青空(全編)
後編も有ります
1945年7月13日、海軍鹿屋基地近くの桜の木の下で、1人の男が思いを馳せていた。
蝉が鳴き声が響き渡っていた。
- 七年後、淳二が大きくなったらこの蝉の子供が泣いているんだな。その時、この国はどうなっているのだろうか。ー
蝉達の声の中に年の離れた弟と、国の未来を想像していた。
ー 平和で、一人一人が幸せになれる、そんな国でいて欲しいな。
淳二の奴は泣き虫だけど心優しい男だからきっと立派な男になってるだろう。
そんな未来が待ってるなら、日本男児、清原慶太郎の命ぐらい安いものだな。 ー
ふと、微笑んだ。
いつの間にか木の幹に止まっていた蝉を見て命を美しさを知った気がした。そして、裏山で弟と蝉をとって遊んだ思い出がよみがえった。もうすぐ死ぬであろう自分にとって宝石のように輝く思い出だった。
兄ちゃん、と声がした。弟だった。
「兄ちゃん、何してるの?」
と弟である淳二が尋ね、
「あぁ、考え事をしてたんだ。」
と、答えた。
「考え事?」
弟の幼く、無邪気な声が聞こえた。
だが、その質問には答えず、無言で弟を抱きしめた。弟は動揺していた。
「よく聞いてな。兄ちゃん、もうすぐ行かなきゃいけないんだ。もう会えなくなっちまうよ。寂しいだろ?ごめんな。
でもな、兄ちゃんは一つだけ約束する。
兄ちゃんは御国の為でも、天皇陛下の為でもなくお前達の幸せを守る為に死ににいく。
だからお前も、親孝行して、優しい男になってな。そして幸せになるって約束してな。」
「やだ、やだ行かないで。」
弟がいつの間にか泣いていた。
「ごめんな。これだけは無理なんだ。だから我慢してな。兄ちゃんとの約束守ってくれるか?」
と問うた。
弟は、うん、絶対守ると頷いていた。
さよなら、淳二、と言い、再び抱きしめた。
青空の下で二人とも別れの辛さを強く感じていた。




