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勇者の彼女は魔王様  作者: 勇者くん
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山奥に潜む影

 少し歩くと、南の山の目の前まで優達は辿り着いた。

 奥は日の光りが遮られ、暗くなっていてよく見えない。


「何か魔法で明かりを付ける?」


 魔王は優にどうするか尋ねた。どれだけ魔力が残っているのかは定かではないが、周りを明るくするくらいなら大したことがないようだ。


「駄目だ、これだけ木々が密集しているとなると、万が一燃え移ってしまったら山火事になる」


 弾みで火が燃え移ってしまえば、たちどころに火が燃え移るほどに木々が密集している。それに燃え移ってしまった際の対処に余計な力を使うのは得策ではない。


「だが、よくわからないが光りを発する球体みたいな奴でも出せばいいんじゃないか?小さい頃何度かよく目にしたものだけど、夜を明るくしたり祭りなんかで使われるのを見たことがあるんだが、魔王、分かるか?」

「一体何が言いたいのか分からないけど…桜ちゃん分かる?」

「はい、でもそれは駄目ですね、それは通称「炎の光り」といわれていて、かなりの高温があります、触れれば木々が燃えるほどの熱はあるでしょう」


 …以外に魔法って不便なとこあるんだな。


「というか…あれだけ暗いところで明かりを付けたら敵に見つかって危ないと思うのだけれども」


 麗は暗くなっている山奥を見据えて言った。

 これだけ暗いとなれば、敵による突然の奇襲や囲まれてしまう可能性がある。

 

「それもそうですね、…では足元に気をつけて行きましょう」

「待った、やっぱり桜さんが先頭は駄目だ、俺が先頭に行こう」


 そういって九沙汰が先頭に立った。

 その行動に桜は動揺する。


「え?な、なんで急に?」

「一度いった俺の方が道も分かっている、すいませんが俺が道を案内させてもらえませんか?」

「いやでも…」

「お願いします、桜さん」

「そうですか…いや、そうですね、分かりました、ではお願いします」


 九沙汰が先頭に入っていき、桜、寝子、優、魔王、佐紀、麗がその後を追うことになった。





「…まるで夜中だなこりゃ」


 少し歩けばそこは真夜中の森になっていた。見えない程に暗いというわけではなく、周りはしっかりと見えていて、逸れる心配はない。

 だが少し先になると、真っ暗な闇が広がっているだけで何も見えない。


「…なあ魔王」


 周りには聞こえないよう、優は小さい声で隣にいる魔王に呼びかける。

 それと同時に魔王の手を掴んだ。


「なあに優くっひゃ?!…どどどどうしたの?!」

「魔王、お前のデビルアイで俺の考えていることを読み取れ、近いだけだと駄目だといったが、接触していればちゃんと読み取れるかもしれないんだろ?」

「そ、それはそうだけど………」

「いいから読み取ってくれ」

「…分かった」


 魔王は少しむっとした顔になったが、すぐにしぶしぶと俺の考えを読み取る気になったようだ。

 魔王は赤く目を光らせた。


「(この状態で、俺に魔王の考えたことを共通させられるか?)」

「(この状態ならできるよ、ただし長くは出来ないから注意して、長時間意思がリンクしてると、離れた際に精神にショックが起こるかもしれないから)」


 便利な分リスクもあるということか・・・だが十分使える。


「(…分かった、それでだ魔王、お前の魔力はあとどれくらいあるだ?)」

「(全盛期の100分の1かな)」

「(多いのか少ないのか分からないんだけど)」


 魔王の全盛期を知らない分、どれだけ膨大な魔力を持っていたのかもしらないため凄いのか凄くないのか分からない。


「(多い方だよ、この前まで1千分の1も無かったんだから)」


 この前とは城にいたときの話を言っているのだろうか。

 だがそれではいつ魔力を補給できたのか分からない。


「(一体どうやって魔力を手に入れたんだ?)」

「(優くんから漏れ出ていた力を魔力に変換して吸収したの~)」


 法力、聖力、魔力は全くの別物で持てる人種も異なる。

 異なる人種が異なる力を求めれば毒となって現れ、だが異なる力でも持つ者によって力として具現化してあるものなら異なる人種にも受け渡すことができる。

 だが俺から漏れ出ていたのは力に変換されずに漏れでていた、

 つまりは毒を吸収して無理やり力に変換したということになる。

 

 力を渡す方法なら考えていたが…さすがは魔王、名だけじゃないってことか。

 

「(それでも危険なことには変わりないんだから気をつけろよ)」

「(でも得に問題ない見たいだし、それで怪我治したり出来てるんだから結果オーライじゃない?)」


 もし魔王が優の漏れていた力を吸収していなかったのなら、もしかしたら優は逃げた先で既に死んでいたかもしれなかった。

 ぐぅの音も出ない。


「(…すまん…助かった………ぁ、…りがとう…な)」


 結局自分の知らないところで、また魔王に危険な目を会わしていことを知ってお礼をした。


「(ええ?!なになに最後分からなかったなあああああ!もう一回!もう一回さっきのお願い!)」


 その魔王の驚きに優の顔が赤くなった。

 意図をリンクしていて、ハッキリと通じているはずなのに魔王はもう一度とアンコールしてくる。 


「(うるせぇ!長い間リンクできないのならさっさと次の話するぞ!)」

「(分かってるって~!…突然こんなこと聞いてくるってことは、何かあるんだよね」


 魔王はすぐに優の意図についてを察する。

 魔王は次に優が話す話が大事だと気がついていた。


「(…ああ、魔王、九沙汰の考えていることを読み取れないか?)」


 それに魔王は眉を吊り上げた。

 魔王は前にいる九沙汰を見ようとするが、手を強く握って止めさせる。

 優の顔を見つめ理由が分からないという顔になった。


「(…下手に見ない方がいいの?…手を繋いで読み取って来て欲しいってことじゃないってこと?)」 

「(違う、ここから九沙汰の心を読んで欲しい、離れてしっかりと読み取れないのは分かっているが、下手に怪しまれる行動はしたくはない)」

「(…分かった)」


 そう言うと魔王は黙りこむ。

 少しして返事が返ってきた。


「(…あれ?…これ……あ……)」 


 だが帰ってきた返事には疑念の色が混じっていた。


 それから事態が急激に加速しだす。


「皆さん!明かりです!そこから明かりが見えますよ!」


 桜が声を上げて前にある明かりを指指した、

 そこにはしっかりとした明かりが差し込んでいる。


「…もうすぐ、もうすぐ助けますお父さん!」


 桜はそういって光りのある方へと歩いていく。

 今まで思いを堪えていたのは桜だろう。その思いが堪えきれずに、桜は体で行動してしまっている。

 

「桜!敵がいるかもしれないから先に行かないで下さい!」


 優は咄嗟に引き止めたが、今の彼女には耳に届いていないのか、桜はどんどんと明かりの方へと駆け出していってしまっている。


「(おい魔王!どうしたんだ!しっかりしろ!)」


 しかも、桜の後を追いかけようにも魔王が動かない。

 だらりと体を倒し、俺に寄りかかるようにしていて、退いたらそのまま地面に倒れてしまいそうなほど、魔王が弱っている。

 それに俺は、魔王を抱きかかえて桜の後を追う選択を取る。

 

「どうしたんですか!」


 桜は明かりの差す前で立ち止まっていて、そこから動いてはいなかった。

 異変を感じて急いで隣まで駆け寄ると、そこは崖になっていた、それも見渡す限りそこから先の道が無くなっている。


「---なんだこれ…」


 下には少し先に町が見え、道の出来ている場所から優が立っている場所からの前にあるはずの道が無くなっている。


 まるで山の半分を根こそぎ抉ったかのように消えていた。

 

「これは…アイツがやったのか…?」


 ただ呆然と、

 その光景を凝視する。


「…俺が探している奴はこれだけデタラメな力を持っているっていうのか…?」


 いくら力があろうが、それでも個人だけでは限界がある。

 一人の人間が、人を、村を、町を、国を、世界を壊滅させてゆく。

 そんなことが、ただの人に可能なのだろうか。

 

「あいつは山を消し飛ばし、村を襲ってまでして何を探していた…?」


 ただの余興だったら初めに来た際に虐殺を行っていたはずだ、

 それにこんな小さい村を襲い、

 わざわざ山を消し飛ばす程の力を使う必要がどこにある?

 

 と、桜から話された、

 昔の話を思い出す。


「一体、『沈まぬ太陽』ってなんなんだ…?!」

「ふふふ…はは」


 後ろから笑い声が聞こえるのに気づいた。

 今一番近い位置にいるのは九沙汰しかいない。

 笑い声と共に、後ろから足音が聞こえ出す。


 ……山の半分が消えているってなんで九沙汰は知ってなかった?

 なんで突然九沙汰は先頭で道案内をしようとした?

 霧っていうのはどうなった?

 あの…魔王の『デビルアイ』

 周りに比べ、特に反応を示していたのは九沙汰だった。

 

 足音が近づくにつれ、

 思考が加速し、目まぐるしく回転していく。


 宿を出る際、九沙汰の行動に不振だと感じていた、

 だが、それでも九沙汰の事実を知っていて、

 なるべくその考えを避けていた。


「優、くん…」


 抱きかかえていた魔王から呼びかけられる。

 ハッなり魔王を見た。

 顔色が悪く、明らかに魔王の身に何かが起きている。


「魔王?!大丈夫か?!」


 そういうと、魔王はリンクして直接語り掛ける。


「(気お…つけ…て…あの男…思考回路に呪力が張ってあった…私の力を呪力として私に跳ね…返してき…た…)」


 だから俺は思い違いだと、

 そう思い魔王に九沙汰の心を知って、

 違うと思いたかった。

 

 ---だが


「やっぱりお前…!」


 振り向いた瞬間、崖の方へと後ろから背中を押された。

 ぐらりと体が傾き、後ろに倒れる。


「っな?!」


 一瞬の浮遊のあと、

 体は重力にしたがって落ちてゆく。

 

 崖の下に落ちるそのとき、

 そこには何度も向けられた、

 最初にあったときと同じ、

 薄っすらと笑みを浮かべた九沙汰が立っていた。

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