出ようとしているんだ。そう再確認すると私は少し身震いをした。でもだからっといって後戻りするわけにはいかない。長年の夢だったんだ、前に進まなければいけない。

 それにしても、なんだったか? あぁ、どうやってこの国を出るか、だったっけ。詳しくは私もどこで出るのか知っているわけじゃない。でも国を出るには「扉」を通らなきゃならないっていうのはわかってる。しかし場所までは聞いたことがない。というか聞き忘れた。

「困ったなぁ……」

 こういう時は相場に従うのが最適だろう。

「ってことはやっぱりあそこだよね」

 私はこの国の象徴であるお城をを見上げながらそうつぶやくと気合を入れ直し、城へ向って歩き出した。

 先程までいた場、首都の港からしばらく歩くとお城の正面についた。そこには門を守る二人の兵がいた。

「何かお城に御用ですか?」

 やさしくそう言う兵士さんの顔は声と同じくやさしそうで、これから旅に出る私の心を少し暖かくしてくれた。

「あ、えと私これから外の世界に行きたいんですが……」

 たどたどしくそう答えると兵士さんは驚愕した表情を浮かべた。

「あなたのような若い方が外に?」

「は、はい」

 兵士さんの問いに答えると兵士さんはもう片方の兵士さんと少し顔を見合わせると先ほどのやさしそうな笑顔を浮かべ一礼するとゆっくりと話し始めた

「これは、勇敢な少女さんだったのですね、失礼しました。外の世界に出る門はこの先の王の間にございます」

「お、王の間!? 王様のお部屋ですか!?」

「えぇ、是非わが王と一言言葉を交わしてからお行きください。よい旅を」

 兵士さんはにっこりと笑うとどこかに指令をだし門をゆっくりとあけた。

 門が開くと門で隠れていた景色が鮮明に見えるようになり大きなお城の内部も見えるようになった。広いお城の内部に圧倒されていると兵士さんは私の背中をそっと押すと「どうぞ」といって笑った。

 兵士さんに別れを言い城の内部に入ると兵士さんが連絡を入れてくれてたのか中のメイドさんが出迎えてくれた。

「連絡は来てますよ、こちらへどうぞ」

 メイドさんに連れられるがまま城の内部を移動すると大きな扉の前にたどり着いた。

「ここが王の間です」

「ここが……」

 もしかしたらこれが外へつながる扉かと思ってた私はこれが部屋の扉だということに驚く。メイドさんが部屋の扉を開けるとそこには大きな部屋が広がっていて真ん中にある王の玉座にやさしそうなだけれどどこか少し風格や威厳がある男性が座っていた。

「ようこそ我が城へ。あなたが門番の言っていた外へ出る旅人の少女さんだね?」

 優しく微笑んでそう聞いてくる男性が王様だと気付くと私は改めて背筋を伸ばしてコクコクと精一杯うなずく

「あ……あの! その……わ、私はどうやったら外に行けるのでしょうか!?」

 緊張しながらも早く旅に出たいという気持ちの焦りから早口で私は王様にそう問うた。私の質問を聞いた王様は少し驚いた顔をするとくすりと笑い私にやさしく語りかけてきた。

「そんなに慌てなくてもいいんだよ? 外への扉は逃げないからね。それよりも苦労してまで手に入れたものを噛みしめながら私と少しお話ししないかい?」

「お、お話ですか?」

「そう。外の世界というのはとっても広く美しく、そして同時に多くの危険がある。それはもちろんわかっているよね?」

「は、はい! いっぱい学びましたから!」

「そうだよね。でもね? いくらいっぱい勉強したからといって目で見てみないとわからないことっていうのはいっぱいあるんだ」

 王様がやさしくそう語る言葉一つ一つを真剣に聞いてる私を見て王様は再びくすりと笑う。

「ふふ、まぁ君はきっとそういうことが知りたくて旅に出るんだろうね」

「えっ? あ、えーと……ま、まぁそんな感じで……」

 自分がただ絵本にあこがれて外の世界に行こうとしてるのだとは言えずつい曖昧な返事をしてしまう。

「でもね? 外の世界に出る人は一つ約束をしなければならないんだ」

「約束、ですか?」

「うん。それはね? “世界の謎を一つ以上持って帰ってくる”っていうものなんだ」

「世界の……謎?」

 王様のいう約束を聞いて私はほんの少し驚く。多くの文明が発達し、何不自由なく暮らせるこの世にもまだ謎があるのかと。

「謎なんかあるのか? って顔だね」

「へ!? あっえーと……」

 見透かされてたのかと思い少し照れくさくなって顔を伏せる

「いやいやいいんだよ? そうだね、謎っていうのはね? なんでもいいんだ。君が知らなかったこと、不思議に思ったこと。なんでもい、君が旅の中で感じた真新しいものを持ってきてほしいんだ」

「あの……それは王様がご存じだったものでもいいんですか?」

 確かに自分は知らないことが多くそんな新しいものを見たいがために旅に出るのだ。けれどどれだけ自分にとっては新しくともこれまでいろいろな話を聞いてきた王様には退屈で、ありふれた話ではないのか? と少し疑問に思ったのだ。

「そうだね。君はきっと私にとってはありふれたものだと思っているのだろうが、そんなこともないんだよ。人の数だけ出会いはある、そして出会いの数だけ謎がある。だからきっと君の旅は他とは違う何か新しいものがあると思うよ」

「新しいもの……」

 王様に言われた言葉は自分の心に強く響いた。あぁそうだ。自分はただ絵本にあこがれていただけじゃない。何か自分の知らない新しいものに出会うために旅をするんだ。

「ありがとうございます王様! 肝に銘じておきます!」

「うむ、そうかそうか。それではそこの右奥にある扉を通るがよい。そこから先は君の自由だ」

 王様の言葉を聞き右奥の方を向くと、王の間の扉よりもっと立派なそして何か不思議なものを感じる扉があった。

 ここを通れば私の旅は始まる、新しい出会いや謎に出会える! そう思うと私の心は高調した。帽子に付けてあるバッチが光ると扉がゆっくりと開く。

 扉の奥は白い光に包まれていて奥が見えない。眩しくて目が開ききらないほどだ。肩の力を抜き、息を吐きながら心を安定させて気合を入れなおす。

 心の準備を整えると振り返り深々と一礼する。

「それでは、行ってきます!」

 大きな声でそう言うと扉の向こうへ大きな一歩を踏み出した。

おつかれさまです。ここまで読んでいただきありがとうございました。

ちょうどクロエが旅に出るところまでを描いたプロローグですが、このあとクロエがどのような出会いをし、成長していくか気になる方はこれからもよろしくお願いいたします。

コメントや改善点、要望などあればお願いします。できるだけ反映できるよう努力しますので。

それでは、また次の章でお会いしましょう。梨由でした。

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