命の使い方
この日の夜、大日本帝国海軍大尉、関行雄は基地の滑走路の前に一人佇んでいた。
ーそうか、俺が死ぬのはこの為かー
そう悟った彼の脳裏には愛する妻の顔が浮かんだ。ようやく自分が死ぬ意義を分かったようだ。
彼の背後から声をかける人がいた。
今月配属されたばかりの関の部下である岡野三飛曹である。
「何をしているのですか?」
と声をかけた。
関はこう答えた。
「岡野、俺はようやく自分が死ぬ意義を分かった気がする。
俺はな、天皇陛下の為だとか、国の為とかに死ぬんじゃないよ。
愛する嫁を守るため死ぬんだよ。
どうだ?愛する者を守る為死ぬなんて最高にかっこいいだろう?」
と、微笑んだ。
「関さん......」
岡野は悲しそうに呟いた。
「まぁ、岡野。後のことは頼んだ。
いいか、よく聞け。お前は生きて戦い抜け。俺は明日死にに行くけどお前は若い。命の使い方をよく考えるんだぞ。」
と、関は語りかけた。
少しの沈黙の後、二人は隊舎に戻った。
翌日二十一日、関大尉達は出撃したが、会敵できず、帰投。
翌日、明後日、三日後も出撃するも会敵できず帰投。
そして、二十五日、ついに関大尉達は敵艦隊に辿り着き、花と散っていった。