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【ミソロジーライフ】  作者: 文悟
冒険の書1
19/20

ミッション6:紅葉狩り

連続投稿予定でしたが無駄に長かっただけなので削り一話でおさめました。

ただ、明日も投稿します。(はやければ今夜?)


あとがきの編集を後ほどする可能性があります。


「るんるるー」


「ホッホーイ」


「二人とも木の根が飛び出てるところもあるから気をつけるんだよー」


「はーい」


「ホッホホー――イデッ!!」


「ホラいわんこっちゃない」



新たな仲間を得た日からゲーム内での八日後。昼。

九郎とオキツヒコ、オキツヒメ、そしてウカノミタマの四人はホーム近くの森へと来ていた。


「あ、きのこだっ!まっしゅるーむみたい


「ヒメ、それはドクツルタケ。食べられぬどころか危険な毒キノコだ」


「ふわわっ!」


「いや捨てなくていいよ。俺が使うから」


今日の目的は薬の材料や食べられる物の採集と、最近ホーム周辺に増えた非エンカウント出現タイプ魔物モンスターの駆除。みんなでカゴを背負い、武器を持っての探索中であった。


ちなみにカゴも武器も九郎の手作りで、カゴの材料は自然から集め、武器は試作で余った短剣だ。ここのところ調合と料理の修練で多額のソウルを消費してしまっていたため、九郎は節約生活の真っ最中だった。



「ねえねえ!こんどこそ、しめじっぽいのー!」


「それはクサウラベニタケ。食べればヒメの可愛いお腹が壊れてしまうな」


「にゅあー!?」


「はい、キャッチ。ヒメちゃんは毒キノコ見つけるのうまいねー」


オキツヒメが何かを見つける度、抜いてもいでは摘み取って、九郎とウカノミタマに見えるよう高々と掲げる。残念ながら今のところほとんどが毒薬の材料行きか、今は使い道が無く森に還元せざるを得ないようなものだったが、なんとも多種多様、そこかしこで見つかるものである。


九郎は未だホーム周辺にある森しか探索していないが、それだけでもすでに数十種類の木の実や薬草・毒草が揃っていた。しかも気候や環境にさほど左右されないようである。


鳥や猪などの食肉としていただけそうな動物はほとんど見かけないが、どうもこの領地、その代わりに森の中の充実っぷりが相当なものらしい。


始めからこうしていれば良かったと九郎がしばらく落ち込んだほどだ。



「オーイ、アッチニ“コオニ”ガイルゾー」


先行しがちなオキツヒコがやはり少し離れたところから九郎達に手を振った。

その指さす先には小鬼が四体群れているようだ。


「了解。じゃあ、先にそいつらを片付けよう」


「はーい」


「さっさと駆除しましょう」


それをオキツヒコに追いつきながら目視で確認した九郎は、こちらに向かってやって来る小鬼たちに対し素手のまま油断無く構えた。


ウカノミタマたちは九郎よりも丈夫であるためかそこに気負いや緊張感は無い。肩を回したり飛び跳ねてみたりと余裕がある。


接敵せってきまで四十秒といったところか。


数メートルの距離まで駆けてきた餓鬼たちが雄叫びを上げたところで戦闘は始まった。

しかし、九郎の《威圧》の前に体を強張らせてしまった小鬼たちは、飛び掛ることもその手の小ぶりの金棒を振り下ろすこともできず、拳と剣に容易く調伏されてしまうのだった。



「れべるあ~っぷ!」


「オイラモー!」


「おー、やったねー」


小鬼の群れを九郎印の短剣で切り伏せたオキツヒコとオキツヒメがはしゃぎだす。

九郎はそれを反射的に祝ってやり、大げさなほどに手を叩いた。


(――って、こりゃあまるで小学生の遠足の引率をしている先生だな)


嫌ではないがその感覚が既に染み付いている自分に少し気恥ずかしさを覚えて九郎は頬を掻いた。遅れて視界の端に仲間のレベルアップのお知らせが小さく表示されたのでそれを選択する。



―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


名前:【 奥津日子オキツヒコ 】

所属:【 ゲンクロウ 】

スピリットタイプ:【 善 】

カリスマ【 平凡 】 


レベル:【 13 】


《能力》


【体力】:67 ↑3

【筋力】:28 ↑1

【速さ】:37 ↑2

【器用さ】:54  

【理力】:26

【幸運】:21


《装備》


【神界の子供服(上)】

【神界の子供服(下)】

【一等賞の靴】

【ゲンクロウの残念な短剣】


*【攻撃評価】:F- 

*【防御評価】:F

*【心力評価】:G+


《技能》


【家の守り】

【料理の才能】・【採集:1】

【元気】・【冒険心モットシリタイ


《称号》


【かまどの神様】




◇◆◇




名前:【 奥津比売オキツヒメ 】

所属:【 ゲンクロウ 】

スピリットタイプ:【 善 】

カリスマ【 平凡 】 


レベル:【 14 】


《能力》


【体力】:50 ↑3

【筋力】:25 ↑1

【速さ】:27 ↑1

【器用さ】:98 ↑1

【理力】:37

【幸運】:21 ↑1


《装備》


【神界の子供服(上)】

【神界の子供服(下)】

【努力賞の靴】

【ゲンクロウの残念な短剣】


*【攻撃評価】:G+ 

*【防御評価】:F

*【心力評価】:F+


《技能》


【家の守り】

【料理の熟練者】・【採集:1】

【和み】・【夢見る乙女セノビシタイトシゴロ

【(限定)剣技:三枚おろし】


《称号》


【かまどの神様】



―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―



九郎は二人のステータスにざっと目を通し、新たな技能が増えていないのを確認してウィンドウを閉じた。



「しかしまあ、ヒコくんヒメちゃんの二人は成長が早いね。モンスターを倒した数は俺と同じくらいか、少ないくらいだろうにレベルはもう俺を超えて離していっている」


探索を始めて僅か数日。オキツヒコとオキツヒメはその短期間でレベルを二桁にしていた。同じ数は倒しているはずの九郎はレベル8、ウカノミタマはレベル6であるにも関わらずだ。


その分ステータスの上がり幅は小さいようだったが、とにかく二人のレベルアップを連発は驚異的だった。



「子供の成長は早いという設定でしょうな。わたしやゲンクロウ殿の成長の仕方をみるとそう考えるのが自然かと」


「そうだなぁ。料理していたり、俺の鍛冶の手伝いをしてくれただけでもぽんぽんレベルアップしていたし、そういう設定かもね」


この急成長は外でモンスターを倒すようになってからだ。

もちろん、家事などをこなして得る技能経験よりも敵を倒して得る経験値のほうが多いからという理由もあるだろうと九郎は考えるが、しかし、それであってもこの成長スピードは異常だった。

確実に召喚された者に設定された年恰好には意味があるのだろう。


「大人の体は能力の数値が上がり易くて……」

「子供の体は成長に必要な経験値の設定が大幅に低く設定されている、でしょうな」

「作ったヤツらはアレ・・だけど、結構面白いシステムだなぁ」


子供タイプのキャラと大人タイプのキャラは違う成長を遂げる。

これで転生がなければなかなか優秀なゲームだと九郎は思った。



「さて、システムの話はおいといて、もう十五分くらい探したら一旦切り上げて休憩にしよう」


「オベントー!!」


「きょうはとくにじしんあり、です!」


「二人とも、手洗いはしっかりな」


「『ハーイ』!」


「ははは。本当に遠足みたいだな」


双子の神の良い返事に微笑ましく思いながら、九郎はもう少し奥へと足を踏み入れて―――




―――そこで、足元がカチリと音を立てた。



「えっ?」



それはデジャヴュというもの。

九郎の脳裏にあのモンスターハウス出現の光景が甦る。



「全員、森の外へ走れ!!」



そう叫んだ。

叫んだはずだ。


だが、その声は突如森の中に大音量で鳴り響いたアナウンスと警告音にかき消された。




《 移動条件を満たしました。 プレイヤーはエリアの転送を行います 》



「は、なんだって?モンスターハウスじゃないのか?」


驚く九郎をよそに九郎の体は固定され、光りの粒となってどこかへ送られていく。


「ゲンクロウ殿ッ!!」


ウカノミタマが慌てて九郎を捕まえようとするが、しかし、その手は一歩及ばず空を切った。







《 隠しエリア 【燃える山】 に転送しました。 これより一切の移動アイテムの使用が禁止されます。 また、プレイヤーが死亡した場合は元の位置への転送を行い、次回より侵入が不可となりますのでご注意ください 》




光りの奔流が視界から消え去ると、そこは紅葉の美しい山中だった。

九郎の目の前には一本の細道があり、赤く揺らぐ葉が風に乗ってさあこちらへと九郎を誘っていた。


「隠しエリア、だと?」


振り向けばそこに後ろは無い。

薄い乳白色の壁があり、透けたその先はやはり紅葉の美しい山がどこまでも続いている。


「つまり、ここはどこかに作られた限定された空間ってことか」


九郎が住む領地にはこんなにあたり一面真っ赤な山など存在していない。

領地の季節が変わればこうなるかもしれなかったが、今のところ無いはずだった。



『……うふふ……あはは……』



その道の先から女の楽しげな笑い声が聴こえる。

九郎はその声に警戒をしながらも、どうせ進まねば始まらないため、細道をゆっくりと進んでいった。


そして、しばらく歩いていくと、大きく開けた場所にたどり着いた。




《 スタート位置到達を確認。 これよりシークレットミッション 【紅葉狩り】 を開始します 》



「――ッ!ミッション?」



視界に数秒ほど黄色いウィンドウが現れて消える。


すると、どこからか聴こえていた笑い声が止まり、瞬きする程度の静寂のあと、少し離れたところにある大きなカエデの木の陰からゆらりゆらりと三人の美女が現れた。


「あら、お客人とは珍しい」


「何しにここへ来たのかえ?」


「まあ、まあ、良いわな良いわな。お客人、良かったらあてらと一緒に酒でも呑みましょう」


美女は心身の自制に優れた九郎でさえも興奮を抑えられなくなりそうなほどに艶やかだった。

黒髪を金銀の飾りでまとめ、崩した着物が名のある花魁のよう。


白い肌、朱の差す頬、たわわな胸に、脳まで染み込む甘い声。


およそ人のもので無い美しさに九郎は思わず頷いてしまう。



「ほぉら、お客人、こちらへ」


いつの間に傍まで来たのか。

三人の美女のうち泣きボクロの女が九郎の左手を取って腕を絡ませ、胸を押し当てるようにしながら促した。


カエデの木の下にまでやってくると九郎は驚き感嘆の息をもらした。

何故か今まで無かったように見えていた金糸の模様が美しい敷物が敷いてあり、その上にはヨダレがでそうなほどの豪華な料理と大きな酒瓶が何本も置かれていたのだ。


「ほれ、お客人。好きに食べて呑んで、楽しみましょうやな」


「あ、ああ。そうだな」


泣きボクロの美女は大きな朱色の酒盃を九郎に渡すと、とくとくとそこに酒を注ぐ。


九郎は勧められるままにその酒に口をつけ――そこで、異変に気付いた。



(おかしい。何故俺はこんなに自然に受け入れている?)



それに気付いた瞬間、九郎の視界に小さく表示が現れた。



《 【精神浄化:弱】 が発動しました。 【精神支配】・【魅了】 を浄化しました 》



「―――ッ!?」


心臓が一気に冷え、縮こまった。

全身に嫌な冷気が駆け巡り、しかしそのお蔭で意識がしゃんと整い始める。


「どうされましたお客人?」


「え?ああ、いや……」


九郎が盃を持ったまま止まっているのをいぶかしむように見つめる美女たち。

九郎はそれに視線を合わせないようにして盃に目を落とした。


そこに、映るのは九郎の顔。

そして

その横に寄り添う―――



(……《鬼》……)



九郎は『さあ、ぐいっと』などといって酒を勧める美女に笑みを返しながら、心の中で『見抜く』と唱えた。





―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―



名称:【 紅葉もみじ 】

種族:【 ? 】

スピリットタイプ:【 ? 】


レベル:【 ? 】


《装備》


【魅惑のかんざし

【(セット)花魁道中+8】

【天魔王の守り】


*【攻撃評価】:D+

*【防御評価】:C+

*【心力評価】:A



―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―




「……も、紅葉……だと?」


「ん?何か言ったかえ?」


「い、いや……」


九郎はその名に覚えがあった。知ったのはほんの数日前、本に書いてあったことからだ。


《紅葉》。


それは能の演目のそのひとつ、《紅葉狩り》にて平維茂たいらのこれもちが紅葉の美しい戸隠山にて出会う美女の名。


才知と美貌に優れるが、妖術を用いる妖女であり、彼女は賊を率いて近隣の村々を襲ったことにより、八幡神の神剣で平維茂たいらのこれもちに討たれることになる。


その真の呼び名は


“鬼女・紅葉”


第六天魔王に祈ることにより生まれた、強力な妖術使いだ。


これはマズイ。

勝てる道理がない。



「良かったらお姉さんたちもいっしょに」


「あら、うれし。お酌してもらえるんかえ?」


「ええ。みんなで呑んだほうが美味しいでしょう?」


「違いない違いない」



そう言って手に手に盃を取り出す女たち。

九郎は、気付かれぬよう、そっとアイテムをショートカットで呼び出した。


その手に呼び出すキーワードは、【接触不可】。

最初に作ったあの・・薬である。





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