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勇者の彼女は魔王様  作者: 勇者くん
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ただいま

 移動に成功した二人は、無事なことを確認したあと顔を上げる。


「これは…?」


 目的地に着いて一番最初に見たものは、巨大な扉だった。

 

「扉…ですね…」

「なんでこんなことろに扉が…魔王は来れば分かるようなことを言っていたが、一体どうするんだこれ?」


 そういって扉に触れてみようとした刹那、触れた指先が弾き飛ばされ、その反動で後ろに吹っ飛んだ。


「っうぉ?!」

「優さん!」 

「…だ、大丈夫、近づいたものを弾き飛ばすだけのようだ…」


 指が触れたところがゆらゆらと揺らいでいて、何かに塞がれているのがわかる。

 少しすると揺れが止まり、何も無いかのように分からなくなった。

 

 それを見ていた桜が口を開く。


「結界ですね…」


 揺れていた箇所を見つめたままいう桜に、俺は思わず聞き返した。


「け、結界…?」

「そうです、先ほどのように、近づく相手を弾き飛ばし、外側にいる相手を入れさせないために使われているものです」

「…要するにあれか?外部を内部に入れなせないってことか?」

「簡単に言うとそうなると思います…ですか…一体何故こんな場所に、このような結界が張られているんでしょうか…ん?」


 不思議そうに扉を見つめていると、桜は何かに気づいたのか扉に近づいていく。


「これって…」


 桜が持ち上げたのは、真っ二つに割れ、所々が粉々になっていてよくわからなくなっている。


「あ…」


 だが俺にはそれが何か分かってしまった。

 預かっていたヘンダントを、剣で真っ二つにして壊しているのを思い出す。


「ペンダント…?」

「ッピ」


 首を傾げながら、ポツリと呟いた桜のその言葉に思わず口から変な声が漏れた。


 ど、どうする?言うか?

 桜さんから借りた大事なペンダントを剣で真っ二つにして壊しましたって…。

 

 冷や汗を垂らしながら、横目で桜を見る。

 周りにも落ちて散らばっている破片を集めているのが見えた。

 まだ気づいてはいないのか、何かの手がかりかもしれないと桜のつぶらな瞳が語っている。

 

 ……んなこといえるか畜生!!


 どういえばいいのか、タイミングさえも分からず優が葛藤を続けていると、突如扉が開き始めた。


「!?」


 即座に後ろに後ずさり、開いた扉に警戒しながら剣を構え扉の向こう側を見据える。

 

「桜!そこから離れて!」

「大丈夫です、私達の敵ではないから安心してください」


 扉が完全に開ききる、怪しい気配がなく、襲ってくる気配もない。

 それに、見たところ罠が仕掛けてありそうなところもない。


 問題が無いのを確認し、桜に駆け寄る。


「…ひやひやしましたよもう…何を根拠に大丈夫だなんて言ったんですか」

「根拠は無いです!」


 堂々と言われた。


「いや…無いって…ええ…?」

「でも、真御有さんに、ここに来いって言われて来たんですし、それに…」


 桜は手元に持っていたペンダントを見せて言う。

 

「これ…私のペンダントですよね?」


 自分のペンダントだと分かっていたようだ。

 どう説明すればいいのか言葉が見つからない。


「い、いやこれには色々と事情があって…」

「別に怒ってなんかいません、だって、もう必要が無くなったんですから」


 目に涙を浮かべながら、桜はニッコリと笑いそういった。


「それって一体どういう…」

「これを見てください、私のペンダントの中に入っていたものです」

 

 そういって渡されたのは、一枚の小さな紙だった。

 小さい字で、何か文字が書かれている。


「た…た…つ…ぬ?」

 

 文字が所々潰れていて何て書いてあるのか文字が読めず、

 解読を諦め顔を上げ桜に聞く。


「…なんて書いてあるんですかこれ?」


 それに桜は口を開くと何かを喋る前に、後ろから二つの足音が聞こえてきた。


「…誰かきて…桜?」 


 敵かと思い、腰にある剣に手を掛けようとするが、その手をすぐに止めた。

 足音が近づいてくるにつれて、桜は今にも泣き出しそうな顔になっていく。

 

 扉の向こうから姿を現したのは一人の男性と、一人の女性だった。

 どちらも若く、三十代半ばに見える。

 女性の顔は、桜ととても似ていた。


 桜の後ろに立つと、二人は桜を見つめ一言ずつ喋り始めた。


「元気だったかい?桜」

「…うん」

「ごめんな…桜、心配させてしまったかい?」

「…うん!」


 頷きながら、堪えきれなくなった涙を流し、ゆっくりと後ろを振り向く。

 桜は泣きながら、満面の笑顔を浮かべ元気良く言った。


「おかえり!」

「「ただいま」」

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