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【ミソロジーライフ】  作者: 文悟
冒険の書1
18/20

リトライミッション:戦力を増やそう!

次回を連続投稿仕様にしたいので今回は一話にしました。


次回更新までの暇つぶしは作者の他作品を読んでお待ちいただけたら幸い。

―――試行回数772回。内、成功回数302回―――


なんのことだと思うだろう。

調合の才能を得るまでの薬品製作のその通算である。



九郎は昨夜、宣言通りに徹夜をして薬品を作り続けた。

その成果として毒薬作りは目標個数を達成。また、調合の才能も得ることができた。


これにて【調合】・【鍛冶】・【料理】・【魔物使い】の基礎となる技能を得たわけだが、この中でも調合はとんでもなく苦労した。


その苦労の度合いは先の通算を見れば分かるだろう。


この結果で目立つところをピックアップすると大成功1回、大失敗72回。接触不可出現8回。


負け越しも負け越し。

尋常ではない失敗の連続であった。


ちなみに才能を得たのは【大成功】が出たときだ。


これから推測するに、大失敗以上が出ると熟練度的なものにマイナスがかかるのでは、と九郎はにらんでいた。そして、才能系の技能を得るにはそれに対応した行動を一定回数成功させて熟練度を上げるか、【大成功】以上を出現させるかが条件であるとも。


とにかく、才能は取得することができた。


あとは鬼退治の準備を進めていくだけだった。



「弱体化料理は俺。回復料理は改めてヒコくん、ヒメちゃんで追加分を用意しよう。現実での今日は予定は無いし、昨日に続きこっちで過ごすからじっくりやろう。準備が整い次第、ちょっと鬼退治に行く。よろしく」

「おー!」

「オー!」


九郎の宣言に双子の神が準備に取り掛かる。

さあ、九郎も準備を――と、その前に。


「ウカノミタマ?」

「ここに」

「今から【英雄召喚器ソウルダス】を回しに行くからついてきてくれ。そこで出た者はウカノミタマのサポートにする」

「畑の守りですかな?」

「そうだ。昼も夜もウカノミタマ一人に任せっきりは良くないからね」


九郎はそう言ってウカノミタマを連れ立って地下へと向かった。







………






「今回は銅が二枚しかない。まともに当たってくれよ……」


地下の神核前。

九郎が手を擦り合わせて祈る姿があった。


一瞬自分でなくウカノミタマに回してもらえばとも思ったが、ソウルダスの機能はプレイヤーしかいじれないようだった。

故に、九郎は己のリアルラックに賭けることになる。


何度も何度も祈り擦って拍手を打つ。

そして、九郎はまず一枚目の召喚をスタートさせた。



―――ガリ、ガガガリ……――



ソウルダスから石版カードが排出される音。

バクバク跳ねそうになる心臓を気力で押さえ込んで、九郎はもう一度拍手を打った。


そして、取り出された石版に描かれていたのは、人の姿。


九郎は思わずグッと拳を握って小さくガッツポーズした。



《  おめでとう! 【蛤貝比売ウムギヒメ : 平凡 】 を手に入れました! 》



呼々に若干似ている声色のアナウンスが入り、手の石版の上にウィンドウが現れた。


「ヒメってことは女の子か」

「ヒメならはだいたいは女ですな。それで、ゲンクロウ殿、どのような者が出ましたか?」


少し離れて控えていたウカノミタマが九郎に近づき、肩越しに石版を覗き込む。

九郎もウカノミタマが見易いように少し角度を変えた。


「絵は貝殻の髪飾りをつけている女の子。海系の仲間かな。ウムギヒメって名前だ」

「おお、ウムギヒメですか」

「知ってる?」

「オオクニヌシ様、もしくはカミムスビ様に関係の深い神ですな。貝比売キサガイヒメと一緒にいれば恐らく高い能力を発揮できるかと。ゲーム上どのような力を持っているかは予想になりますが、死んだオオクニヌシ様の蘇生や治療を行ったことから“後衛・回復職”になりえるかもしれませぬ。ただ、そういうことなので恐らく戦闘能力はちょっと……」

「いや、いいんじゃないか。回復役はどんなゲームでも貴重だよ。いなきゃ始まらないとも言える。もうひとつのほうで戦闘能力がある仲間が出たらなら、二人で組ませればいい」

「ふむ、確かにそうですな。なれば良かった良かった」

「そうそう。男でも女でも前衛でも後衛でも、今はどちらでもいいさ。とにかく人が欲しいんだから」


九郎はうんうんと頷いて、いったんその石版は左手に抱き、次の召喚へ。

具現化は二枚まとめてするつもりだ。


(もういっちょお願いします!)


ボタンを押すと銅の魂石が飛んで行き、次が始まる。


また石臼のような音が響き始めた。


……と、ここで異変が起こる。

石臼のような音に異音が混じり始めたのだ。



―――ガ、ガガガギッ、ギガガガガガッガ!―――



「な、なんだ?また・・壊れたのか?」

「故障!?」


分かっていると思うが、九郎は自身の意思とは関係なく、よく物を壊す。

今回もそうだと思った。しかし、それは思い過ごし。勘違い。

この異音はいわゆる演出であり、ガタガタと震えたソウルダスは何事もなかったかのようにシュポンと石版を吐き出した。


「お、おおっと!」


その必要は無いのだが、九郎は慌ててそれをキャッチした。


おめでとう。

その石版にはまた、人の絵が描かれている。



《 おめでとう! 【意富加牟豆美オオカムヅミ : 優秀 】 を手に入れました! 》



「おおっ」

「いかがなされた?なにが当たったので?」


喜びと驚きの興奮を見せる九郎に覗き込むウカノミタマ。

九郎は石版を見せてニヤッと笑った。


「レアリティ【優秀スペシャル】だ。桃の飾りが付いているけど男だし、戦闘能力はありそう」

「むむっ!オオカムヅミ殿ではないですか!」

「これも知っているのかい?強い?」

「ええ、このオオカムヅミ殿は、以前黄泉の国で起こったイザナギ様とイザナミ様の夫婦喧嘩の際、イザナミ様の取り巻きである黄泉醜女ヨモツシコメを止める壁役となった桃に名と神格を与えられ生まれた存在。類稀なる防衛能力でボディーガードや会場警備のアルバイト、現金輸送に喧嘩の仲裁などなど大活躍されておりますぞ。わたしとも相性が良く、月に一度は呑みに行ったりなどしております」

「うん、もう、防衛能力以外はほとんどいらない情報だった」

「おや、そうですか?」

「うん。ごめん。あ、お酒好きなの?」

「ええ、わたしは油揚げをつまみに、オオカムヅミ殿はウワバミなので強いのをがぶがぶと。二人ともかなり好きです」

「あとで買っておく」

「おおっ、感謝します!」


とにかく防御能力は充分らしい。特に特定の場所への侵入を押し止めることにかけてはかなり優秀だとウカノミタマは言う。


今回の九郎。

これは良いヒキだったのではないだろうか。

戦闘は未だ九郎頼みのままだが。



「じゃあ、もうここでこの二人を具現化しよう」

「ええ、わたしも良いと思いますぞ」

「それでは早速……」



九郎は二枚の石版を片手に持ち、具現化を念じてウィンドウを出す。

費用五百S×二枚なので千ソウルが求められるが悩むことなく許可した。


最終確認を終えて開始すると、石版が空中に浮かび上がり、光りを放ち始める。


そして、数秒。何本ものヒビが石版に入ったその瞬間、石版が強烈な光りを放って爆散した。


(いちいち派手なんだって、オモイカネ。目が痛い、目が……)


ある程度予想して目を瞑ったからいいものの、それでも少し焼かれた目を擦って開くと、九郎の目の前には大小二つの影が立っていた。


その大きいほうがスッと一歩前に進み出る。


「召喚を受け参上いたしました我が主。我が名は意富加牟豆美。拠点の防衛、人の警護、敵の妨害。守りのことならなんでもこなして見せましょうッ!」


身長は170センチメートル前後だろう。

浅黒い肌に白い学ランのような半袖の服を着た青年が、桃の首飾りと桃の絵の描かれた鋲付き指貫グローブをキラリと光らせて白い歯を見せる。


(このひとがオオカムヅミか。うん、ちょっと暑苦しいかな)


九郎は若干引きつった笑顔になりながらも、オオカムヅミに手を差し出した。


「俺は源九郎。ここではゲンクロウでやってる。よろしく、オオカムヅミさん」


「よろしければモモとお呼びくださいませッ!」


「あ、ああ。わかった。も、モモ?」


「ハイッ!」



キラキラした邪気の無い目が、ああ、暑苦しい。

ちょっと煩かったりもするのだが、元気が良いだけなのでそうそう指摘もできない。


高速で九郎の手を取って上下に振るオオカムヅミのキャラに苦笑した九郎は、やんわりとその手を解いてよろしくと彼の肩を叩いた。



(扱いが困るかも)



九郎とモモの暑苦しい挨拶が済むと、ウカノミタマとも挨拶が始まり、こちらは終始友人らしいやり取りが行われ特に何事もなく片付いた。


九郎はいつもそのくらいでいて欲しいと願う。



「さて、と。次はウムギヒメ……さんかな?」


九郎が小さい影に向くと、そこにはオキツヒメより少し背の高い女の子が身を縮ませて立っていた。髪は灰と青が混じったようで長く、貝をちりばめた髪飾りでまとめ、肩に乗せるようにしている。


おどおどというよりは緊張しているようで、それに気付いた九郎が彼女の前に肩膝をついて微笑み名前を教えて欲しいと願うと、ゆっくり肩の力を抜きながら自己紹介を始めた。


「あ、あのわたしは、うむぎひめと言います。お薬を作るのがとぅぃ……ううん、得意です。わたしの特技は【ちりょう】で、じまんは、貝ガラからお薬が作れることです。わたしは『うー』と呼んでください、げんくろーさま」


ウムギヒメがどうにか言いたいことを言い切って、ぺこりとお辞儀する。


ところどころが怪しいが、オキツヒメ達双子よりも少し精神年齢は上らしい。

そして、ウカノミタマの言う通り、彼女は回復の能力を持っていた。さらには薬草などではなく貝殻からも作れるときた。それは九郎が思ったよりも優秀な能力だ。


ただまあ、間違いなく完全に戦闘には不向きな気性だ。

とはいえそれでも九郎からすれば大歓迎だ。


九郎はウムギヒメにも手を差し出した。


「よろしくね『ウー』ちゃん。ウチにはオキツヒコとオキツヒメっていうキミと同じ様な年恰好の双子の神様がいるから、仲良くしてやってくれるかい?」


「はいっ!もちろんです!」


九郎の手を握り、元気よく返事したウムギヒメ。

九郎はその返事に微笑ましいものを見るように笑み、頷いて、ゆっくりと立ち上がった。



「さて、挨拶も済んだし行こうか」


「ヒコとヒメがまだかまだかと待っておりましょう」


「ああ、そうだな。急ごう。しかし今回は特に問題も無く仲間を増やすことができて良かったよ」


「前回は酷かったですからなぁ」


強化素材は悪くないが、費用がかかることを考えたら使えたものじゃなかった。

それが全抽選で出たんだから酷いとしか言えない。


むしろレアなケースだが、九郎はそんなレアケースを望んではいない。



ウカノミタマと苦笑し合って、咳払い一つ。九郎は召喚した二人に向き直る。


「モモ、ウーちゃん、キミ達にはこのウカノミタマと協力してホーム周辺の畑を守ってもらおうと思っている。また、ウーちゃんには俺と一緒に薬の量産をしてもらう」


「任されよッ!」


「はいっです!」



二人の気合の入った返事に頷いて九郎は地下室を後にする。



さて、そろそろ鬼退治の時も近づいてきているようだ。




オオカムヅミ:桃。なんて言っても桃。ただの桃。お尻はきれいらしい。髪型は桃ではない。顔つきはタイガーシュートの人を考えたけどちょっと違うかな。

実際にはあの有名な黄泉の国から逃げる話で投げられた桃のこと。防衛っていうより時間稼ぎに使われた。



うーちゃん:資料によって違うけど貝を粉末にしたりして傷を治したり生き返らせたりする話がある。そのときお乳が薬にって話もあって、お乳=蘇生薬の考え方もある。だから進化して魔乳になってもしかたない。しかたないったらしかたない。


あんまんは命の源だよっ!





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